人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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 朝、目が覚めると、陛下が横に居た。
 陛下は気持ち良さそうに眠っている。
 私はボンヤリと窓の外を見てもう随分と日が高いなとそんな感想を思って……

 驚愕した。

 私は慌てて、でも出来るだけ優しく、不敬のない様に、陛下を起こす。
「起きて下さい、陛下?」
 優しく揺すってみたりする。
 陛下は目を覚まして、でもまだ覚醒してない様で微睡んでいる。
「…………姫か……」
 そう言って急にグッと私を抱き寄せる。
「⁉︎ 陛下⁉︎」
 急に抱き締められて恥ずかしくなる。
「……」
 陛下はまだ覚醒しないらしくて黙って私を抱いたままだ。
「陛下? あの……、起きて下さいっ! 大変ですっ」
 陛下は瞼を閉じたまま私の声に答える。
「……ん? 何がだ……?」
「もう昼前です! どうしましょう! ご政務が……っ」
「……ああ、政務は全て宰相に任せてある……。儂のすべき事は無い……」
「⁉︎」
 私はびっくりする。王様というのはとっても忙しい。
 少なくともわたしの父、マグダラス王は毎日忙しく働いていた
「……陛下。それでは……この国の王が誰なのかわかりません……。宰相様はこの国の王なのですか……?」
 陛下の腕が緩んだので、その腕から抜出して起き上がり、改まってベットの上に座る。

「……起き抜けに説教か……」
 陛下の纏う空気が冷たくなる。

「……申し訳ありません……でも、ダメです。私は王が責任を果たさずに遊び暮らしていて良いとはどうしても思えません。」

 陛下もノロノロと起き上がる。一つ大きな欠伸をした。
「……民が、血税が、と言った所か?」

「はい。責務を果たさない王は首を落とされてしまいます。」

「では聞く、姫。」
 陛下は胡座をかき、その長い脚の上に頬杖を作ってこちらを見る。

「儂の首が落とされて、それがなんだ?儂が死んでもどうせ新たな王が即位し、国を存続させるだろう。
 おびと一つ変わるだけで後は何も変わらぬ。
 儂である意味などどこにも無い。
 寧ろ儂であるよりマシかも知れん」

 私はとても悲しい気持ちになった……
 だって、それじゃまるで陛下は……

「陛下でなければいけません。」
 きっぱり告げた。

何故なにゆえ?」
 陛下は姿勢を変えず、私をじっと見据える。

「陛下が首を落とされるという事は、その間動乱があります。無益な殺生がたくさん起きます。それが今現在の陛下が背負ってるモノです。それから……」

 私は俯く。
 悲しい気持ちを抑えられない。

 陛下は俯く私を黙って見ている。

「……陛下に死んで欲しくありません……」

 なんだか考えただけで悲しくなった。

 ……陛下は重責が辛いんだ。
 多分背負ってるものの重みなんて全部全部わかってるんだ。
 だからこそ、首を落とされたいんだ……
 重責を果たせない自分は罰せられて当然だと思ってるんだ……


 泣きそうになるけど、絶対ダメだ。
 ここで泣くのは卑怯だ。

 グッと手のひらを拳にして握りしめて、
 ギュッと目を閉じる。
 そして陛下の方を向き直す。

 陛下は驚いた様な顔をしていた。

 私の顔をじっと見つめてる。
 私も陛下をじっと見つめ返す。

 しばらくして、陛下が私の頬に優しく触れる。

「……そうか。わかった。」

 陛下がフワリと笑った。私も気が緩んで、にへらと笑ってしまった。
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