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「今も悩んでいる……か……」
自分でも思いもよらなかった答えを反芻する。
儂は湯船に浸かり、湯桁に背を預け両腕を乗せる。全身洗い上げられた後、侍女達を下がらせ一人となった湯殿で呟いた。
姫の言葉には毎回驚かされる。
儂の自覚しない本心を暴き立てる。
思えば王太子であった時代から、人を殺して来た。
14の歳の頃。
丁度今の姫と同じ様な歳頃だった。
初陣で総指揮であった当時の中将、メリラハティの船が墜ち、死亡したので追従していた儂が総指揮を引き継ぐ事になり、敵艦隊を沈めた。
相手はシビディア大陸の国ではなく、ヴィンゼンツ大陸の海洋国家サンドバル帝国の艦隊だった。
グリムヒルトの目下の敵は、シビディア大陸の国々よりも他大陸の国家になる。
特にサンドバルとその周辺国はグリムヒルトを未だ国とは認めておらず、海賊と認定している。
奴等からすれば、儂らの祖先の所業が原因であるのだろう。
国家間での捕虜の受け渡しや最低限の待遇などは存在しない。
奴等にとって儂らグリムヒルトの者は罪人でしかない。
故に捕まればその場で斬首だ。
太公が国としての体を取り繕う事に躍起になったのは、こういう事情もあったのだろう。
その初陣より人を殺し続けている。
……いや、もっと以前に初めて人を殺めたとも言えるな……
他国の民を殺し、
自国の民も殺し、
未だ搾取され朽ちる様に死にゆく者を出している。
それで言うなら全ての死に対して、儂は悩んでいるのかも知れなかった。
玉座など多かれ少なかれ血に塗れているものだが、儂は武断の王であるが故になお、多くの血を流して来た。
今更その責から逃れられるとは思ってはいない。
……儂は死に向き合う事に飽いていたのかもしれん……
今まで、
人が死に、人を殺しても心の動く事などなかった。
実際初陣では吐く者も多いらしいが、儂はそういった事もない。
敵船に乗り込み、斬り込んでいった時も大して感慨する事もなかった。
儂の一刀で内臓をぶち撒ける敵兵士を一瞥して次の敵兵士を屠った。
その繰り返しで指揮官の首を落とす。
終息後もその感慨が襲う様な事もない。
常と変わらぬ自分が居た。
そういう自分に失望したし、自分の程度を思い知った。
太公の言う通り、儂は祖父様に似た加虐趣味の持ち主なのだろうと。
実際儂にはそういった部分があったし、否定のしようもない。
太公の言い分は極めて真っ当なものだ。
そう、思っていた。
しかし姫の答えに虚を突かれた。
言われてみれば、『奴』が死んでから、
積み重ねた死の全てを受け入れ続けている気がする。
人が死ぬ事にうんざりしている自分に、
それを止めぬ自分自身への諦観に、
姫の答えで自覚した。
湯殿の天井を仰ぐ。
真っ直ぐに見つめてくるあの瞳を思い出す。
コロコロと変わる表情を思い浮かべる。
ふわりと笑んで陛下と呼ぶ声が耳に聞こえる気がする。
たった湯浴みの間そんな時間程度離れているだけで、
もうその姿を探している。
……今宵もあの愛らしい寝顔を眺めながら、夜を過ごそうと、
儂は湯船から上がり、湯殿を出た。
自分でも思いもよらなかった答えを反芻する。
儂は湯船に浸かり、湯桁に背を預け両腕を乗せる。全身洗い上げられた後、侍女達を下がらせ一人となった湯殿で呟いた。
姫の言葉には毎回驚かされる。
儂の自覚しない本心を暴き立てる。
思えば王太子であった時代から、人を殺して来た。
14の歳の頃。
丁度今の姫と同じ様な歳頃だった。
初陣で総指揮であった当時の中将、メリラハティの船が墜ち、死亡したので追従していた儂が総指揮を引き継ぐ事になり、敵艦隊を沈めた。
相手はシビディア大陸の国ではなく、ヴィンゼンツ大陸の海洋国家サンドバル帝国の艦隊だった。
グリムヒルトの目下の敵は、シビディア大陸の国々よりも他大陸の国家になる。
特にサンドバルとその周辺国はグリムヒルトを未だ国とは認めておらず、海賊と認定している。
奴等からすれば、儂らの祖先の所業が原因であるのだろう。
国家間での捕虜の受け渡しや最低限の待遇などは存在しない。
奴等にとって儂らグリムヒルトの者は罪人でしかない。
故に捕まればその場で斬首だ。
太公が国としての体を取り繕う事に躍起になったのは、こういう事情もあったのだろう。
その初陣より人を殺し続けている。
……いや、もっと以前に初めて人を殺めたとも言えるな……
他国の民を殺し、
自国の民も殺し、
未だ搾取され朽ちる様に死にゆく者を出している。
それで言うなら全ての死に対して、儂は悩んでいるのかも知れなかった。
玉座など多かれ少なかれ血に塗れているものだが、儂は武断の王であるが故になお、多くの血を流して来た。
今更その責から逃れられるとは思ってはいない。
……儂は死に向き合う事に飽いていたのかもしれん……
今まで、
人が死に、人を殺しても心の動く事などなかった。
実際初陣では吐く者も多いらしいが、儂はそういった事もない。
敵船に乗り込み、斬り込んでいった時も大して感慨する事もなかった。
儂の一刀で内臓をぶち撒ける敵兵士を一瞥して次の敵兵士を屠った。
その繰り返しで指揮官の首を落とす。
終息後もその感慨が襲う様な事もない。
常と変わらぬ自分が居た。
そういう自分に失望したし、自分の程度を思い知った。
太公の言う通り、儂は祖父様に似た加虐趣味の持ち主なのだろうと。
実際儂にはそういった部分があったし、否定のしようもない。
太公の言い分は極めて真っ当なものだ。
そう、思っていた。
しかし姫の答えに虚を突かれた。
言われてみれば、『奴』が死んでから、
積み重ねた死の全てを受け入れ続けている気がする。
人が死ぬ事にうんざりしている自分に、
それを止めぬ自分自身への諦観に、
姫の答えで自覚した。
湯殿の天井を仰ぐ。
真っ直ぐに見つめてくるあの瞳を思い出す。
コロコロと変わる表情を思い浮かべる。
ふわりと笑んで陛下と呼ぶ声が耳に聞こえる気がする。
たった湯浴みの間そんな時間程度離れているだけで、
もうその姿を探している。
……今宵もあの愛らしい寝顔を眺めながら、夜を過ごそうと、
儂は湯船から上がり、湯殿を出た。
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