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朝議は終わり、政務など構わず王妃の間に向かう。
王妃の間に入ると、姫は侍女と抱き合っていた。
「何をしているのだ」
「陛下!」
泣き崩れる侍女が儂に言う
「姫様が御追従にと仰ったのは、私が姫様に泣きついたからです! どうか姫様が御追従につくなど、決定なさらないで下さい! 私が悪いのです!」
儂の足元に深く叩頭する
「マリ、落ち着いて。大丈夫ですから」
姫が跪き、侍女の背を撫でている。
「案ずるな。姫もお前も追従につく事はない。」
姫が目を見開く。
「陛下……」
「太公の遺言状があってな。姫に従えと。そして正妃になる様にとあったぞ」
「ええぇぇ⁉︎ 私が、正妃にっ⁉︎」
姫は大層驚いた様だ。
「じょ……冗談ですよね……⁉︎」
「冗談ではない。姫は正妃として輿入れする事になった。追従に関しても姫が葬儀を主宰する様にとあってな。好きにするがいい。ただし、姫が追従につく事だけはならん」
叩頭をやめ、ガバリと顔を上げた侍女と共にホッとした様子を見せる。
「故にお前はしばし下がれ。姫と話がある」
侍女は畏まりましたと部屋を出ていく。
扉が閉まった瞬間、儂は姫を抱きしめた。
「へっ……陛下⁇⁉︎」
「……お前は、追従が何をされるかわかっておったのか?」
姫はじっと抱かれるままだ。
「……はい。存じておりました……」
「20人分を肩代わりする気だったのか?」
「……はい。覚悟しました……」
「この、愚か者めが」
「……ごめんなさい……」
「……もう良い」
姫の腕が儂の腕に回される。
「……陛下?」
小さく呟く様に呼ばれた。
「なんだ」
「……本当は、怖かったです……」
ギュッと回された腕の力がこもり、小さく震えているのがわかった。
儂も抱いた腕に力を込めてやる。
姫の体温がより一層近くなった。
「愚か者め……」
姫が儂の胸に顔を埋めた。
「……ごめんなさい……」
しばしそのまま抱きしめ合う。
互いの体温の混じり合いになんとも言えない心地良さを感じる。
この時間がいつまでも続く様願う。
「陛下……?」
「……なんだ?」
「私……本当に正妃になるのですか?」
姫を抱き上げる。そして長椅子に連れて行く。
「……陛下⁉︎」
長椅子に座らせ、儂も隣に座る。
儂は長椅子の背凭れに右腕を乗せ、姫と向き合う。
「儂は姫であるならば正妃があっても良いと思っている」
「……っでもっ! 私はこの国の王妃の教育は受けていません! それに私は地の民です……。この国では不利益になるのではないのですか?」
「この国の儀礼など、爺が決めた一代と続いていない大した意味のないものだ。そもそも王妃教育など受けている者はいない。それに姫との婚姻は地の民にとっては少なからず希望になるだろう。姫を通じて、儂が気にかける様になる。実際何が変わらずとも、そうであるだけで随分と違うものだ」
姫は長く沈黙する。
「……太公様はきっと……」
姫はやっと口を開くと俯いた。
膝の上に両の手で握り拳作っている。
「私が陛下のお役に立ちたい、ずっと仕えていたいんだと言ったから、正妃にと推挙して下さったんだと思うんです……。きっと、私の事を最後まで案じて下さったんです……」
姫がポロポロと泣き出す。
昨晩も随分と爺の為に涙を流していたが、未だ止まらないらしい。
あの爺の為に姫が泣くのは正直言って面白い事ではない。
朝議でグリムヒルトの官吏や諸侯の前で毅然と闘った女とは思えないほど、ここにいるのは普通の少女だ。
なんとも愛おしくなって、姫の頭に口づける。
「儂に仕えていたいのであれば、正妃として支えてくれ」
「……はい……私には勿体ない位です……」
「姫以外に儂の正妃など、務まる者はいない」
そう言って、右腕を下ろし、その腕でそのまま姫の肩を抱き寄せた。
王妃の間に入ると、姫は侍女と抱き合っていた。
「何をしているのだ」
「陛下!」
泣き崩れる侍女が儂に言う
「姫様が御追従にと仰ったのは、私が姫様に泣きついたからです! どうか姫様が御追従につくなど、決定なさらないで下さい! 私が悪いのです!」
儂の足元に深く叩頭する
「マリ、落ち着いて。大丈夫ですから」
姫が跪き、侍女の背を撫でている。
「案ずるな。姫もお前も追従につく事はない。」
姫が目を見開く。
「陛下……」
「太公の遺言状があってな。姫に従えと。そして正妃になる様にとあったぞ」
「ええぇぇ⁉︎ 私が、正妃にっ⁉︎」
姫は大層驚いた様だ。
「じょ……冗談ですよね……⁉︎」
「冗談ではない。姫は正妃として輿入れする事になった。追従に関しても姫が葬儀を主宰する様にとあってな。好きにするがいい。ただし、姫が追従につく事だけはならん」
叩頭をやめ、ガバリと顔を上げた侍女と共にホッとした様子を見せる。
「故にお前はしばし下がれ。姫と話がある」
侍女は畏まりましたと部屋を出ていく。
扉が閉まった瞬間、儂は姫を抱きしめた。
「へっ……陛下⁇⁉︎」
「……お前は、追従が何をされるかわかっておったのか?」
姫はじっと抱かれるままだ。
「……はい。存じておりました……」
「20人分を肩代わりする気だったのか?」
「……はい。覚悟しました……」
「この、愚か者めが」
「……ごめんなさい……」
「……もう良い」
姫の腕が儂の腕に回される。
「……陛下?」
小さく呟く様に呼ばれた。
「なんだ」
「……本当は、怖かったです……」
ギュッと回された腕の力がこもり、小さく震えているのがわかった。
儂も抱いた腕に力を込めてやる。
姫の体温がより一層近くなった。
「愚か者め……」
姫が儂の胸に顔を埋めた。
「……ごめんなさい……」
しばしそのまま抱きしめ合う。
互いの体温の混じり合いになんとも言えない心地良さを感じる。
この時間がいつまでも続く様願う。
「陛下……?」
「……なんだ?」
「私……本当に正妃になるのですか?」
姫を抱き上げる。そして長椅子に連れて行く。
「……陛下⁉︎」
長椅子に座らせ、儂も隣に座る。
儂は長椅子の背凭れに右腕を乗せ、姫と向き合う。
「儂は姫であるならば正妃があっても良いと思っている」
「……っでもっ! 私はこの国の王妃の教育は受けていません! それに私は地の民です……。この国では不利益になるのではないのですか?」
「この国の儀礼など、爺が決めた一代と続いていない大した意味のないものだ。そもそも王妃教育など受けている者はいない。それに姫との婚姻は地の民にとっては少なからず希望になるだろう。姫を通じて、儂が気にかける様になる。実際何が変わらずとも、そうであるだけで随分と違うものだ」
姫は長く沈黙する。
「……太公様はきっと……」
姫はやっと口を開くと俯いた。
膝の上に両の手で握り拳作っている。
「私が陛下のお役に立ちたい、ずっと仕えていたいんだと言ったから、正妃にと推挙して下さったんだと思うんです……。きっと、私の事を最後まで案じて下さったんです……」
姫がポロポロと泣き出す。
昨晩も随分と爺の為に涙を流していたが、未だ止まらないらしい。
あの爺の為に姫が泣くのは正直言って面白い事ではない。
朝議でグリムヒルトの官吏や諸侯の前で毅然と闘った女とは思えないほど、ここにいるのは普通の少女だ。
なんとも愛おしくなって、姫の頭に口づける。
「儂に仕えていたいのであれば、正妃として支えてくれ」
「……はい……私には勿体ない位です……」
「姫以外に儂の正妃など、務まる者はいない」
そう言って、右腕を下ろし、その腕でそのまま姫の肩を抱き寄せた。
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