人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

文字の大きさ
59 / 200

59

しおりを挟む
 陛下と別れて、西側の勝手口から洗濯場に連れて行かれた。
「おい、新しい侍女だ。色々教えてやってくれ」
「ティアと言います。よろしくお願いします」
 すると洗濯物を干していたお仕着せを着たふくよかな侍女が振り返る。
「そう。じゃあ先ずはお仕着せに着替えてもらわなきゃね」
 歳の頃は45ほどだろうか?ふくよかな身体を揺らして、私の方に近づいて来た。
「何が出来る?」
「手際は今ひとつだけど、一通り何でも」
「はははっ! 正直な子だね! わかったよ、こっちおいで」
 勝手口から館に入って奥に進むと侍女達の控室があった。
「ここが控室。あたしとあんたの他にあと二人侍女がいるよ」
「今はいないんですか?」
「今は買い出しと掃除してもらってる。しかしなんだっていきなり侍女なんか追加したのかね。今まで何度言っても入れてくれなかったんだけどね」
「私、その……、えっと、用心棒の……夫……のついでに一緒に雇って頂いただけなの」
 夫という言葉に照れてしまう。
「なんだい、照れちゃって。あんた新婚さんかい?」
「その……実はまだなんですけど、もうすぐ……」
 私は多分今凄く顔が赤いだろう。
 頬に熱を感じる。
「へえ。そりゃめでたいね。じゃあここでしっかり稼いで旦那と祝いでもしなきゃね。ほら。これなら着れるだろ?」
「はい」
 私はお仕着せに着替える。
 肌の露出が無くなって、むわりと暑くなる。
「さて、じゃあ洗濯でもやってもらおうかね」
「はい」
 勝手口から洗濯場に戻る。
 腕捲りをして、洗いかけの洗濯物を手に取って洗濯板でゴシゴシ洗い始める。
 ここの洗濯は衣服が少ないので楽だ。
 主には館長の食事のナフキンやテーブルクロス、使用人のシーツが主で、衣服は個人で洗うのでたまにしか出ないらしい。
 主だった役職の人達は街に家がありそこに帰ってるそうだ。
 私、洗濯って好きなのよね、ゴシゴシ洗ってると無心になれる。
 そう思ってご機嫌で洗濯を進める。
 大物が多かったから絞りが大変だったけど、絞った後は軽く風魔法をかけておいた。スッキリ爽やかな気分になれた。
 洗濯の済んだ物を干していると、いつの間にか昼の準備をしなくてはいけない時間になっていた。
 料理人が一人いるので、指示に従って手伝う。
 私は火おこしを任されたけど、コッソリ火の魔法を使って火をつけた。
 館長の配膳は先輩方がするとの事で、私はお先にお昼に賄いを頂いた。料理長のご飯はとても美味しくて、陛下にも食べさせてあげたいなぁ思っていたら、丁度陛下がやって来た。
 一緒に賄いを食べさせてもらう。
「俺は退屈でかなわん。そっちはどうだ?」
 陛下は心底ウンザリという顔で言う。
 私はそれに可笑しくなって笑ってしまう。
「私は忙しいです。下働きなんでやる事がたくさんあります」
 陛下が声を静めて言う。
「二日後に宝石商がくる。もし例の件を表に出すならその時だな」
「はい」
「物は確認済みだ。後は押さえるだけだ」
「……やはり証拠が出たんですね……」
 王家の、しかも個人の持ち物を横領した場合、極刑は免れないだろう。
 その証拠が出てしまった以上、関係した人達はその憂き目に遭ってしまう。
 私の期間の事件であれば、私は今現在、正妃ではないから、この場所は一時的に王家のものじゃない。その期間だけの話なら、ただの横領で流刑位でなんとか済むだろう。
 でも、5年前からなら、どうしてもお目こぼしを……という訳にはいかない。
 これを見逃す事は王家の威信を揺るがすのと同義だから。
 そう思うと溜息しか出ない。
「……お前は、何にでも慈悲をかけるな」
「そうでしょうか?もし本当に慈悲深いなら、これを見逃して、こっそり処断するのだと思います。でも私はこれを公にして正そうとしています。慈悲深い行いではないと思うのです」
「それも爺を想っての事だろう?」
「……御料地をお任せになるという事はお義父様とうさまはよほど、彼の方々を信頼されていたのでしょう?その信頼を裏切って私服を肥やしたのであれば、それはどうしても許せないんです。……どちらかと言うと私怨かもしれません……。」
 私はにこりと笑った。
「アナバス様が、粛清に対して今も悩んでらっしゃる気持ちが一片ではありますがわかった気がします」

 陛下はポツリと
「そうか……」とだけ言って、後は静かに食事をされた。
 だから私も黙って食事をした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

処理中です...