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夜、食事が終わった後のゆったりしたティータイム、長椅子に座り、二人紅茶を愉しんでいると、姫が真剣な面持ちで儂に話し始めた。
「陛下……?新年の儀式ですけれど、出席されないつもりだとお聞きしました」
儂は頬杖をついて紅茶を啜る。
「ああ。そのつもりでおる」
「……その理由が私が出席しないからだと仰っているとか……」
「ああ。姫もおらぬのにあんなつまらぬ儀式に出ても面倒なだけで何も産まぬ」
「しかし、海の女神に来年一年の航海の安全と豊漁を願う大切な儀式だと宰相様からも儀宰様からもお聞きしています。私のせいで出られないと言われてしまっては、私の立つ瀬がありません……」
なるほど。宰相からの依頼の様だな。
「何も姫が気に病む事もあるまい」
姫はこちらを真っ直ぐ見つめる。
「陛下? 一年の始まりの儀式に王が出席して安寧を願って下されば、民はこの一年、漁に精を出す事も出来ると思います。それは王にとってとても大切な責務だと思います」
更に姫は言い重ねる。
「……前に陛下も仰っておられたでしょう? 『海は恐ろしくもある』と。その海で働くグリムヒルトの民の不安を少しでも取り除く事が出来るなら、何も産まないという事はないと思うのです」
以前の自分の言質を取られてしまった。
これは旗色が悪い勝負になりそうだ。
ならばせめて姫から何か引き出そう
「……だが、姫がおらぬのに長い時間拘束される」
「再来年はご一緒出来ますから」
姫が困った顔で儂を宥める。
「再来年では来年の儂の苦痛は取り除かれん」
「……でも……私は来年は出席出来ませんから……」
「では、姫。儂に褒美をくれぬか?」
「ご褒美……ですか?」
儂は長椅子の背もたれに片腕を乗せ、姫の方に体を向ける。
そして姫の耳元まで唇を寄せた。
「儂の頬にキスしてくれ」
囁く様に呟いた。
姫の顔がみるみる紅潮し、瞳が潤む。
「この条件が聞き入れられなければ、儀式には出ぬ」
姫の紅潮した頬に指先で触れる。
姫はしどろもどろになりながら、なんとか発言した。
「あ、あの……、その、わ、わたし…私から?ですか……?」
「そうだ。姫から儂にキスしてくれ」
「……! そんなっ! わた、わたしからなんて、そんなの、無理です!」
姫は必死になって首を横に振り、なんとか儂の要求を退けようと足掻く。
「ならば、儀式には出ぬ」
「……そんな……だって……」
「夫婦になるのだから頬にキスなどで戸惑っていては話にならんだろう?」
「……それは……そうですけど……、心の準備が……」
「では今準備すればよい」
「……わかりました……」
姫は顔を紅潮させたまま意を決する。
ギュッと目を閉じて、顔をゆっくりゆっくり近づけてくる。
儂の頬に瞬間だけ口付けして、素早く離れた。
「……ふむ。一応約束は果たされたな」
顔を紅潮させ、こちらを潤む瞳で上目遣いで見つめる姿に加虐心が煽られる。
「しかし不満だ。どれ、一つ手本を見せてやろう」
姫の顎に手をかけ、上向きに持ち上げる。
呆気にとられている姫の頬に長いキスをする。
触れる唇から、熱と強張った面持ちが伝わり、思わず笑ってしまう。
「本当に姫は可愛いな」
耳元で囁いてやる。
顔を離すと紅潮した顔に唇をわななかせ、強張った表情で瞳が潤んだ姫がいた。
目が合うとバッと両の手で顔を隠した。
その様子があまりに可愛く、声を上げて笑った。
「……あまり、イジワルしないで下さい……」
姫が恨めしそうに指の隙間からこちらを見て言った。
その顔もやはり可愛らしい。
「それは無理だ。これが儂の性分だと知っておるであろう?だがこれで姫も目的は果たされるではないか」
「……そうですね……」
頬の紅潮引かないまま、姫はふぅと溜息を一つついた。
「陛下に儀式に出て頂けるなら、頑張った甲斐があります…」
紅潮した顔で複雑そうに笑う。
こうして儂は儀式に出る事になった。
「陛下……?新年の儀式ですけれど、出席されないつもりだとお聞きしました」
儂は頬杖をついて紅茶を啜る。
「ああ。そのつもりでおる」
「……その理由が私が出席しないからだと仰っているとか……」
「ああ。姫もおらぬのにあんなつまらぬ儀式に出ても面倒なだけで何も産まぬ」
「しかし、海の女神に来年一年の航海の安全と豊漁を願う大切な儀式だと宰相様からも儀宰様からもお聞きしています。私のせいで出られないと言われてしまっては、私の立つ瀬がありません……」
なるほど。宰相からの依頼の様だな。
「何も姫が気に病む事もあるまい」
姫はこちらを真っ直ぐ見つめる。
「陛下? 一年の始まりの儀式に王が出席して安寧を願って下されば、民はこの一年、漁に精を出す事も出来ると思います。それは王にとってとても大切な責務だと思います」
更に姫は言い重ねる。
「……前に陛下も仰っておられたでしょう? 『海は恐ろしくもある』と。その海で働くグリムヒルトの民の不安を少しでも取り除く事が出来るなら、何も産まないという事はないと思うのです」
以前の自分の言質を取られてしまった。
これは旗色が悪い勝負になりそうだ。
ならばせめて姫から何か引き出そう
「……だが、姫がおらぬのに長い時間拘束される」
「再来年はご一緒出来ますから」
姫が困った顔で儂を宥める。
「再来年では来年の儂の苦痛は取り除かれん」
「……でも……私は来年は出席出来ませんから……」
「では、姫。儂に褒美をくれぬか?」
「ご褒美……ですか?」
儂は長椅子の背もたれに片腕を乗せ、姫の方に体を向ける。
そして姫の耳元まで唇を寄せた。
「儂の頬にキスしてくれ」
囁く様に呟いた。
姫の顔がみるみる紅潮し、瞳が潤む。
「この条件が聞き入れられなければ、儀式には出ぬ」
姫の紅潮した頬に指先で触れる。
姫はしどろもどろになりながら、なんとか発言した。
「あ、あの……、その、わ、わたし…私から?ですか……?」
「そうだ。姫から儂にキスしてくれ」
「……! そんなっ! わた、わたしからなんて、そんなの、無理です!」
姫は必死になって首を横に振り、なんとか儂の要求を退けようと足掻く。
「ならば、儀式には出ぬ」
「……そんな……だって……」
「夫婦になるのだから頬にキスなどで戸惑っていては話にならんだろう?」
「……それは……そうですけど……、心の準備が……」
「では今準備すればよい」
「……わかりました……」
姫は顔を紅潮させたまま意を決する。
ギュッと目を閉じて、顔をゆっくりゆっくり近づけてくる。
儂の頬に瞬間だけ口付けして、素早く離れた。
「……ふむ。一応約束は果たされたな」
顔を紅潮させ、こちらを潤む瞳で上目遣いで見つめる姿に加虐心が煽られる。
「しかし不満だ。どれ、一つ手本を見せてやろう」
姫の顎に手をかけ、上向きに持ち上げる。
呆気にとられている姫の頬に長いキスをする。
触れる唇から、熱と強張った面持ちが伝わり、思わず笑ってしまう。
「本当に姫は可愛いな」
耳元で囁いてやる。
顔を離すと紅潮した顔に唇をわななかせ、強張った表情で瞳が潤んだ姫がいた。
目が合うとバッと両の手で顔を隠した。
その様子があまりに可愛く、声を上げて笑った。
「……あまり、イジワルしないで下さい……」
姫が恨めしそうに指の隙間からこちらを見て言った。
その顔もやはり可愛らしい。
「それは無理だ。これが儂の性分だと知っておるであろう?だがこれで姫も目的は果たされるではないか」
「……そうですね……」
頬の紅潮引かないまま、姫はふぅと溜息を一つついた。
「陛下に儀式に出て頂けるなら、頑張った甲斐があります…」
紅潮した顔で複雑そうに笑う。
こうして儂は儀式に出る事になった。
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