人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

文字の大きさ
69 / 200

69

しおりを挟む
 今日は新年の儀式で陛下は一日中忙しくされてるので私は侍女達と大人しく部屋で過ごしている。
 来年の新年は陛下と一緒に一日儀式に晩餐にと忙しくするのだろう。
 今年が多分最後のゆったりとした新年だ。
 とは言っても新年を静かに過ごしたのなんて初めてかもしれない。
 マグダラスの新年は神獣に祈りを捧げる。
 朝から昼過ぎまで続けて、あとは王族のみで新年を祝う晩餐があった。
 グリムヒルトの様に諸侯、官吏まで集まって大々的に晩餐会を開いたりしない。
 マグダラスの場合、お国事情もあるのだろうけど。
「レーナ、パウラ、オルティ、そろそろおやつの時間ですね。少し休憩しましょう」
 今日の私付き担当はこの3人。
 この3人はとてもセンスが良いのでお願い事を頼んでいる最中だ。
「そうですね、姫様。お茶の準備を致しますね」パウラが言う。パウラはお茶の準備を進める為、一礼して部屋を出ていく。
「やはり、皆の意見はこのスターエメラルドが一番良いと一致しましたね」
 オルティは色々と並んだ宝物ほうもつを前に腕組みしている。
「やはりそうですよね」
 最近、セオ鉱山で採れたスターエメラルドを貴重なものだからとヤルンバリさんがわざわざ取り置いて送ってくれた。
「私もそういった貴重なものは陛下に献上するのが一番良いと思うんですよね」
 こういうものはちゃんと国庫に入れて、保管してもらってる方が安全だし手入れだって行き届く。
「だったらやはりブレスレッドに加工されるのが一番かと思います」
 レーナが口添える
「でもそれじゃ陛下のお誕生日には間に合いませんね」
「原石で差し上げるのは失礼になりますか?」私は二人に質問する。
「そういった献上物も過去にはあった事も有りますよ。ただそういった物は800カラット相当の大きさの物だった様に記憶してます」
 レーナが答えてくれる。
 800カラット! そんな大きな宝石あるのね! 私には想像もつかない……。
「とにかく宝石彫刻師に依頼だけしてみましょうか?」
「そうですね。問い合わせだけでもしてみましょう」
「畏まりました」
 そう言ってレーナも一礼して出て行く。

 オルティと二人きりになる。オルティは苦笑いしながら言った。
「陛下のお誕生日で公式に差し上げる物をお選びするのは大変ですね」
「本当に。国の見栄えを考えたら変な物は差し上げられないですからね。太公様のご遺産をお返しする良いチャンスなのかもしれませんけど」
 私も一緒に苦笑いしながら答えた。
「でもきっと陛下はどんな物を贈られても喜ばれると思います。だって、あんなに姫様をご寵愛なさっているのですから」
「公式に差し上げる物は皆が贈る物だから、深い意味はないと思うんですけど」
 オルティはニヤニヤと笑う。
「あら?もしかして公式な物ではない別の物をお贈りになるのですか?」
 私は口元に人差し指を当てる。
「……内緒ですよ?」
 オルティはにこりと笑って心得顔で言う。
「まぁ、きっとお喜びになられますよ」
 本当は陛下に、と言うよりアナバス様に差し上げる物だ。
 城下に降りてどんな物がいいか色々見て回りたい。
 パウラがお茶の準備を整えて戻って来た。
「姫様、お茶が入りますよ。」
「ありがとうございます。今日も皆んなで頂きましょう」
 丁度レーナも帰ってくる。
「姫様、打診はして参りましたがお返事頂けるのは明日になりそうです」
「そうですか。ご苦労様でした。レーナも一緒に頂きましょ」

 このひとときは私にとっては皆んなを知れるいい機会だったりする。
 自分の世話をしてくれる人達がどんな人なのかわかる事はとても大事な事だと思う。
「そういえばオルティはあの騎士の方とはどうなったの?」
 パウラがお菓子を摘みながらオルティに訊ねる。
「え⁈   ……何もありませんよ?そんなに親しくしてるわけではありませんから」
 オルティはしどろもどろで答える。
「あらオルティにはそんなお相手がいるんですか?」
「いや、それが姫様。何でもあちらから声をかけられて、アプローチを受けてるんですって!」
「そんなアプローチだなんて!ただ普通に声をかけて来られるだけで……」
 パウラとオルティが盛り上がっている所にレーナが頬に手を当てて言う。
「……この所、姫様付きの侍女達のそういう話をよく聞きますね。この間はカティもそんな様な事があったと」
「そうなのですか?」
「きっと御正妃様付きの侍女だから今の内に仲良くなっておこうという男性もいるのかもしれません」
「私に付いて貰っても特に得する事はないんですけどね」
 私は苦笑いする。
 オルティが言う。
「あら、そんな事はありませんよ?とても優しいご主人に仕えられて幸せです」
 パウラも笑ってその言葉に同意する。
「こうして一緒におやつを御相伴下さる主人なんて姫様だけですよ」
 レーナも続く。
「本当に。こんな御正妃様は他にいないでしょうね」
 皆んなに褒められてなんだかこそばゆい。
「ありがとうございます。でも私がこの方が気が楽だから合わせて貰ってるだけなんですけどね。だけど皆んな、もしステキな人が現れたら、遠慮なく言って下さいね。応援するから」
 レーナが言う。
「素敵な方なら問題ないけど、しっかりお相手の身元だけは確認するのよ、オルティ」
 オルティは真剣な顔になって返事する。
「はい! 万が一にも姫様に害があってはいけませんもんね」

 侍女三人は引き締まった顔で注意事項を確認していた。
 イーリスの件があってから、皆んなずっとこんな風に万全を期す様にしてくれている。
 私は本当に優秀な侍女達に守られてるんだなぁと改めて思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...