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儂は謁見の間で玉座に座る。
ヴェルウェルトの代表、ハンバル・ニーロ・ヴェルウェルトと、息子で次期代表のヴァルタル・ハンバル・ヴェルウェルトが儂の前に叩頭している。
儂の隣にいる宰相がハンバルとヴァルタルに声をかける。
「さて、先ず密輸の件からお訊ねしましょうか?今回ヴェルウェルト所有の船からご禁制の品が色々と出て来た訳ですが、申し開きは?」
「此度の密輸に関しては我らには寝耳に水と言った次第で恐らく乗組員達でやった事なのでしょう。我らは知りません」
宰相が溜め息を吐いて更に訊ねた。
「では、この裏帳簿については?」
「弁明の余地もございません。それは隠し財産を作る目的でつけておった帳簿です。もちろん、追徴税に応じますれば、何卒、ご容赦の程を」
確かに裏帳簿には品目は書かれていない。恐らく品目の一覧と分けて付けてあるのだろう。
現在、商会の館、支店、ハンバルとヴァルタルの家宅を捜索中だ。
「なるほど? では、ブレスレットについては?」
「これは我らヴェルウェルトの陛下への忠義の証にと、裏のルートで流れそうになっていたロイヤルブルーを私財を叩いて買い戻しました。そのご報告を上げる為、監査の入った当日に使いを出していたのが証拠です」
儂は笑いが込み上げ、ついにくつくつと笑い出してしまった。
「ハンバル、儂の言った通りの口上を述べたか。なかなかに愉快だぞ」
叩頭するハンバルとヴァルタルに動揺の色が浮かぶ。
「表を上げよ、ハンバル・ニーロ・ヴェルウェルト、ヴァルタル・ハンバル・ヴェルウェルト」
頭を上げたハンバルとヴァルタルは儂の顔を見て驚愕する。
「お前に奢って貰った飯と酒はなかなか美味かったぞ。流石は大商人だ、良いものを知っているな」
2人は青褪めて儂を見据えている。
「儂を見てもう一度申し開きしてみよ」
「……陛下……私は……」
「なんだ?」
儂は脚を組み、頬杖をついて口角を上げてハンバルを見る。
「下らぬ申し開きをしてみよ、舌を引き抜いてそれを食わせるぞ?」
ハンバルとヴァルタルはひぃっと肩を震わせた。
「っ……! 密輸の件もブレスレットの件も、全て我らが画策致しました……」
項垂れる様に深く叩頭して絨毯に頭を擦り付けた。
「良かろう。素直に吐けば奢ってもらったよしみだ、温情をかけてやらん事もない」
そして、宰相が官吏達の列に声を落とす。
「ヘンリク・ブロル・ヴィーベリ、前へ」
宝物官補佐のヘンリク・ブロル・ヴィーベリは列の中から素早くやってきて、儂の前で叩頭する。
「陛下にご挨拶を」
「表を上げよ」
脚を組み替え、ヴィーベリを見据えて訊ねた。
「さて、何故呼ばれたかわかるか?」
頭を上げたヴィーベリはここに呼ばれた事に戸惑う様に答えた。
「私には何故ここに呼ばれたのか、皆目見当もつきません」
「お前、面布を被っていても、高級娼館『波ノ屋』でヴィーベリの名を名乗ったであろう?」
「……ヴィーベリなどという名は何処にでもあります故、私だとは断言出来ないかと」
「そうか。では腕を捲って見せろ」
「……っ」
「どうした?見せられないのか?」
「今は障りがあります故……」
「障りとは?」
「……質の悪い出来物が出来ております。感染る種類のもの故、お見せするには憚られます…」
儂はニヤリと笑ってヴィーベリを見る。
「構わぬ。見せろ」
儂が手を上げると兵士達がヴィーベリを取り囲む。そして両脇を押さえ、袖を捲った。
捲った袖の下には包帯が巻かれてある。その包帯を解くと裂傷があった。
「ふむ、変わった出来物だな。儂はつい最近、他者に不慮の事故で傷を与えたのだが、これとよく似ている。さて、申し開きはあるか?」
抑えられていた兵士達の拘束がなくなると、項垂れる様に膝をつき、ヴィーベリもまた絨毯に頭を擦り付けて叩頭した。
「……何も、申し開きはございません……。陛下の御明察通りでございます…」
ヴィーベリを調べた結果、ヴィーベリの母親はハンバルとは従兄弟同士で地方官吏に嫁いだ。ヴァルタルとヴィーベリは再従兄弟にあたる。
勤勉に励み、今の地位は自らの手で手に入れた男である事は確かだ。
「ヴィーベリ、金に目が眩んだか?」
「……私には、長患いで臥せる母がおります……。母の治療に金が必要でした……」
その事についても調べがついていた。ヴィーベリの母親は長い事臥せっていて、病の原因も解らずにいる。
「ふむ。で、お前が御物の破損と強奪について計画したか?」
ヴィーベリは声に力無く、項垂れたまま儂に答えた。
「……はい。私が計画致しました」
「王妃とリュオサが揉めたのもお前の差金だった訳か」
「その通りでございます。リュオサ宝物官を唆し、侍女を合法的に亡き者にしようと」
儂は背もたれに更に深く背を預け、溜め息を吐いた。
「お前のその計画のお陰で優秀な宝石彫刻家が2人死んだ。我が国にとって大損失だ。だが同情の余地もある。その辺りは吟味してやる」
腕を上げて合図を送ると衛士達が三人を取り囲む。
「連れて行け」
その言葉を聞いた衛士達は三人を立たせて連行して行った。
宰相が官吏達に向けて宣下する。
「ヴェルウェルト商会の御用商人の免状はこれを以て破棄されました。以降御用商人の免状はキヴィレフト商会に与える事と致します」
キヴィレフト商会とは、ヴェルウェルト商会ほどの規模ではないが、同じ様に多岐にわたる商売をしている商会で、表立っては知られていないがこの商会は儂と重臣達との合同出資で出来た。
その後の朝議は紛糾する。キヴィレフト商会ではヴェルウェルト商会の代わりは荷が勝ちすぎるだろうというのが紛糾の理由だが、宰相と法相の詭弁で強引に押し通す。
後のハンバルの供述で、品目の一覧表が見つかった事によって、この件は終結した。
ヴェルウェルトの代表、ハンバル・ニーロ・ヴェルウェルトと、息子で次期代表のヴァルタル・ハンバル・ヴェルウェルトが儂の前に叩頭している。
儂の隣にいる宰相がハンバルとヴァルタルに声をかける。
「さて、先ず密輸の件からお訊ねしましょうか?今回ヴェルウェルト所有の船からご禁制の品が色々と出て来た訳ですが、申し開きは?」
「此度の密輸に関しては我らには寝耳に水と言った次第で恐らく乗組員達でやった事なのでしょう。我らは知りません」
宰相が溜め息を吐いて更に訊ねた。
「では、この裏帳簿については?」
「弁明の余地もございません。それは隠し財産を作る目的でつけておった帳簿です。もちろん、追徴税に応じますれば、何卒、ご容赦の程を」
確かに裏帳簿には品目は書かれていない。恐らく品目の一覧と分けて付けてあるのだろう。
現在、商会の館、支店、ハンバルとヴァルタルの家宅を捜索中だ。
「なるほど? では、ブレスレットについては?」
「これは我らヴェルウェルトの陛下への忠義の証にと、裏のルートで流れそうになっていたロイヤルブルーを私財を叩いて買い戻しました。そのご報告を上げる為、監査の入った当日に使いを出していたのが証拠です」
儂は笑いが込み上げ、ついにくつくつと笑い出してしまった。
「ハンバル、儂の言った通りの口上を述べたか。なかなかに愉快だぞ」
叩頭するハンバルとヴァルタルに動揺の色が浮かぶ。
「表を上げよ、ハンバル・ニーロ・ヴェルウェルト、ヴァルタル・ハンバル・ヴェルウェルト」
頭を上げたハンバルとヴァルタルは儂の顔を見て驚愕する。
「お前に奢って貰った飯と酒はなかなか美味かったぞ。流石は大商人だ、良いものを知っているな」
2人は青褪めて儂を見据えている。
「儂を見てもう一度申し開きしてみよ」
「……陛下……私は……」
「なんだ?」
儂は脚を組み、頬杖をついて口角を上げてハンバルを見る。
「下らぬ申し開きをしてみよ、舌を引き抜いてそれを食わせるぞ?」
ハンバルとヴァルタルはひぃっと肩を震わせた。
「っ……! 密輸の件もブレスレットの件も、全て我らが画策致しました……」
項垂れる様に深く叩頭して絨毯に頭を擦り付けた。
「良かろう。素直に吐けば奢ってもらったよしみだ、温情をかけてやらん事もない」
そして、宰相が官吏達の列に声を落とす。
「ヘンリク・ブロル・ヴィーベリ、前へ」
宝物官補佐のヘンリク・ブロル・ヴィーベリは列の中から素早くやってきて、儂の前で叩頭する。
「陛下にご挨拶を」
「表を上げよ」
脚を組み替え、ヴィーベリを見据えて訊ねた。
「さて、何故呼ばれたかわかるか?」
頭を上げたヴィーベリはここに呼ばれた事に戸惑う様に答えた。
「私には何故ここに呼ばれたのか、皆目見当もつきません」
「お前、面布を被っていても、高級娼館『波ノ屋』でヴィーベリの名を名乗ったであろう?」
「……ヴィーベリなどという名は何処にでもあります故、私だとは断言出来ないかと」
「そうか。では腕を捲って見せろ」
「……っ」
「どうした?見せられないのか?」
「今は障りがあります故……」
「障りとは?」
「……質の悪い出来物が出来ております。感染る種類のもの故、お見せするには憚られます…」
儂はニヤリと笑ってヴィーベリを見る。
「構わぬ。見せろ」
儂が手を上げると兵士達がヴィーベリを取り囲む。そして両脇を押さえ、袖を捲った。
捲った袖の下には包帯が巻かれてある。その包帯を解くと裂傷があった。
「ふむ、変わった出来物だな。儂はつい最近、他者に不慮の事故で傷を与えたのだが、これとよく似ている。さて、申し開きはあるか?」
抑えられていた兵士達の拘束がなくなると、項垂れる様に膝をつき、ヴィーベリもまた絨毯に頭を擦り付けて叩頭した。
「……何も、申し開きはございません……。陛下の御明察通りでございます…」
ヴィーベリを調べた結果、ヴィーベリの母親はハンバルとは従兄弟同士で地方官吏に嫁いだ。ヴァルタルとヴィーベリは再従兄弟にあたる。
勤勉に励み、今の地位は自らの手で手に入れた男である事は確かだ。
「ヴィーベリ、金に目が眩んだか?」
「……私には、長患いで臥せる母がおります……。母の治療に金が必要でした……」
その事についても調べがついていた。ヴィーベリの母親は長い事臥せっていて、病の原因も解らずにいる。
「ふむ。で、お前が御物の破損と強奪について計画したか?」
ヴィーベリは声に力無く、項垂れたまま儂に答えた。
「……はい。私が計画致しました」
「王妃とリュオサが揉めたのもお前の差金だった訳か」
「その通りでございます。リュオサ宝物官を唆し、侍女を合法的に亡き者にしようと」
儂は背もたれに更に深く背を預け、溜め息を吐いた。
「お前のその計画のお陰で優秀な宝石彫刻家が2人死んだ。我が国にとって大損失だ。だが同情の余地もある。その辺りは吟味してやる」
腕を上げて合図を送ると衛士達が三人を取り囲む。
「連れて行け」
その言葉を聞いた衛士達は三人を立たせて連行して行った。
宰相が官吏達に向けて宣下する。
「ヴェルウェルト商会の御用商人の免状はこれを以て破棄されました。以降御用商人の免状はキヴィレフト商会に与える事と致します」
キヴィレフト商会とは、ヴェルウェルト商会ほどの規模ではないが、同じ様に多岐にわたる商売をしている商会で、表立っては知られていないがこの商会は儂と重臣達との合同出資で出来た。
その後の朝議は紛糾する。キヴィレフト商会ではヴェルウェルト商会の代わりは荷が勝ちすぎるだろうというのが紛糾の理由だが、宰相と法相の詭弁で強引に押し通す。
後のハンバルの供述で、品目の一覧表が見つかった事によって、この件は終結した。
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