【本編完結】白紙の未来

Popo

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第16話

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保健室登校を始めて一ヶ月。

これ以上ないほど快適な学校生活を送れていた。

他の学生と被らないように朝9時に登校し、職員玄関から入る。
クラスの靴箱ではなく職員玄関から入るのは、玄関に置いてある空きの靴箱に内履きを移したためだ。

内履きに履き替えたら相談室につながっているドアから入る。
保健室にすぐに入らないのは、けが人や体調不良などで保健室に来ている人たちと顔を合わせないため。

相談室なら使っている表示にすれば誰も入ってこない。もしかしたら家より安息の地になっているかもしれない。

相談室に持ってきた荷物を置いたら保健室につながる扉をノックする。

先生に来たことを伝えるため。

勉強をする準備をしていると保健室への扉が開く。

「おはよう、杏君。」

「おはようございます。夏井なつい先生。」

「とりあえず、はい、今日の分のプリント。」

「ありがとうございます。」

夏井志麻なついしま先生は毎日俺にプリントを持ってきてくれる。
俺が取りに行くといったら先生は
「僕が杏君に話しかけるきっかけを作らせてよ。」
と笑いながら言われたので別にいいかと思い毎日もってきてきてくれるらしい。

教科ごとに今日の単元のプリントがありそれらを教科書見ながら解いて提出すれば出席点としてみなしてもらえるので必ずやらなくてはいけないプリント。

テストはテストで成績配分があるのでしっかりいい点を取らなくてはならない俺は終わったら自習をするためのテキストも持ってきている。

わからないところが有れば夏井先生が教えてくれるので教室にいなくとも意外と勉強にはついていけている。

ある日、数学のテキストの問題が難しくて解けなかったとき、ちょうど夏井先生が様子を見にきてくれていた。

「それはこうやって解けるんだよ。」って
近くにあった裏紙で解き始めて解説までしてくれたのだが今までで一番理解できたので、それからほんとにわからないとき夏井先生に教えてもらっている。

俺の会話のテンポに合わせてくれるから会話しやすいし、ちゃんとリアクションをくれるから話すのが少し楽しかった。

結局学校でも集中した時間を得たおかげで中間考査の点数は学年2位の点数だった。

だけど確実にα欠乏症は進行していたようで中間が終わってから一ヶ月間発情期が続いた。記憶は曖昧だけど、井上さんがたくさん水とゼリーを持って来てくれたおかげで脱水症状にもならなかった。

発情期が始まった日に学校へ連絡はしてもらったので夏井先生は知っているはず。

久しぶりの登校でも憂鬱な気持ちにならずに学校に通えるのは先生のおかげかもと思いながら一ヶ月ぶりに登校した。

「杏君、久しぶり。体調どう?」

「まだ少しだるいかなくらいです。」

「無理しないでしんどくなったら帰ってもいいからね。」

「はい。」

「それから、発情期での休みは特別欠席になるから出席日数は気にしなくて大丈夫だよ。」

「そうなんですね。よかった。今日、いっぱいプリントやらないとかもって思ってたから…。」

「…ひとつだけ杏君に質問してもいい?」

「はい?なんでも聞いてもらって大丈夫ですけど…?」

「それじゃあ…杏君のα欠乏症はいつからかな?」

「三年生の冬?ぐらいに確か番の解消されたからそれくらいだと思います。」

「そっか…今回の発情期も多分症状の一種だし、絶対無理しないように。」

「気をつけるようには…します。」

「そこは守りますとか、はいとかの返事でいいのに。」

やっぱり夏目先生は話しやすい。
少し日差しが強くなって来た最近はもうすぐ夏に入ろうとしていた。


そしてついに俺は運命の人と出会った。
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