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婚約破棄の舞台は王宮の晩餐会
ついに、その日がやってきた。
王宮で開催される大晩餐会。
アグネスは、先日私の部屋で「彼を譲って」と宣言し、私が泣く泣く承諾したことで、有頂天になっていた。彼女の今日のドレスは、身の丈に合わないほど豪華なものだが、それもフレデリックが「将来の侯爵夫人への投資」として、公爵家へのツケで購入させたものだ。
会場に足を踏み入れると、フレデリックが誇らしげに胸を張り、その隣には婚約者である私ではなく、アグネスが堂々と寄り添っていた。
「おい、ダイアナ。例の件、今日ここで発表させてもらうぞ。君も納得済みなんだろう?」
フレデリックが耳元で低く囁く。
周囲の貴族たちは、公然と別の令嬢を連れ歩くフレデリックの不誠実さと、それに耐えているように見える私を見て、ひそひそと非難の声を上げている。
「……はい、フレデリック様。皆様の前で、すべてを明らかにいたしましょう」
私は悲しげに目を伏せ、壇上へと向かう彼らの後ろに従った。
アグネスは、集まった人々を見渡し、自分がこれから「愛によって勝利したヒロイン」として祝福される瞬間を確信し、頬を紅潮させている。
フレデリックが朗々と声を上げた。
「皆様、ご注目いただきたい! 今日、私はローゼンタール公爵令嬢ダイアナとの婚約を解消し、真実の愛で結ばれたアグネス・メルネス伯爵令嬢と新たに婚約することをここに宣言する!」
会場が騒然となる。
アグネスは勝ち誇った顔で私を見た。
その瞳は「奪ってやったわ!」という狂喜に満ちている。
――けれど、私の反撃はここからだ。
「……フレデリック様。アグネス。お二人のご決断、確かに承りました。アグネス、貴女は先日私の部屋で、彼の『すべて』を引き受けると約束してくださいましたわね?」
「ええ、もちろんよ! ダイアナ、貴女に代わって私が彼を幸せにしてみせるわ!」
アグネスが力強く宣言した瞬間。
私は扇を閉じ、それまでの弱々しい表情を一変させた。
背筋を伸ばし、公爵令嬢としての冷徹な眼差しで、二人を見据える。
「……それでは、証人の方々をお呼びしましょう。エリオット侯爵、そして王立騎士団の皆様、どうぞ」
会場の扉が開き、鎧の音を響かせて騎士団が突入してきた。
顔を蒼白にするフレデリックと、何が起きたか分からず呆然とするアグネス。
「な、何だこれは!? ダイアナ、何の真似だ!」
「フレデリック様、貴方が公爵家の事業資金を横領し、賭博とアグネス嬢への贈り物に充てていた証拠はすべて揃っています。そしてアグネス……貴女の実家が手を染めていた魔導触媒の密売についても、貴女が『彼のすべてを引き受ける』と言ったことで、共犯関係の精査が必要になりましたわ」
私は、バナードが持ってきた膨大な借用書と証拠書類の束を、壇上に叩きつけた。
「アグネス、貴女が欲しがったこの男は、今日この瞬間をもって一文無しの罪人です。そして彼が抱える数百万ゴールドの負債……貴女が『引き受ける』と言ったその言葉、会場の皆様もしっかりと聞いていらっしゃいましたわね?」
アグネスの顔から、一気に血の気が引いていく。
彼女が手に入れたのは、輝かしい侯爵夫人の座ではなく、一生かかっても返せない負債と、実家を破滅させる決定打だった。
「そんな……嘘よ、ダイアナ! 私、こんな……こんなはずじゃ……!」
「あら、欲しがったのは貴女でしょう? 親友の『大切なもの』を奪うのが大好きなんですものね。……どうぞ、存分に味わいなさい。その、ゴミのような幸福を」
私は優雅に一礼し、絶望に崩れ落ちる二人を背に、ゆっくりと歩き出した。
会場には、裏切り者たちへの冷ややかな嘲笑と、正当な裁きを支持する拍手が湧き起こっていた。
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王宮で開催される大晩餐会。
アグネスは、先日私の部屋で「彼を譲って」と宣言し、私が泣く泣く承諾したことで、有頂天になっていた。彼女の今日のドレスは、身の丈に合わないほど豪華なものだが、それもフレデリックが「将来の侯爵夫人への投資」として、公爵家へのツケで購入させたものだ。
会場に足を踏み入れると、フレデリックが誇らしげに胸を張り、その隣には婚約者である私ではなく、アグネスが堂々と寄り添っていた。
「おい、ダイアナ。例の件、今日ここで発表させてもらうぞ。君も納得済みなんだろう?」
フレデリックが耳元で低く囁く。
周囲の貴族たちは、公然と別の令嬢を連れ歩くフレデリックの不誠実さと、それに耐えているように見える私を見て、ひそひそと非難の声を上げている。
「……はい、フレデリック様。皆様の前で、すべてを明らかにいたしましょう」
私は悲しげに目を伏せ、壇上へと向かう彼らの後ろに従った。
アグネスは、集まった人々を見渡し、自分がこれから「愛によって勝利したヒロイン」として祝福される瞬間を確信し、頬を紅潮させている。
フレデリックが朗々と声を上げた。
「皆様、ご注目いただきたい! 今日、私はローゼンタール公爵令嬢ダイアナとの婚約を解消し、真実の愛で結ばれたアグネス・メルネス伯爵令嬢と新たに婚約することをここに宣言する!」
会場が騒然となる。
アグネスは勝ち誇った顔で私を見た。
その瞳は「奪ってやったわ!」という狂喜に満ちている。
――けれど、私の反撃はここからだ。
「……フレデリック様。アグネス。お二人のご決断、確かに承りました。アグネス、貴女は先日私の部屋で、彼の『すべて』を引き受けると約束してくださいましたわね?」
「ええ、もちろんよ! ダイアナ、貴女に代わって私が彼を幸せにしてみせるわ!」
アグネスが力強く宣言した瞬間。
私は扇を閉じ、それまでの弱々しい表情を一変させた。
背筋を伸ばし、公爵令嬢としての冷徹な眼差しで、二人を見据える。
「……それでは、証人の方々をお呼びしましょう。エリオット侯爵、そして王立騎士団の皆様、どうぞ」
会場の扉が開き、鎧の音を響かせて騎士団が突入してきた。
顔を蒼白にするフレデリックと、何が起きたか分からず呆然とするアグネス。
「な、何だこれは!? ダイアナ、何の真似だ!」
「フレデリック様、貴方が公爵家の事業資金を横領し、賭博とアグネス嬢への贈り物に充てていた証拠はすべて揃っています。そしてアグネス……貴女の実家が手を染めていた魔導触媒の密売についても、貴女が『彼のすべてを引き受ける』と言ったことで、共犯関係の精査が必要になりましたわ」
私は、バナードが持ってきた膨大な借用書と証拠書類の束を、壇上に叩きつけた。
「アグネス、貴女が欲しがったこの男は、今日この瞬間をもって一文無しの罪人です。そして彼が抱える数百万ゴールドの負債……貴女が『引き受ける』と言ったその言葉、会場の皆様もしっかりと聞いていらっしゃいましたわね?」
アグネスの顔から、一気に血の気が引いていく。
彼女が手に入れたのは、輝かしい侯爵夫人の座ではなく、一生かかっても返せない負債と、実家を破滅させる決定打だった。
「そんな……嘘よ、ダイアナ! 私、こんな……こんなはずじゃ……!」
「あら、欲しがったのは貴女でしょう? 親友の『大切なもの』を奪うのが大好きなんですものね。……どうぞ、存分に味わいなさい。その、ゴミのような幸福を」
私は優雅に一礼し、絶望に崩れ落ちる二人を背に、ゆっくりと歩き出した。
会場には、裏切り者たちへの冷ややかな嘲笑と、正当な裁きを支持する拍手が湧き起こっていた。
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✴︎題名少し変更しました。