政略結婚した浮気男が、今さら本気で愛を囁いてきます!

恋せよ恋

文字の大きさ
11 / 42

遊びは浮気ではない

しおりを挟む
 ブルボン侯爵家の夜会の会場は煌びやかなシャンデリアに照らされ、貴族たちの笑い声や談笑が響き渡る。
 第二王子アルベルトは婚約者のブルボン侯爵令嬢オーレリアの隣で優雅に立ち振る舞う。

 一方で、アルベールはその場でも一際目を引く美貌で、貴族令嬢から未亡人まで、多くの女性が自然と集まる。
 低く色気のある声と、端正な顔立ちに加え、ほんの少しの挑発的な微笑――それだけで、相手の心を揺さぶるのだ。



 夜会の終盤。音楽は静まり、煌びやかな灯が一層やわらかく揺らめく。
 アルベールはフォルモン伯爵家の未亡人――エレーヌ前伯爵夫人と、バルコニーの奥で密やかに言葉を交わしていた。

 淡い香水の香りと、絹のドレスの擦れる音。月明かりに照らされた夫人は、年齢を重ねてもなお美しく、憂いを帯びた瞳でアルベールを見つめる。

「……ロクサーヌ様は、よろしいの?」
艶やかに微笑みながら、わざとらしくその名を口にする。

 一瞬だけ、アルベールの表情が揺らいだ。だが次の瞬間、彼は優雅に微笑み返し、そっと夫人の手を取った。

「今は――あなたのことだけ、考えさせてください」

 その囁きは、夜風よりも静かで、熱を帯びていた。夫人はゆっくりとその瞳を細め、微笑のままアルベールの肩に手を添える。
――ただ劣情に身を任せた。

 だが、瞼を閉じるたびに思い浮かぶのは、あの少女の顔だった。
 まだ若く、純粋で、少し意地っ張りで――ロクサーヌ。

 夫人の唇を受け止めながらも、心の奥では別の名が響いていた。

 夜は静かに、更けていった。



 休憩室から夜会会場に戻ると、第二王子アルベルトが低い声で小言を言う。
「アルベール、遊びすぎじゃないか?今のお前は妻帯者だろう?」

 アルベールは軽く笑い、肩をすくめて答える。
「だって、妻が十六歳で……あと三年も手が出せないんだぜ」
 小声で愚痴を零すその表情は、どこか子どもっぽくもある。第二王子と伯爵令息ではあるが、側近であり友人だ。

 アルベールの目は、会場に集まる多くの女性を軽く流しつつも、内心は真剣そのもの。
 ――身体の関係はあっても、それは“遊び”であり、浮気じゃない。今までとは違う......。

 本当に大切なのはロクサーヌただ一人。十六歳の少女に劣情は向けられない。割り切った関係の女性たちなら問題はおきないはずだ――彼女のことを本気で好きになっている自分を、否定できなかった。

 アルベールは一瞬、ロクサーヌの面影を思い浮かべる。
 微笑み、毅然と、時に強くて芯のあるあの令嬢――
 ――ああ、今夜も、俺の心は君のものでしかない。

 その誓いのような決意を胸に、アルベールはまた笑みを浮かべ、周囲の女性たちに軽く挨拶する。
 表面上は軽やかで社交的、だが心の奥は完全にロクサーヌ一筋――
 まさに、貴族社会での二重生活の中に、一筋の真実だけを抱えていた。
 
 そんな彼を見つめる女性がいた。
____________

エール📣いいね❤️お気に入り⭐️応援よろしくお願いします🙇‍♀️
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

婚約破棄ですか?結構ですわ。ですが違約金は国家予算になります

しおしお
恋愛
王太子エドガルドの婚約者である公爵令嬢アルシェラ・ヴァルディア。 だがある日、王太子は彼女を遠ざけ、代わりに義妹ノエリアを伴うようになる。 やがて社交界ではこう囁かれ始めた。 「王太子はアルシェラとの婚約を破棄するつもりらしい」と。 しかし―― アルシェラは慌てることも、泣くこともなかった。 「婚約破棄?どうぞご自由に」 そう微笑む彼女の手には、王家とヴァルディア家が結んだ正式な婚約契約書があった。 その契約には一つの条項がある。 王家が婚約を破棄する場合、違約金は“王国北方防衛費十年分”。 つまり、国家財政すら揺るがす巨額の賠償金。 そして春の王宮舞踏会―― 王太子は満場の貴族の前で婚約破棄を宣言する。 だがその瞬間、アルシェラは契約書を掲げた。 「婚約破棄はご自由に。ただし契約は守ってくださいませ」 王太子、義妹、そして王家を巻き込んだ 社交界最大の公開逆転劇が幕を開ける。 これは、静かな公爵令嬢が 契約一枚で王太子の“真実の愛”を叩き潰す物語。

『婚約破棄された公爵令嬢は、王と交わらない道を選ぶ』

ふわふわ
恋愛
婚約者である王太子アルベルトから、一方的に婚約破棄を告げられた公爵令嬢エレノア。 だが彼女は、涙も復讐も選ばなかった。 「婚約は、役目でしたもの。終わったのなら、それで結構ですわ」 王宮を去ったエレノアは、領地に戻り、 干渉しない・依存しない・無理をしない ただそれだけを軸に、静かに領地運営を始める。 一方、王となったアルベルトもまた、 彼女に頼らないことを選び、 「一人の判断に依存しない国」を作るための統治に身を投じていた。 復縁もしない。 恋にすがらない。 それでも、二人の選択は確かに国を安定へと導いていく。 これは、 交わらないことを選んだ二人が、 それぞれの場所で“続けられる世界”を完成させる物語。 派手なざまぁも、甘い溺愛もない。 けれど、静かに積み重なる判断と選択が、 やがて「誰にも壊せない秩序」へと変わっていく――。 婚約破棄から始まる、 大人のための静かなざまぁ恋愛ファンタジー

私の人生に、おかえりなさい。――都合のいい「お姉ちゃん」は、もうどこにもいません

しょくぱん
恋愛
「お姉ちゃんなんだから」 ――それは私を縛る呪いの言葉だった。 家族の醜い穢れを一身に吸い込み、妹の美しさの「身代わり」として生きてきた私。 痛みで感覚を失った手も、鏡に映らない存在も、全ては家族のためだと信じていた。 でも、、そんな私、私じゃない!! ―― 私は、もう逃げない。 失われた人生を取り戻した今、私は、私に告げるだろう。 「私の人生に、おかえりなさい。」

婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました

鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」 そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。 王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。 私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。 けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。 華やかな王宮。 厳しい王妃許育。 揺らぐ王家の威信。 そして――王子の重大な過ち。 王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。 離縁を望んでも叶わない義妹。 肩書きを失ってなお歩き直す王子。 そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。 ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。 婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

処理中です...