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恋愛体質クラリッサの黒歴史
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クラリッサは静かにフェルナンド団長室を後にし、静かな回廊を歩き出したところで――
「王妃殿下の優秀な女官殿は、もう帰っちゃうの?」
軽い足音とともに、背後からウィリアムの声が飛んできた。
振り返ると、先ほどの軽口そのままの笑顔でこちらへ歩いてくる。
「副団長様……ごきげんよう。......お仕事はよろしいのですか?」
「うん? まあ、ちょっとだけね。君が通り過ぎるのを見て、つい声をかけたくなってさ。」
(……“つい”って便利な言葉ね。絶対、誰にでも言ってるわ)
心の中で密かに毒づきながらも、表情は崩さず穏やかな微笑みを返した。
「わたしはもう戻りますので……」
「送ろうか? 王妃殿下のお部屋まで。」
「いえ、そこまでしていただかなくても大丈夫です。」
( なに恐ろしいこと言ってくれちゃってるのよ!そんなことされたら、宮廷中の女性たちの嫉妬を買って......うわあ、想像しただけでも、こわっ)
やんわりと拒むと、ウィリアムは胸に手を当て、大げさに肩を落とす。
「そんなに避けられると、ちょっと傷つくなぁ……」
冗談めかした声音。けれど、その碧眼は相変わらずまっすぐで、女性慣れした余裕が漂っている。
「避けてなどおりません。ただ、私は仕事中ですから。」
「じゃあ、仕事が終わったら? ……そのときは、お茶の誘い、受けてくれる?」
一瞬、足が止まる。
(……本気で言ってるのかしら。それとも、またいつもの“誰にでも”のやつ?)
迷いを悟られないように、クラリッサは静かに声を返した。
「そのときの予定しだい、ですね。」
「そっか。じゃあ、楽しみにしてる。」
ウィリアムは明るい笑みを浮かべ、軽く手を振って戻っていった。
残されたクラリッサは、小さく息をつく。
(自分の婚約者を口説いている自覚もないのね。本当に……困った方だわ。だけど……)
胸の奥に、小さな波紋のような感情が広がった。
( ウィリアム様の誘いの言葉なんて、誰にでも言っているのに……。深入りすると面倒なことになるのは目に見えてるし、最初から距離を置いておくに限るわ……)
クラリッサはその違和感を閉じ込めるように一度だけ胸に手を当て、それから王妃の待つ部屋へと歩みを進めた。
書類に目を落としていた手を止め、フェルナンドは執務室の奥から聞こえる足音に気づいた。
「ウィリアム、少し話がある。」
低く落ち着いた声に、ウィリアムがふと立ち止まる。
あの軽やかな笑みは消え、少し困惑した表情が浮かぶ。
「団長……?」
扉の外で、王妃殿下の女官に声をかけていたことを、彼は察しているだろう。
目の前の灰青色の瞳は、あまりにも冷静で鋭い。
「王妃殿下の補佐官への軽口だが、あれは余計だったな。」
言葉に感情はほとんど含まれていない。ただ淡々と、しかし明確に叱責の意図が伝わる口調。
「軽口……? ああ、その、つい……社交みたいなものですし......。」
言い訳をしようとするウィリアムの声に、フェルナンドは軽く首を振った。
「つい、では済まされない。補佐官は王妃殿下直属の者だ。副団長の不用意な振る舞いが、任務の妨げになることもある。」
言葉の一つ一つが、重く、真剣に響く。普段のウィリアムの奔放さなら、ここで冗談にしてかわすところだが――
「……わかりました、団長。以後、気をつけます。」
ウィリアムの声には、軽い反発が混じる。
団長の視線が、それだけで彼の心を抑え込むのだ。
「よろしい。それができれば、君は優秀な副団長だ。」
短い言葉だが、そこには“許し”ではなく、指導者としての冷静な評価が含まれる。
フェルナンドは再び書類に視線を戻した。王宮の女官への軽口など、部下の問題に過ぎない。だが、その余波を最小限に抑えるのも、団長としての責務だ。
ウィリアムの背中が去った後も、机上の書類よりも僅かに意識の片隅に、“失恋に涙していた”頃のクラリッサの姿がちらつく。
それを無視するように、再びペンを取り、静かに執務を再開した。
◇◇◇
クラリッサが、十歳でウィリアムと婚約した当時――。
あの頃のわたしは、“憧れの王子様ウィリアム”が、そのまま“自分だけの王子様”になったと、本気で思い込んでいた。
……今思えば、なんて横暴で視野の狭い思考をしていたんだろう。あの頃のわたしに説教したい。
「ウィリアム様、大好きです! ご一緒してもよろしいですか?」
なんて、最初は控えめに距離を詰めていたはずなのだ。ほんの最初だけは。
でも「五歳差」って、当時のわたしには 大人と子どもくらいの差に感じられたのだ。
そしてウィリアム様にとっても、その差は だいぶご不満だったらしく、
態度や表情が「……子ども相手とか、無理なんだけど?」と雄弁に語っていた。
出会った当時のウィリアム様は、いつもどこか苛立っているように見えた。
……いえ、子どものわたしの目にはそう“映っていた”だけかもしれないが。
ウィリアム様が学園を卒業し、騎士団へ入団された頃からだろうか。
周囲に“女性の影”がちらほら見えるようになってきた。
十四歳になっていたわたしは、思春期特有の“潔癖で一直線な恋心”をフルスロットルで炸裂させていた。
「今日は 誰 と、どこ へ行ったのですか?」
「わたしを最優先してください! 会ってくださらないと嫌です!」
「他の女性と会わないでください! お話しするのもダメです!」
今思えば、完全に暴走機関車だが、当時のわたしは真っ直ぐで、超本気だった。
ウィリアム様に邪険に扱われても、『まあ……照れていらっしゃるのね』と、都合よく脳内変換してスルー。
お茶会を直前で断られても、『お忙しいのだわ! わたしと会えなくて落ち込んでいらっしゃるかも!』と、前向きすぎる解釈をしていた。
そのうえ毎日、鬱陶しいほどラブレターやカードを送りつけ――会えなければ待ち伏せし、思いつきで騎士団宿舎を訪ねたりもした。
……そんなことさえしなければ、今でも「恋する可憐な少女」でいられたのに。
いま振り返れば、あれはもう黒歴史どころか 黒魔術級の痛さ だと思う。
……十九歳になった今のわたしなら、完全にアウトだとわかる。
でも当時のわたしの世界は、もう本当にウィリアム様一色だったのだ。
今思えば、ウィリアム様はさぞ息苦しかっただろう。
婚約者はまだ子ども、しかも身分も微妙な子爵令嬢――申し訳なさすぎて土下座したい。
お気に入りのテディベアを独占する勢いで、ウィリアム様を振り回していたのだから。
ああ……穴があったら入りたい。いや、入りたいどころか埋まりたい。まさに、黒歴史のフルコースである。
______________
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📣応援をよろしくお願いします!
「王妃殿下の優秀な女官殿は、もう帰っちゃうの?」
軽い足音とともに、背後からウィリアムの声が飛んできた。
振り返ると、先ほどの軽口そのままの笑顔でこちらへ歩いてくる。
「副団長様……ごきげんよう。......お仕事はよろしいのですか?」
「うん? まあ、ちょっとだけね。君が通り過ぎるのを見て、つい声をかけたくなってさ。」
(……“つい”って便利な言葉ね。絶対、誰にでも言ってるわ)
心の中で密かに毒づきながらも、表情は崩さず穏やかな微笑みを返した。
「わたしはもう戻りますので……」
「送ろうか? 王妃殿下のお部屋まで。」
「いえ、そこまでしていただかなくても大丈夫です。」
( なに恐ろしいこと言ってくれちゃってるのよ!そんなことされたら、宮廷中の女性たちの嫉妬を買って......うわあ、想像しただけでも、こわっ)
やんわりと拒むと、ウィリアムは胸に手を当て、大げさに肩を落とす。
「そんなに避けられると、ちょっと傷つくなぁ……」
冗談めかした声音。けれど、その碧眼は相変わらずまっすぐで、女性慣れした余裕が漂っている。
「避けてなどおりません。ただ、私は仕事中ですから。」
「じゃあ、仕事が終わったら? ……そのときは、お茶の誘い、受けてくれる?」
一瞬、足が止まる。
(……本気で言ってるのかしら。それとも、またいつもの“誰にでも”のやつ?)
迷いを悟られないように、クラリッサは静かに声を返した。
「そのときの予定しだい、ですね。」
「そっか。じゃあ、楽しみにしてる。」
ウィリアムは明るい笑みを浮かべ、軽く手を振って戻っていった。
残されたクラリッサは、小さく息をつく。
(自分の婚約者を口説いている自覚もないのね。本当に……困った方だわ。だけど……)
胸の奥に、小さな波紋のような感情が広がった。
( ウィリアム様の誘いの言葉なんて、誰にでも言っているのに……。深入りすると面倒なことになるのは目に見えてるし、最初から距離を置いておくに限るわ……)
クラリッサはその違和感を閉じ込めるように一度だけ胸に手を当て、それから王妃の待つ部屋へと歩みを進めた。
書類に目を落としていた手を止め、フェルナンドは執務室の奥から聞こえる足音に気づいた。
「ウィリアム、少し話がある。」
低く落ち着いた声に、ウィリアムがふと立ち止まる。
あの軽やかな笑みは消え、少し困惑した表情が浮かぶ。
「団長……?」
扉の外で、王妃殿下の女官に声をかけていたことを、彼は察しているだろう。
目の前の灰青色の瞳は、あまりにも冷静で鋭い。
「王妃殿下の補佐官への軽口だが、あれは余計だったな。」
言葉に感情はほとんど含まれていない。ただ淡々と、しかし明確に叱責の意図が伝わる口調。
「軽口……? ああ、その、つい……社交みたいなものですし......。」
言い訳をしようとするウィリアムの声に、フェルナンドは軽く首を振った。
「つい、では済まされない。補佐官は王妃殿下直属の者だ。副団長の不用意な振る舞いが、任務の妨げになることもある。」
言葉の一つ一つが、重く、真剣に響く。普段のウィリアムの奔放さなら、ここで冗談にしてかわすところだが――
「……わかりました、団長。以後、気をつけます。」
ウィリアムの声には、軽い反発が混じる。
団長の視線が、それだけで彼の心を抑え込むのだ。
「よろしい。それができれば、君は優秀な副団長だ。」
短い言葉だが、そこには“許し”ではなく、指導者としての冷静な評価が含まれる。
フェルナンドは再び書類に視線を戻した。王宮の女官への軽口など、部下の問題に過ぎない。だが、その余波を最小限に抑えるのも、団長としての責務だ。
ウィリアムの背中が去った後も、机上の書類よりも僅かに意識の片隅に、“失恋に涙していた”頃のクラリッサの姿がちらつく。
それを無視するように、再びペンを取り、静かに執務を再開した。
◇◇◇
クラリッサが、十歳でウィリアムと婚約した当時――。
あの頃のわたしは、“憧れの王子様ウィリアム”が、そのまま“自分だけの王子様”になったと、本気で思い込んでいた。
……今思えば、なんて横暴で視野の狭い思考をしていたんだろう。あの頃のわたしに説教したい。
「ウィリアム様、大好きです! ご一緒してもよろしいですか?」
なんて、最初は控えめに距離を詰めていたはずなのだ。ほんの最初だけは。
でも「五歳差」って、当時のわたしには 大人と子どもくらいの差に感じられたのだ。
そしてウィリアム様にとっても、その差は だいぶご不満だったらしく、
態度や表情が「……子ども相手とか、無理なんだけど?」と雄弁に語っていた。
出会った当時のウィリアム様は、いつもどこか苛立っているように見えた。
……いえ、子どものわたしの目にはそう“映っていた”だけかもしれないが。
ウィリアム様が学園を卒業し、騎士団へ入団された頃からだろうか。
周囲に“女性の影”がちらほら見えるようになってきた。
十四歳になっていたわたしは、思春期特有の“潔癖で一直線な恋心”をフルスロットルで炸裂させていた。
「今日は 誰 と、どこ へ行ったのですか?」
「わたしを最優先してください! 会ってくださらないと嫌です!」
「他の女性と会わないでください! お話しするのもダメです!」
今思えば、完全に暴走機関車だが、当時のわたしは真っ直ぐで、超本気だった。
ウィリアム様に邪険に扱われても、『まあ……照れていらっしゃるのね』と、都合よく脳内変換してスルー。
お茶会を直前で断られても、『お忙しいのだわ! わたしと会えなくて落ち込んでいらっしゃるかも!』と、前向きすぎる解釈をしていた。
そのうえ毎日、鬱陶しいほどラブレターやカードを送りつけ――会えなければ待ち伏せし、思いつきで騎士団宿舎を訪ねたりもした。
……そんなことさえしなければ、今でも「恋する可憐な少女」でいられたのに。
いま振り返れば、あれはもう黒歴史どころか 黒魔術級の痛さ だと思う。
……十九歳になった今のわたしなら、完全にアウトだとわかる。
でも当時のわたしの世界は、もう本当にウィリアム様一色だったのだ。
今思えば、ウィリアム様はさぞ息苦しかっただろう。
婚約者はまだ子ども、しかも身分も微妙な子爵令嬢――申し訳なさすぎて土下座したい。
お気に入りのテディベアを独占する勢いで、ウィリアム様を振り回していたのだから。
ああ……穴があったら入りたい。いや、入りたいどころか埋まりたい。まさに、黒歴史のフルコースである。
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