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【1】疑問★
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これは利害の一致から始まった偽りの関係。
そのはずだったのに、どうして?
「あっ――待って、ユアン様!」
身体の奥深くに埋められた欲望が脈打ち息が詰まる。
熱い吐息が肌に触れ、強く打ち付けられると自分のもとは思えない甘い声が零れた。
終わりを願ったはずなのに、どうして彼の腕に抱かれているの?
「ディアナ」
熱を孕んだ囁きが、幾度となく呼ばれてきた自分の名前を特別なものだと錯覚させる。
風邪を引いたわけでもないのに身体中が熱かった。
知らない。
こんなこと、わたくしは知らない……
掴みどころのない人だと思った。
へらへらといつも笑ってばかり。
それなのに心は冷めている。
何を考えているのかちっともわからない。
初めて出会った日からユアンには振り回されてばかりいた。
人の気も知らずに、平然と心を乱す。
他人に興味がないのかと思えばこちらが驚くほどの鋭さで心を暴く。
率直に言えば苦手で、理解に苦しむ人だった。
ああ――
だとしたら、最初からこの人は何も変わっていないのだ。
「どうして……」
「どうして?」
激情に任せ、好き勝手に暴れておきながら、問いかけは優しい。きっと本当のユアンは優しい人なのだと思う。
その眼差しは、どうしてと訊ねる度、おかしなことを訊くとでも言いたそうにしている。
「だって僕たちは恋人同士だもの」
そう答えてユアンはこの行為を始めた。
伝えたいことはたくさんある。わからないこともたくさんある。けれど激しい攻め立てがディアナを翻弄し、幾度も言葉を遮るのだ。
「あ、やっ! まっ、て……!」
「どうして待つ必要があるの? ディアナのここ、とても悦んでいるのに」
この行為を中断するつもりはないと明確に告げられる。
その声はどこか嬉しそうだった。彼の声はいつも優しく聞こえるが、赤裸々に語られる行為はちっとも優しくない。
「ねえ、ディアナ。きみは僕の恋人。そうだよね?」
違うとは言えない。
偽りでもディアナとユアンは『恋人』ということになっているのだから。
けれどあくまで偽りだ。
いずれは消滅するはずの契約に、否定も肯定も出来ないのは、少なからずこの関係に未練があるせいだろうか。
「きみは真面目だね」
躊躇いを見抜いたのか、ユアンは痛ましそうに言う。
「でも、きみのそういうところも愛しているよ」
今何か、信じられない囁きが聞こえた気がする。
「ねえ」
甘い響きが飛びかけた意識を繋ぎ止める。
何?
意図して自分を組み敷く相手を見上げれば、ふわりと微笑まれる。とてもこの行為とは似つかわしくない美しさだった。
「このまま本当に、僕の恋人になってしまいなよ」
「どうして……」
またどうしての繰り返し。
どうしてそんなことを言うのですか?
だってあなたは、わたくしのことなんて嫌いなのでしょう?
いくら熱に浮かされようと、幼い頃に突きつけられた言葉は鮮明によみがえる。
いつだって、それは爪後の様にディアナの心に痛みをもたらす。
ユアン・ランフォードと自分の出会いは最悪なものだったとディアナは記憶していた。
そのはずだったのに、どうして?
「あっ――待って、ユアン様!」
身体の奥深くに埋められた欲望が脈打ち息が詰まる。
熱い吐息が肌に触れ、強く打ち付けられると自分のもとは思えない甘い声が零れた。
終わりを願ったはずなのに、どうして彼の腕に抱かれているの?
「ディアナ」
熱を孕んだ囁きが、幾度となく呼ばれてきた自分の名前を特別なものだと錯覚させる。
風邪を引いたわけでもないのに身体中が熱かった。
知らない。
こんなこと、わたくしは知らない……
掴みどころのない人だと思った。
へらへらといつも笑ってばかり。
それなのに心は冷めている。
何を考えているのかちっともわからない。
初めて出会った日からユアンには振り回されてばかりいた。
人の気も知らずに、平然と心を乱す。
他人に興味がないのかと思えばこちらが驚くほどの鋭さで心を暴く。
率直に言えば苦手で、理解に苦しむ人だった。
ああ――
だとしたら、最初からこの人は何も変わっていないのだ。
「どうして……」
「どうして?」
激情に任せ、好き勝手に暴れておきながら、問いかけは優しい。きっと本当のユアンは優しい人なのだと思う。
その眼差しは、どうしてと訊ねる度、おかしなことを訊くとでも言いたそうにしている。
「だって僕たちは恋人同士だもの」
そう答えてユアンはこの行為を始めた。
伝えたいことはたくさんある。わからないこともたくさんある。けれど激しい攻め立てがディアナを翻弄し、幾度も言葉を遮るのだ。
「あ、やっ! まっ、て……!」
「どうして待つ必要があるの? ディアナのここ、とても悦んでいるのに」
この行為を中断するつもりはないと明確に告げられる。
その声はどこか嬉しそうだった。彼の声はいつも優しく聞こえるが、赤裸々に語られる行為はちっとも優しくない。
「ねえ、ディアナ。きみは僕の恋人。そうだよね?」
違うとは言えない。
偽りでもディアナとユアンは『恋人』ということになっているのだから。
けれどあくまで偽りだ。
いずれは消滅するはずの契約に、否定も肯定も出来ないのは、少なからずこの関係に未練があるせいだろうか。
「きみは真面目だね」
躊躇いを見抜いたのか、ユアンは痛ましそうに言う。
「でも、きみのそういうところも愛しているよ」
今何か、信じられない囁きが聞こえた気がする。
「ねえ」
甘い響きが飛びかけた意識を繋ぎ止める。
何?
意図して自分を組み敷く相手を見上げれば、ふわりと微笑まれる。とてもこの行為とは似つかわしくない美しさだった。
「このまま本当に、僕の恋人になってしまいなよ」
「どうして……」
またどうしての繰り返し。
どうしてそんなことを言うのですか?
だってあなたは、わたくしのことなんて嫌いなのでしょう?
いくら熱に浮かされようと、幼い頃に突きつけられた言葉は鮮明によみがえる。
いつだって、それは爪後の様にディアナの心に痛みをもたらす。
ユアン・ランフォードと自分の出会いは最悪なものだったとディアナは記憶していた。
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