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第五章 元騎士、オークの花嫁になる
元騎士、オークの花嫁になる【16】
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「人間用校舎の校庭に行ってくれ!変な人間が授業に乱入して、ヒース先生に詰め寄ってて……!」
ヒースが危ない!
俺は最後まで聞かず走った。校庭はすぐそこだ。様子が見えてくる。言い争う声も聞こえてきた。
「いいから俺と来てくれ!」
「断る!二度と此処に来るな!」
ヒースに詰め寄る人間の男と、険しい顔で怒鳴るヒースがいる。生徒たちは校舎の中に逃げ込みながら、ヒースを心配そうに見ていた。
「俺の話を聞けって!クソッ!ーーー土よ我が声に……!」
男が魔法の詠唱を始める。恐らく土属性魔法でヒースを攻撃する気だ!怒りで目の前が赤くなる!
「てめえ!ヒースに何してやがる!ぶっ飛ばすぞ!」
俺は男を殴ろうとした。しかし。
「ーーー水よ。水よ。我が腕となれーーー【水の鞭】!」
「うわああっ!」
それより早くヒースの水魔法が発動し、男を拘束する。
勢いをつけ過ぎたせいで止まらない俺の身体も、水の鞭が絡み付いて止めた。咄嗟のことだろうに、身体はしっかり止められてるし、痛みを感じない。
ヒースすげえ!詠唱も発動も速い!操作も上手い!チェリー先生の言った通り、水魔法の達人なんだな!
「ガルグ先生、落ち着いて下さい。私は無事です」
「あ、ああ。良かった。ヒース先生!見事だ!流石の腕前だな!」
「恐れ入ります。いま解放しますね」
ヒースは少し顔を和らげた。水の拘束から解放される。
さあ、事情を聞こうと思ったが……ヒースが男を見下ろす顔を見てゾッとする。紫の瞳は氷よりも冷え切っていて、男への嫌悪と怒りは明らかだった。
「ガルグ先生を止められてよかった。……こんな奴に、貴方の手を汚させるような価値はありませんから。
私が始末しますので、少し待っていてください」
ヒースは迷いない手つきで男の拘束を強めた。
「ぐあっ!……っ!……や、止めてくれ!」
本気の目だ!やばい!
「ちょっと待て!事情は知らんが殺すのはまずい!過剰防衛でヒース先生が罪に問われる!」
肩を掴んで止めると、拘束が少し緩んだ。紫の瞳も熱を取り戻す。
「ガルグ先生……」
「かはっ……はあっ!あ、兄上!頼むから俺の話を聞いてくれ!」
男の予想外の叫びに振り向く。男はヒースと違い茶髪に青い瞳だが、顔立ちは似ていた。
こいつ!ヒースの弟か!悪い噂を信じてヒースを罵り、傷つけた馬鹿野郎!
また怒りに目の前が赤くなるが、ヒースがそれ以上に激怒する。
「黙れ!私を兄と呼ぶな!どうせ慰謝料と見舞金をせびりに来たのだろう!今さら話すことなどない!消え失せろ!」
「そ、そんな……ち、違う!俺の話を聞いてくれよ!兄上ぇ!」
「ヒース先生!止めろ!生徒が見ている!」
「っ!」
背中でまとめられた金髪が空を切る。紫の瞳が、校舎の中から心配そうに見ている子供たちを写した。
「教師である君が、彼らの前で無抵抗の人間を害してはならない」
「……仰る通りです。ですが、こいつらは私を……!」
「頼むからやめてくれ!」
俺はヒースを抱き寄せて目を合わせた。頬をそっと撫でる。
「君が俺を止めたように、俺もこいつの血で君を汚したくない。頼むから耐えてくれ」
それに、もう一つ止める理由がある。ヒースは言っていた。弟をとても可愛がっていたと。例え今は殺意しか無くとも、本当に殺せば心の傷になりかねない。
これ以上、ヒースに傷ついて欲しくない。
「ガルグ先生……」
怒りと殺意に染まる瞳に迷いが生まれた。さらに説得しようとしたが……。
「!」
ほとんど条件反射で身体が動いた。俺はヒースを抱き寄せて庇い、右腕をふるってソレを弾く!
ガキィン!
甲高い音。鋭い切先が宙を舞う。土魔法で放たれた石の矢だ。
放ったのはヒースの弟だ。俺を睨んで唸るように怒鳴る。
「兄上から離れろ!穢らわしいオークめ!……ぎゃぶぶべああ!」
突如。弟を拘束していた水が移動し、水球となって頭を包んだ。弟は泡を吐きながら悶え苦しむ。
俺の腕の中にいるヒースの瞳が、殺意で爛々と光った。
「この人に手を出したな!許さない!苦しめて殺してやる!」
「ヒース先生!止めろ!魔法を解け!俺は無事だ!」
「駄目です!こいつは貴方を傷つけようとした!侮辱した!許さない!」
「駄目だ!」
言い合っている内に事態が変化した。ヒースの意識が逸れた隙に、弟は先程放った石の矢を操り水球を破壊したのだ。
「がぼっ……!……っ!……ゲホゲホ!」
「おい!しっかりしろ……しまった!」
水を吐いて激しく咳き込む弟。手を貸そうとする俺に、水の鞭が絡みつく。動けない!
「ガルグ先生はそこにいて下さい!こいつは斬り刻んで殺してやる!ーーー水よ水よ。鋭き刃となれ。水よ水よ。我が敵を刈り取り、死をもたらせーーー【水精の大鎌】!」
水が螺旋を描いて宙に伸び、弧を描く鋭い刃になる。瞬く間に水の大鎌が生まれた。
「ヒース!やめろ!」
水の大鎌が高速で振るわれ、ヒースの弟の首を狙う。
ヒースが危ない!
俺は最後まで聞かず走った。校庭はすぐそこだ。様子が見えてくる。言い争う声も聞こえてきた。
「いいから俺と来てくれ!」
「断る!二度と此処に来るな!」
ヒースに詰め寄る人間の男と、険しい顔で怒鳴るヒースがいる。生徒たちは校舎の中に逃げ込みながら、ヒースを心配そうに見ていた。
「俺の話を聞けって!クソッ!ーーー土よ我が声に……!」
男が魔法の詠唱を始める。恐らく土属性魔法でヒースを攻撃する気だ!怒りで目の前が赤くなる!
「てめえ!ヒースに何してやがる!ぶっ飛ばすぞ!」
俺は男を殴ろうとした。しかし。
「ーーー水よ。水よ。我が腕となれーーー【水の鞭】!」
「うわああっ!」
それより早くヒースの水魔法が発動し、男を拘束する。
勢いをつけ過ぎたせいで止まらない俺の身体も、水の鞭が絡み付いて止めた。咄嗟のことだろうに、身体はしっかり止められてるし、痛みを感じない。
ヒースすげえ!詠唱も発動も速い!操作も上手い!チェリー先生の言った通り、水魔法の達人なんだな!
「ガルグ先生、落ち着いて下さい。私は無事です」
「あ、ああ。良かった。ヒース先生!見事だ!流石の腕前だな!」
「恐れ入ります。いま解放しますね」
ヒースは少し顔を和らげた。水の拘束から解放される。
さあ、事情を聞こうと思ったが……ヒースが男を見下ろす顔を見てゾッとする。紫の瞳は氷よりも冷え切っていて、男への嫌悪と怒りは明らかだった。
「ガルグ先生を止められてよかった。……こんな奴に、貴方の手を汚させるような価値はありませんから。
私が始末しますので、少し待っていてください」
ヒースは迷いない手つきで男の拘束を強めた。
「ぐあっ!……っ!……や、止めてくれ!」
本気の目だ!やばい!
「ちょっと待て!事情は知らんが殺すのはまずい!過剰防衛でヒース先生が罪に問われる!」
肩を掴んで止めると、拘束が少し緩んだ。紫の瞳も熱を取り戻す。
「ガルグ先生……」
「かはっ……はあっ!あ、兄上!頼むから俺の話を聞いてくれ!」
男の予想外の叫びに振り向く。男はヒースと違い茶髪に青い瞳だが、顔立ちは似ていた。
こいつ!ヒースの弟か!悪い噂を信じてヒースを罵り、傷つけた馬鹿野郎!
また怒りに目の前が赤くなるが、ヒースがそれ以上に激怒する。
「黙れ!私を兄と呼ぶな!どうせ慰謝料と見舞金をせびりに来たのだろう!今さら話すことなどない!消え失せろ!」
「そ、そんな……ち、違う!俺の話を聞いてくれよ!兄上ぇ!」
「ヒース先生!止めろ!生徒が見ている!」
「っ!」
背中でまとめられた金髪が空を切る。紫の瞳が、校舎の中から心配そうに見ている子供たちを写した。
「教師である君が、彼らの前で無抵抗の人間を害してはならない」
「……仰る通りです。ですが、こいつらは私を……!」
「頼むからやめてくれ!」
俺はヒースを抱き寄せて目を合わせた。頬をそっと撫でる。
「君が俺を止めたように、俺もこいつの血で君を汚したくない。頼むから耐えてくれ」
それに、もう一つ止める理由がある。ヒースは言っていた。弟をとても可愛がっていたと。例え今は殺意しか無くとも、本当に殺せば心の傷になりかねない。
これ以上、ヒースに傷ついて欲しくない。
「ガルグ先生……」
怒りと殺意に染まる瞳に迷いが生まれた。さらに説得しようとしたが……。
「!」
ほとんど条件反射で身体が動いた。俺はヒースを抱き寄せて庇い、右腕をふるってソレを弾く!
ガキィン!
甲高い音。鋭い切先が宙を舞う。土魔法で放たれた石の矢だ。
放ったのはヒースの弟だ。俺を睨んで唸るように怒鳴る。
「兄上から離れろ!穢らわしいオークめ!……ぎゃぶぶべああ!」
突如。弟を拘束していた水が移動し、水球となって頭を包んだ。弟は泡を吐きながら悶え苦しむ。
俺の腕の中にいるヒースの瞳が、殺意で爛々と光った。
「この人に手を出したな!許さない!苦しめて殺してやる!」
「ヒース先生!止めろ!魔法を解け!俺は無事だ!」
「駄目です!こいつは貴方を傷つけようとした!侮辱した!許さない!」
「駄目だ!」
言い合っている内に事態が変化した。ヒースの意識が逸れた隙に、弟は先程放った石の矢を操り水球を破壊したのだ。
「がぼっ……!……っ!……ゲホゲホ!」
「おい!しっかりしろ……しまった!」
水を吐いて激しく咳き込む弟。手を貸そうとする俺に、水の鞭が絡みつく。動けない!
「ガルグ先生はそこにいて下さい!こいつは斬り刻んで殺してやる!ーーー水よ水よ。鋭き刃となれ。水よ水よ。我が敵を刈り取り、死をもたらせーーー【水精の大鎌】!」
水が螺旋を描いて宙に伸び、弧を描く鋭い刃になる。瞬く間に水の大鎌が生まれた。
「ヒース!やめろ!」
水の大鎌が高速で振るわれ、ヒースの弟の首を狙う。
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