狼は腹のなか〜銀狼の獣人将軍は、囚われの辺境伯を溺愛する〜

花房いちご

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ファルロとラズワート*

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 季節は冬。深夜、屋敷の主人の寝室でのことだった。
 竜牙で作られた飾り窓は星の透かし模様。そこからこぼれる月明かりが、幾何学模様の壁、草花模様の絨毯、そして天蓋付きの寝台を照らしていた。

「グルル……ウゥ……もっとだ……たりない……ウウゥッ!」

「ひいっ!はげしっ……!ふぁるろっ!……あぁあ!」

 大きな寝台から、荒々しい唸り声と喘ぎ声が響く。絹の褥の上、二人の男が激しく交わっていた。どちらも一糸纏わぬ姿だ。
 一人は、逞しく引き締まった身体の青年だ。四つん這いの姿勢でもう一人、狼の獣人の長大な逸物で貫かれている。青年の尻穴は限界まで広がっていて、獣人は離すまいと言わんばかりに腰を掴み肩を押さえ、激しく抽送している。
 青年はラズワート・ド・アンジュール。ルフランゼ王国の貴族、アンジュール辺境伯だった。
 短く整えられた紺色の髪と、金混じりの青い目の凛々しい美丈夫である。二十八歳という若さながら、戦場では自領の兵を率いて戦い数々の武勲を立てた武人だ。また、辺境の地アンジュール領を手堅く運営した領主だった。しかし今は、人質として敵国に送られた身である。
 獣人は、ファルロ・ルイシャーン。この屋敷の主人であり、ラズワートの敵国であるゴルバハル帝国の貴族階級の男だ。皇帝の信頼厚い将軍の一人である。
 歳は四十五歳。ラズワートより大柄で鍛え上げられた体躯を持つ。全身を覆う豊かな銀の体毛、煌々と光る金色の目、今の顔立ちは狼そのものだ。

「んおおっ!あぐっ……!ひぎっ……!また……イッ……があぁっ!」

 ラズワートは今宵初めて貫かれたのだが、ファルロの熱く長い舌と太い指で何日もかけて慣らされていた。今宵も少し愛撫するだけで乱れ、あられもない鳴き声を上げていた。いよいよ逸物で貫かれてからは、尻穴は快楽を貪り未知の絶頂を繰り返している。元は排泄するためだけの器官であったはずなのに、まるで性器であるかのような快感が産まれていた。
 淫らに花開いた身体を、半獣体のファルロは貪った。ファルロは本来ならば、耳や尻尾以外は人間と変わらぬ姿をしている。銀髪を後ろに撫で付けた、理知的な眼差しを持つ壮年の男だ。強い発情と興奮が獣化を促したのだが、この姿でのまぐわいは貴族階級においてあり得ない行為だ。
 獣人であることは誇りだが、獣化しすぎると理性を喪い本能のまま行動してしまうからだ。まさに今のように。

「グルルッ!ガウッ!」

「ひろがっ……!ひぎっ!いぃっ!ま、またでるっ……!」

 ラズワートは尻を高く上げて感じ入りながら射精した。もう何回射精したかわからない。長大な逸物、しかも根元に瘤がある人外のそれで貫かれているというのに、圧迫感や痛みよりも快楽と歓喜が強かった。
 肩や腕を掴んでいたファルロの腕の形が変わっていく。さらに狼に近い形へ。
 そして動いた。
 ラズワートは何が起こったか分からなかった。ただ、逸物が自分の中でぐるりと回り、肉壁を抉る感覚に狂おしく乱れた。

「んぉっ!……おぐっ……ぐぁ、あぁっ!」

 激しい痛みをともないはしたが、それ以上に未知の快楽が強かった。初めて女を抱いた時ですら、ここまで強烈な快楽を感じなかった。辛うじてあった理性が己を嗤う。『騎士よりも男娼の才があったらしい』と。
 ファルロもまた、快楽に狂っていた。完全獣化状態での交合は、貴族階級の名誉に関わる禁忌だというのに止まらない。もはや狼そのものとなった姿で、ラズワートに挿入したまま背を向け、尻と尻を合わせた状態。交尾接合の姿勢を取る。間もなく逸物の根元の瘤がさらに膨らんだ。ラズワートの肉壁にみっちりと食い込んで離さない形だ。

「ウオオオーン!」

「んぁ……!あぁ……あ、ぁ……!」

 ただの狼となった雄は、喜悦に哭きながら愛しい番に種付けをした。
 射精は長く量は多い。ラズワートは精液の熱さと、男の身で精を受けとめる倒錯に興奮した。重くなっていく腹すら愛しかった。あのファルロが、我を喪うほど自分に発情し、獣人状態を維持できなくなっている。
 戦場ではあれほど気高く強く、今までの閨でも余裕を崩さなかった男が、ただの盛りのついた雄犬同然になった。

「はら……あつぃ……あっ……ぁ……まだ……とまらな……」

「ガルルル……わ、たしの……グルル……つがい……」

「あぁ……そ……ぅだ……おれは……ひぁあっ!」

 ファルロがぐりぐりと腰を押し込む。喜悦に吠えるラズワート、己の番が愛しい。しっかり種付けをしてやらねばならない。

 まさか、自分たちがこうなるとは思わなかった。
 長い長い種付けの間、ファルロはわずかに残った理性で自分たちがこうなった経緯を振り返った。
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