ストーリー・フェイト──最強の《SS》冒険者(ランカー)な僕の先輩がクソ雑魚美少女になった話──

白糖黒鍵

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RESTART──先輩と後輩──

終焉の始まり(その二十八)

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 男がいた。

『やってみろ?なあ、おい……遠慮!容赦なく!やってみせろよ!?なあッ!!おいッ!!クラハ=ウインドアァァァァッ!!!!!』

 そんな台詞を吐き捨てた、一人の男がいた。

『感謝するぜ、クラハ。おかげで奴らを始末するのが楽になった。お礼と言っちゃなんだが……俺に殺されて先に死んでろ、お前』

『ま、別に構やしねえよ。お前なんざ殺すのに、こんな得物モン必要

『発動ッ!【超強化フルブースト】ォオオオオオッッッッッ!!!!!』

塵芥ゴミが!掃いて捨てる塵芥の中で少しは上等マシな塵芥野郎がッ!!受け取れ、俺の敬意リスペクトをなぁぁぁああああああああッッッ!!!』

『…………は、は……ははッ、はははははッ!傑作だ、こいつぁ傑作だあッ!はははっはっはっはッ!!』

 その男の名は、ロンベル。ロンベル=シュナウザー────冒険者組合ギルド大翼の不死鳥フェニシオン』に所属する、《A》ランク最強の冒険者ランカーにして。

 世界オヴィーリス中を含めて、数えるのに両手で事足りる程しか、未だおおやけには確認されていない特殊体質────超人体質の持ち主であり。また超人体質である彼ら彼女らにのみ、行使を許された限定汎用ゼネラル魔法────【超強化フルブースト】の使い手。

 そんなロンベルだが、手練手管を用い、紆余曲折を経て。深い怨恨を抱く因縁の相手、同じ冒険者組合に所属する冒険者────クラハ=ウインドアと直接対決をするに至った訳だが。

 自らの得物たる長剣ロングソードの振り下ろしを、刃をし折られる形で防がれ。から譲り受けた魔法薬物による肉体強化と、上述の【超強化】を使用した、最大渾身の一撃を無防備で、あまつさえ横っ面で受けられたものの、成果は口端に一筋の血を伝わせただけで。

 終いには手段を選ばず、形振り構わず、これもまたから借り受けた武器────銃という。剣や槍の近接、そして弓といった遠距離、そして魔法でさえも。その全てを過去にしてしまいかねない程の、革命的な次世代の武器。音の速さで以て鉄の塊を撃ち出す、末恐ろしい得物。

 ただでさえ初見で躱わすことは困難を極める銃撃を、騙し討ちでロンベルはクラハに見舞い。過程はどうであれ彼を殺害し、勝利を捥ぎ取った────かに思われた。

 だがしかし、それでも、そうまでしても。クラハには、届かなかった。ほんの少し、ほんの僅かばかりでさえ、届くことはなかった。

 そうしてロンベルは、ぐうの音も出ない程完膚なきまでに、クラハに敗北を喫したのだった。

 そんなロンベルは、今────





「明日だァ!!明日……お前を地獄の底のどん底に叩き落としてやるよォッ!!そんでぶち殺して殺っからなァアアアア!?クラハァアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!」





 ────オールティアからはある程度離れたその森で、血が混じって薄ら赤い唾を周囲に吐き散らしながら、咆哮の如くそう叫んでいた。

「煩いな。少しは黙れよ、ロンベル。耳に障って、うっかり君を殺しそうになるじゃあないか。それにクラハを殺すのはこの僕だ。それだけは譲らない」

「ヒャアアアアオオオッ!ビャアアアアアアアッ!」

 そしてこの場にいるのはロンベル一人だけではない。あの日、あの夜と同じように。彼と結託し、殺そうとクラハに挑み、玉砕した彼ら────『大翼の不死鳥フェニシオン』所属の《A》冒険者ランカーたち。

『殺すッ!死ねッ!!クラハァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!!』

 クライド=シエスタ。

『ヒョアアアアアアアオオオオオオオオッ!!!』

 ヴェッチャ=クーゲルフライデー。

『……』

 そして、ガロー。この三人もまた、この森に集まっていたのだった。

「あぁ……?殺す?お前が、俺を?……出来もしねえことをデケェ口で叩いてんじゃねえぞ!?なあおいッ!!」

「出来もしない?出来もしないだって?じゃあ出来もしないことか、試してみるかい?」

「シャアアアアアアアアッ!!」

 互いに殺意を剥き出しにし、一瞬即発の雰囲気となっているロンベルとクライド。まるで獣のような形相で奇声を上げ続け、今にも二人に襲いかかろうとしているヴェッチャ。そんな三人を、少し離れた距離から静かに眺めているガロー。





「おーおー、元気と威勢が良いねぇ。……お前らさ、いい加減その辺にしとけよ」





 唐突に、そんな呟きが森に響き渡る。ここにいるのは、ロンベルら四人だけではなかった。

「さっきから黙って聞いてりゃあ、何か間抜けにも甚だしい勘違いを起こしてやがって。改めて、懇切丁寧に教えてやるが……お前らの役割はだ」

 と、地面に座り込み、気怠そうに背後の木にもたれ掛かりながら、その男が至極不愉快そうに吐き捨てる。

 彼もまた、かつて『大翼の不死鳥フェニシオン』に所属していたが、追放された元《S》冒険者ランカー

 この男の名は────



『さあ、お楽しみはこれからだぜぇッ!?クラハよぉおッ!!』

『お前、

『死ね。死ねよ。……もう、どうでもいい。だから死んでくれよ、クラハ』

『もっと、もっと俺を憎め!恨め!憎悪を掻き立てろ!怨恨を募らせろ!そう、一年前の俺のように!今の俺のようによぉお!』

『おいおいだんまりとはつれねえな、寂しいなあ。……これから俺とお前はになるってのに、なあッ!?』

『ここに来る為に、俺の元に辿り着く為にお前は何をやった?わかる、俺はわかるぞぉ。何せ俺だってそうするだろうからな。自分の目的を果たす為なら、どんなことだってやってやるからなあ!!』

『往生際が悪いんだよ、もういいからさっさと認めろよ。いくら否定したって、お前が今日やったことは覆せない事実として、紛れもない真実として、変えようがない歴史として。一生、生涯……お前の中に永遠と残って消えることなんてないからさぁあああッ!!!』

『俺は何度でも言ってやる。お前は俺と同じだ。同じ穴の狢さ。……お互いに、己のかけがえのない大切で大事な夢と憧れを否定して汚した、全くもって救い難く救いようもない、最低最悪の同類になるんだよ』

『クラハァァァアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!』

『ハハ、ヒャハ……これで、お前も……俺と、同じ。俺と同類、だ…………』



 ────ライザー=アシュヴァツグフ。彼もまたロンベルらと同じように、否彼ら以上に、クラハに対してあまりにも激しく悍ましい、捻れ歪み切った憎悪と怨恨を抱いていた。

 つまるところ、今この森には。クラハ=ウインドアと決して切っても切れない、浅からぬ因縁を持つ五人が一堂に会しているという訳である。

「こっちがわざわざ手間暇かけて憂さ晴らしの機会チャンスと場を設けてやったんだから、不を弁えろよ負け犬共」

 と、依然不愉快さをおくびにも隠さず全面に押し出しながら、そう言い放つライザーの方へと。言い合いいがみ合い、あわや殺し合いに発展しかけていたロンベルとクライドの二人が、ゆっくりと顔を向ける。

「……誰が負け犬だって?」

 クライドがそう言う間に、ロンベルはその場から歩き出す。歩きながら、彼はその口を開かせる。

「おいおい、おいおいおいライザーさんよぉ……『大翼の不死鳥フェニシオン』の元《S》冒険者ランカーのライザー=アシュヴァツグフさんよお。言っておくが、俺ぁ感謝してんだぜ?」

 と、言うロンベルの顳顬こめかみには、極太の青筋がはっきりと、それこそ今にも千切れそうな勢いで浮かび上がっていた。

「何せアンタはってモンを与えてくれたんだ。ハハ、んじゃまあそれを今から、有意義に使わせてもらうとしますかぁ」

「……ったく、負け犬の雑魚風情が。仮モンの力を振り翳せるのがそんなに嬉しいのかよ?」

 仕方なさそうに、酷く馬鹿馬鹿しそうに呟きながら。殊更面倒そうに、ライザーが地面から立ち上がるのと。そんな彼の目の前にロンベルが立つのは、ほぼ同時のことであった。

「ああ嬉しいね、嬉し過ぎて今にも絶頂しそうだ。超人体質、【超強化フルブースト】、そしてこの力……今や俺は《A》ランクじゃねえ、正真正銘の《S》ランクだ。ライザー、お前はもう用済みだ」

 と、揺るがない自信に満ちた笑みを浮かべ、ライザーを見下ろしながら長々と言うロンベル。

「跳ね返ってんじゃねえよ」

 と、不敵な笑みを浮かべ、ロンベルを見上げながら短く一言呟くライザー。

 会話はそこまでだった。口を閉ざした両者は互いに笑みを浮かべ合い、見下ろされ、見上げられながら。

 そうしてそのまま、数秒が過ぎた。





 ドオッ──先に動いたのは、ロンベルであった。今し方まで普通だったはずの彼の肉体は倍以上に巨大化しており、その内側にある筋肉は今にも爆ぜて飛び出しそうな程に隆起し。何よりも、全身の肌が漆黒に染め上げられていたのである。




 以前までは不可能だった、【超強化フルブースト】の瞬間発動。それを可能にしたのは、ライザーから与えられたその力。

 瞬間発動は無論のこと、【超強化】自体の出力も底上げされている。そこから繰り出される一撃は、〝絶滅級〟の魔物モンスターを容易く屠れる威力にまで至っていた。

 そんな絶命必死の威力を伴って、ロンベルの拳がライザーに迫り、そして。

 ズグババババキャッ──気怠げに突き出されたライザーの拳とち合い、皮と肉と骨諸共に腕ごと、瞬く間に真っ二つに裂けた。

「ッ?!」

 尋常ではない様子の形相を顔に浮かべるロンベル。そんな彼の鳩尾には、いつの間にか空いていたライザーの片手が、深々と突き刺さり。貫通した五指の先が、彼の背中から突き出ていた。
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