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CHAPTER5
2
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十一月一日、金曜日。
久し振りの非番だ。
可南子は、昨日中に彼氏の真田幸生に連絡を入れ、今日一日の予定を立てておいた。前回のデートは、七月二日、火曜日。代々木公園で西岡詩織の他殺体が発見された前日だ。実に四カ月振りとなる。その間、可南子は忙しい捜査の合間を縫って、彼氏に電話連絡は入れていた。
千葉県浦安市のTDRで久し振りのデートを満喫したあと、二人は六本木の高級イタリア料理店で食事し、江東区有明の幸生の自宅マンションの十四階一四〇七号室に入った。
「……可南子、その……」
幸生が真顔で問い掛けた。
「えっ何?」
可南子は幸生の眸を見た。
恐らく別れ話に違いない。
近頃、擦れ違いが生じ、捜査一課に異動してからは益々それが如実になった。
男と女として関係は、今夜が最後だ。覚悟はできている。だから今は、精一杯彼氏に甘えよう……。
「う、ううん……何でもない……」
幸生は明言を避けた。
「……あのさあ、可南子。キミ、何か勘違いしていないか?」
「勘違い?」
「さっきさ、俺が別れ話告げるって思ってたでしょ」
「えっ違うの?」
「違うさ……その逆。昨日キミからデートの誘い受けたその足で、職場近くの宝石店直行して、指輪買っちゃった。その……俺と……結婚しよう。今、キミが追っている事件、解決したら……」
思いがけないプロポーズ。
一瞬、言葉に詰まった。どう答えていいのかわからず、固まってしまった。
「……もう、馬鹿ぁ、私きっと、別れ話告げられると思って、その、ずっと、その……」
涙が止めどなく溢れていた。
「どうなのOKなの?」
幸生は、涙で滲んだ可南子の瞳を凝っと見詰めた。
「……こんなわたしで良ければ……」
可南子は、小さく頷いた。
彼女の承諾を確認する。
二人は見詰め合いながら抱き締め合った。
その次の瞬間だった。
可南子のスマートフォンが、突然無機質な着信音を奏でた。
二人同時に、ガラステーブルの上のヴィトンのバッグを見る。
「出なよ」
「うん……」
可南子は、全裸のままベッドから這い上がり、憮然とした表情でヴィトンの中からスマホを取り出す。
「ちぇっ! やっぱ、東海林の奴かあ……」
可南子は軽く悪態を吐き、指先でタッチパネルを操作する。
デジタル表示は、22:19だ。
「何のよう?」
尖った声で訊ねる。
《……しゅ主任、ふ、ふる……ふるさ……》
「えっ、どうしたの、東海林くん? 泣いてちゃわからないでしょうがぁ?」
《古澤が、拳銃で左胸を撃たれ……T女子医大救急救命センターに搬送……危険な状態なんだ……》
「ふ、古澤君が……?」
思わず可南子は手に持っていたスマホを落としてしまった。
先ほど彼氏にプロポーズされた時に流した涙とは違う色のモノが零れ落ち、可南子はその場で泣き崩れた。
二十分後、幸生が運転する車で、可南子は古澤が搬送された新宿区河田町のT女子医大救急救命センターに直行した。
センターの入り口には、数台の警察車両が赤色灯を点滅させ、停車していた。
口を真一文字に閉じ、無言のまま車から降りると、可南子はセンターの入り口で待機する複数の制服警官に警察手帳を提示し、足早にセンター内へ入った。
久し振りの非番だ。
可南子は、昨日中に彼氏の真田幸生に連絡を入れ、今日一日の予定を立てておいた。前回のデートは、七月二日、火曜日。代々木公園で西岡詩織の他殺体が発見された前日だ。実に四カ月振りとなる。その間、可南子は忙しい捜査の合間を縫って、彼氏に電話連絡は入れていた。
千葉県浦安市のTDRで久し振りのデートを満喫したあと、二人は六本木の高級イタリア料理店で食事し、江東区有明の幸生の自宅マンションの十四階一四〇七号室に入った。
「……可南子、その……」
幸生が真顔で問い掛けた。
「えっ何?」
可南子は幸生の眸を見た。
恐らく別れ話に違いない。
近頃、擦れ違いが生じ、捜査一課に異動してからは益々それが如実になった。
男と女として関係は、今夜が最後だ。覚悟はできている。だから今は、精一杯彼氏に甘えよう……。
「う、ううん……何でもない……」
幸生は明言を避けた。
「……あのさあ、可南子。キミ、何か勘違いしていないか?」
「勘違い?」
「さっきさ、俺が別れ話告げるって思ってたでしょ」
「えっ違うの?」
「違うさ……その逆。昨日キミからデートの誘い受けたその足で、職場近くの宝石店直行して、指輪買っちゃった。その……俺と……結婚しよう。今、キミが追っている事件、解決したら……」
思いがけないプロポーズ。
一瞬、言葉に詰まった。どう答えていいのかわからず、固まってしまった。
「……もう、馬鹿ぁ、私きっと、別れ話告げられると思って、その、ずっと、その……」
涙が止めどなく溢れていた。
「どうなのOKなの?」
幸生は、涙で滲んだ可南子の瞳を凝っと見詰めた。
「……こんなわたしで良ければ……」
可南子は、小さく頷いた。
彼女の承諾を確認する。
二人は見詰め合いながら抱き締め合った。
その次の瞬間だった。
可南子のスマートフォンが、突然無機質な着信音を奏でた。
二人同時に、ガラステーブルの上のヴィトンのバッグを見る。
「出なよ」
「うん……」
可南子は、全裸のままベッドから這い上がり、憮然とした表情でヴィトンの中からスマホを取り出す。
「ちぇっ! やっぱ、東海林の奴かあ……」
可南子は軽く悪態を吐き、指先でタッチパネルを操作する。
デジタル表示は、22:19だ。
「何のよう?」
尖った声で訊ねる。
《……しゅ主任、ふ、ふる……ふるさ……》
「えっ、どうしたの、東海林くん? 泣いてちゃわからないでしょうがぁ?」
《古澤が、拳銃で左胸を撃たれ……T女子医大救急救命センターに搬送……危険な状態なんだ……》
「ふ、古澤君が……?」
思わず可南子は手に持っていたスマホを落としてしまった。
先ほど彼氏にプロポーズされた時に流した涙とは違う色のモノが零れ落ち、可南子はその場で泣き崩れた。
二十分後、幸生が運転する車で、可南子は古澤が搬送された新宿区河田町のT女子医大救急救命センターに直行した。
センターの入り口には、数台の警察車両が赤色灯を点滅させ、停車していた。
口を真一文字に閉じ、無言のまま車から降りると、可南子はセンターの入り口で待機する複数の制服警官に警察手帳を提示し、足早にセンター内へ入った。
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