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CHAPTER5
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三十分後。
新宿駅近くの雑居ビル二階部分にテナントとして入居する喫茶店に、可南子たち三人は居た。人目につかない一番奥のテーブルだ。
「少し早いけど、ここでお昼済ませしょ」
「は、はい。まあ、そう言うことなら……」
「まあ、俺は構わないが」
部下に確認を取ると、可南子は、
「あの済みません」
と隣のテーブルで接客中の店員に声を掛けた。少し小太りの女子だ。
「少々、お待ち下さい」
店員は、マニュアル通り笑顔で返す。
「はい」
可南子は軽く頭を下げる。
暫く待つと、先ほど違う店員が現れた。どちらかと言うと細身で長身の癒し系の女の子だ。スカイブルーとホワイトのストライプ柄の制服がよく似合っている。
「ご注文お決まりでしょうか?」
「はい。本日の日替わりランチ、三つで」
と可南子は即答した。
「アフタードリンクは如何なされますか?」
マニュアル通りの質問に、
「ミルクティーで」
と可南子は答えた。
「俺は、ホット……」
「あの?」
「はい、何でしょうか、お客様?」
「追加料金払うから、僕はコーラで」
「コ、コーラですか……?」
店員は少し戸惑った様子で東海林を見る。
「駄目ですか……?」
「少々お待ちくださいませ」
と断りを入れ、奥にいる責任者に訊ねようとして踵を返した店員を、可南子は呼び止めた。
「ホット二つで」
「えっ、しゅ、主任……そんな」
「東海林君、ホットにしておきなさい」
「……」
東海林は無言で頷くと恨めしそうに可南子を見た。
「あんたって本当に、炭酸系ドリンク好きだよね」
嫌味を言うと可南子は真顔に戻り、本題を切り出した。
「さっき、会議のあと言っていた話の件だけど……」
「ああ、で、何だ、お嬢?」
森は、小首を傾げ訝しげに可南子を見る。
「話してください、主任?」
「うん。例の遠山正樹が起こした連続殺人事件の捜査で、神奈川県警にいった時、高津中央署の河野さんが、遠山以外にもう一人犯人がいるって言っていたのよ」
「模倣犯……つまりコピーキャットって奴でしょ」
「そのコピーキャットがどうかしたのか? 現在俺たちは、そいつを追っている訳だが、その捜査の最中、古澤は何らかの情報を掴んだ辺やんに呼び出され、何者かの手によって殺された……」
「河野さんの推理のあと、確か私、警察関係者が怪しいって思ったのよね?」
「警察関係者が?」
森が上擦った声を上げた。
「森さん、声、大きい」
と可南子が制す。
「あ、あぁあ、済まん済まん」
森は、面目なさ気に頭を掻いた。
「それで、主任、誰が怪しいって思っているんですか? まさか、僕たちじゃないでしょうね?」
東海林が、鼻がくっつくくらい可南子に顔を近づける。
「もう、やだ、近い、近過ぎる。もっと離れなさい」
「あ、ごめんなさい」
取り敢えず謝っては見るが、東海林の目は真剣なままだ。
「安心しろ、東海林。古澤殺しについては俺がアリバイを証明してやる。お前さんと一緒だったってな……。つまり、同時に俺のアリバイも証明されるって訳だ」
「二人がグルじゃなかったらの話だけど……」
可南子は素っ気なく毒を吐いた。
「おいおいっお嬢、まさか疑ってるのか?」
「冗談、冗談よ。あなたたち二人を信じていなかった、こんな話できる訳ないでしょ」
可南子は、部下たちを安心させようと笑って見せた。
「で、お嬢、お前さん。一体誰を疑っているんだ?」
森の核心を突いた質問に対し、可南子は少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「一課の人間……」
「お、おいっ……」
森は一瞬、言葉に詰まってしまい、周囲を気にするように見回した。
東海林に至っては、あんぐりと口を開いたままの状態で、可南子を見ている。
「ヒントは、現場から消えた古澤君のスマートフォン。確か森さんが、彼のスマホに掛けたのが午後九時頃って言っていたわよね?」
「ああ、九時前だったと思う……」
「その直前辺りで、渡辺が古澤君に電話を入れている筈」
「そうかっ、なるほど。辺やんの電話のあと、俺と東海林以外の人間で、古澤の携帯に電話した奴が犯人ってことか」
森が興奮気味で言った。
「調べられる?」
「携帯会社に問い合わせりゃ、何とかなるだろ」
森は、二、三度頷きながら答えた。
ちょうどそこへ、男性店員が、可南子たちが注文した日替わりランチを持って現れた。
「お待たせしましたお客様、ご注文の本日のランチ『和風ハンバーグセット』でございます。なお、サラダバーは、おかわり自由でございます」
「さあ、頂きましょう……。東海林君、私、和風わさびしょう油ドレッシングね」
と可南子は空っぽのサラダボールを差し出した。
「こんな状況でよく食事できますね。それと、あなた、ダイエット中じゃなかったんですか……?」
東海林は呆れ顔で言うと、サラダボールを二つ手に取った。森の顔を見る。
「……マヨドレで」
と森は苦笑気味に答えた。
新宿駅近くの雑居ビル二階部分にテナントとして入居する喫茶店に、可南子たち三人は居た。人目につかない一番奥のテーブルだ。
「少し早いけど、ここでお昼済ませしょ」
「は、はい。まあ、そう言うことなら……」
「まあ、俺は構わないが」
部下に確認を取ると、可南子は、
「あの済みません」
と隣のテーブルで接客中の店員に声を掛けた。少し小太りの女子だ。
「少々、お待ち下さい」
店員は、マニュアル通り笑顔で返す。
「はい」
可南子は軽く頭を下げる。
暫く待つと、先ほど違う店員が現れた。どちらかと言うと細身で長身の癒し系の女の子だ。スカイブルーとホワイトのストライプ柄の制服がよく似合っている。
「ご注文お決まりでしょうか?」
「はい。本日の日替わりランチ、三つで」
と可南子は即答した。
「アフタードリンクは如何なされますか?」
マニュアル通りの質問に、
「ミルクティーで」
と可南子は答えた。
「俺は、ホット……」
「あの?」
「はい、何でしょうか、お客様?」
「追加料金払うから、僕はコーラで」
「コ、コーラですか……?」
店員は少し戸惑った様子で東海林を見る。
「駄目ですか……?」
「少々お待ちくださいませ」
と断りを入れ、奥にいる責任者に訊ねようとして踵を返した店員を、可南子は呼び止めた。
「ホット二つで」
「えっ、しゅ、主任……そんな」
「東海林君、ホットにしておきなさい」
「……」
東海林は無言で頷くと恨めしそうに可南子を見た。
「あんたって本当に、炭酸系ドリンク好きだよね」
嫌味を言うと可南子は真顔に戻り、本題を切り出した。
「さっき、会議のあと言っていた話の件だけど……」
「ああ、で、何だ、お嬢?」
森は、小首を傾げ訝しげに可南子を見る。
「話してください、主任?」
「うん。例の遠山正樹が起こした連続殺人事件の捜査で、神奈川県警にいった時、高津中央署の河野さんが、遠山以外にもう一人犯人がいるって言っていたのよ」
「模倣犯……つまりコピーキャットって奴でしょ」
「そのコピーキャットがどうかしたのか? 現在俺たちは、そいつを追っている訳だが、その捜査の最中、古澤は何らかの情報を掴んだ辺やんに呼び出され、何者かの手によって殺された……」
「河野さんの推理のあと、確か私、警察関係者が怪しいって思ったのよね?」
「警察関係者が?」
森が上擦った声を上げた。
「森さん、声、大きい」
と可南子が制す。
「あ、あぁあ、済まん済まん」
森は、面目なさ気に頭を掻いた。
「それで、主任、誰が怪しいって思っているんですか? まさか、僕たちじゃないでしょうね?」
東海林が、鼻がくっつくくらい可南子に顔を近づける。
「もう、やだ、近い、近過ぎる。もっと離れなさい」
「あ、ごめんなさい」
取り敢えず謝っては見るが、東海林の目は真剣なままだ。
「安心しろ、東海林。古澤殺しについては俺がアリバイを証明してやる。お前さんと一緒だったってな……。つまり、同時に俺のアリバイも証明されるって訳だ」
「二人がグルじゃなかったらの話だけど……」
可南子は素っ気なく毒を吐いた。
「おいおいっお嬢、まさか疑ってるのか?」
「冗談、冗談よ。あなたたち二人を信じていなかった、こんな話できる訳ないでしょ」
可南子は、部下たちを安心させようと笑って見せた。
「で、お嬢、お前さん。一体誰を疑っているんだ?」
森の核心を突いた質問に対し、可南子は少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「一課の人間……」
「お、おいっ……」
森は一瞬、言葉に詰まってしまい、周囲を気にするように見回した。
東海林に至っては、あんぐりと口を開いたままの状態で、可南子を見ている。
「ヒントは、現場から消えた古澤君のスマートフォン。確か森さんが、彼のスマホに掛けたのが午後九時頃って言っていたわよね?」
「ああ、九時前だったと思う……」
「その直前辺りで、渡辺が古澤君に電話を入れている筈」
「そうかっ、なるほど。辺やんの電話のあと、俺と東海林以外の人間で、古澤の携帯に電話した奴が犯人ってことか」
森が興奮気味で言った。
「調べられる?」
「携帯会社に問い合わせりゃ、何とかなるだろ」
森は、二、三度頷きながら答えた。
ちょうどそこへ、男性店員が、可南子たちが注文した日替わりランチを持って現れた。
「お待たせしましたお客様、ご注文の本日のランチ『和風ハンバーグセット』でございます。なお、サラダバーは、おかわり自由でございます」
「さあ、頂きましょう……。東海林君、私、和風わさびしょう油ドレッシングね」
と可南子は空っぽのサラダボールを差し出した。
「こんな状況でよく食事できますね。それと、あなた、ダイエット中じゃなかったんですか……?」
東海林は呆れ顔で言うと、サラダボールを二つ手に取った。森の顔を見る。
「……マヨドレで」
と森は苦笑気味に答えた。
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