殺人遊戯 マーダーゲーム 殺人犯捜査第四係比嘉可南子

繁村錦

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CHAPTER2

5

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 廊下に出ると、可南子はレディーススーツの内ポケットを弄り、スマホを取り出した。液晶画面を指先でタップし、歩きながら彼氏に電話を掛ける。

「もしもし、私、可南子」

《さっき、キミに頼まれた下着なら、十時から始まる鴨居准教授のゼミに出るついでに、渋谷中央署の方へ届けに行こうと思っていたところだ》

「ありがとう。でさぁ、別件でちょっとあなたに訊ねたいことがあるんだけど?」

《ん? 何?》

 電話の向こう側の彼氏の声が、半音上がっている。

「あなたのマンションに遠山清志って子、住んでるでしょ」

《遠山清志》

「ほら、国家公安委員長の遠山仙一郎の息子よ。あなたと同じK大の法学部に通っている筈」

《ああ。あの子ね。でも、僕は経済学部の方だし、彼は法学部の方だし、それにサークルも違うから……》

「そんなこと聞いてんじゃないの」

 少し声を荒げる。

《えっ? じゃあ何っ!?》

 耳が痛くなるほど大きな声がした。思わず顔を顰める。
 可南子は、

「そんなに怒んなくたっていいじゃない」

 軽く拗ねるように抗議した。

《怒っちゃいないよ、別に。で何、僕に訊きたいことって……?》

「先々週の火曜日、十三日に、あなたのマンションで車の盗難事件てあった?」

《ん? 十三日……? ああー、思い出した。確かその次の次日に、警察が聞き込みに来ていた。何でも地下駐車場に停めてあったフェラーリが盗まれたとか、僕もアルファロメオ盗まれないように気を付けなくっちゃ》

「そう。次の次の日ってことは、十五日、木曜か……」

《車の盗難事件も捜査しているの、可南子》

「うん、まあね……。ありがとう、じゃあ電話切るね」

《ちょっと待って、可南子。下着、どこに届けりゃいいの》

「正面玄関から入って左の受付にでも渡しといて、本庁捜査一課四係の比嘉の知人です、といってくれたらわかるから」

《うん。受付だね。わかった》

「じゃあ、そういうことで、宜しくね」

 電話を切ると、スマホをポッケトにしまった。

「また、彼氏さんですか?」

  高山がわざとらしく訊ねる。

「う、うん」

 可南子はちょっと照れ臭そうに頷く。

「下着届けてもらうんですか?」

 高山は揶揄するようにいった。

「五月蠅いーっ。いいじゃん、放っといて」

 比嘉は赤面しつついうと、アヒルのように唇を尖らせた。

「もしかして、怒ってますか? 済みません」

 高山は含み笑いを浮かべながら、取り敢えず詫びた。

「怒ってないよ、大丈夫だから。それよりさ、調書によると遠山が車の盗難の被害にあったのは十三日だったのに、三田中央署に被害届提出したのが二日後の十五日、木曜日って変。普通、盗まれたことに気付いたら直ぐ、警察とかに通報するよね。高山君、キミ、そう思わない?」

「まあ、いわれてみればそうですけど、僕も学生の時、父に買ってもらったフェラーリ・FFを盗まれたことがありまして」

「キミも?」

「はい。マンションの駐車場に停まっている筈の車がなくなっていて、その時初めて盗難に気付いた訳ですけど」

 高山は、自嘲気味に頭を掻いた。

「あっさりといっちゃってるけど、高かったんでしょ、その車?」

「はい。確か三千万以上したと思います」

 高山はその金額を平然と口にした。

「さ、三千万っ!?」

 可南子はあんぐりと口を開け、上擦った声を上げた。そして話を続ける。

「流石、政治家の息子。やっぱし金持ちは違うわ」

 半ば呆れ、半ば感心したようにいう。

「比嘉さん。僕の時も後日気が付いたくらいだから、きっと遠山も僕と同じようにあとになって車がなくなっていることに気付き、三田中央署に盗難届出したんですよ」

 高山は可南子を諭すような口調でいった。

「でもね、何だかちょっと引っ掛かるのよね……」

 まだしっくりと来ないらしく、可南子は低い声で呻ると、小首を傾げた。そして助手席のドアを開け、覆面パトカーに乗った。
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