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CHAPTER4
2
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「幾ら出す?」
唐突に金の話となった。
つまり金額次第で受けるという意味だ。
「今、手持ちが一万しかないの……」
可南子は、ヴィトンの長財布の中身を全部見せる。
ちっと舌打ちし、煙草の火を灰皿で揉み消すと、及川は鋭い視線を細川へ注いだ。
「万札が二枚と、五千が一枚に、そして千円札が三枚。あとはチャリ銭だ」
と、ポッケト中から皺くちゃの紙幣を取出し、机の上に広げた。
すると及川は、無言のまま染みだらけで皺くちゃの一万円札二枚を手に取り、上目遣いに可南子の顔を見た。可南子は手持ちの一万円札を差し出した。及川はそれを鷲掴みにし、無造作に胸のポケットにしまい込んだ。
「情報が入り次第、こちらから連絡する」
にべなく告げると、及川は可南子たちを無視するかのように、再び机の上のカードを手に取った。
「邪魔したな竜平……」
「宜しくね……」
可南子は、細川と組む前に相棒だったキャリアの高山をここへ連れて行き、情報入手をするついでに及川を紹介する予定だった。だが、昨日、桜井心音の他殺体が発見され、高山と二人で現場へ急行し、その後上からの命令でコンビ解消となってしまい、結局実現せずに終わった。
ゲイバー『Papillon』を出た二人は、新宿駅方面に向かって歩き出した。暫らく歩くと、ぽつぽつと雨が降り出した。ウザいキャッチが声を掛けて来るが、細川の顔を確認するなり、申し訳なさそうに立ち去って行く。それでもなお、しつこく声を掛ける金髪のチャラ男は、細川が誰なのか知らないのだ。
「てめえっ、客引きは違法だってことくらい知ってるよな。そのいかれた頭でもよぉ」
細川はチャラ男の胸座を掴み、ドスの利いた声で凄む。ネクタイを掴み、首を吊り上げる。
「坊や、あのね、お姉さんたちこういう者なの」
と可南子は警察手帳を呈示し、
「この坊やが、怖がっているじゃない。細川巡査長、もうそのくらいにして行きましょう」
と割って入った。
「まあ警部補殿がそう仰るなら……。いいかお前、俺の顔よぉく覚えとけ。二度と声掛けんじゃねえぞぉ!」
「す、済みません……」
チャラ男は深々と頭を下げると、その場から逃げるように立ち去った。
新宿駅方面に向かって暫らく進むと、また別のキャッチに捉まった。
「お姉さん、どう? うちで働かない。うちさぁ熟女専門のヘルス、OLなんて辞めてさぁ、うちで稼がない?」
チャラ男は可南子の右手首を掴んで放さない。
腕を振り払うと可南子は、
「はあ? 熟女専門のヘルスってどういう意味? この私がオバサンってこと?」
と眉間に深く縦皺を刻み眉毛を吊り上げ鋭い目付きで睨み付け、そのチャラ男の胸座を鷲掴んだ。
「な、何だよこのババァ……?」
可南子の勢いに気圧され、チャラ男は少し狼狽える。
「はぁっ!? ババァってあんた、私はまだ三十前よっ!!」
「おい若造っ、言葉に気を付けろ。そちらのお姉さんは、警視庁捜査一課の刑事さんだ。しかも警部補さんだ。いいか、お前のようなクズみたいなドチンピラが、気安く声掛けられるような女性ではない。わかったらさっさとあっち行けっ!この腐れチンポ野郎がぁッ!!」
細川は、チャラ男の左耳を引っ張ると、罵声を浴びせた。
「ご、ゴメンなさいっ」
この青年もさっきの男と同じように最敬礼し、逃げるように立ち去った。
「細川さん。民間人に対し、その腐れチ……などと卑猥な言葉を口にするのはどうかと……」
「済みませんね、警部補殿。なんせ育ちが悪いもんで」
細川は可南子に対し、卑屈な作り笑いで答えた。
唐突に金の話となった。
つまり金額次第で受けるという意味だ。
「今、手持ちが一万しかないの……」
可南子は、ヴィトンの長財布の中身を全部見せる。
ちっと舌打ちし、煙草の火を灰皿で揉み消すと、及川は鋭い視線を細川へ注いだ。
「万札が二枚と、五千が一枚に、そして千円札が三枚。あとはチャリ銭だ」
と、ポッケト中から皺くちゃの紙幣を取出し、机の上に広げた。
すると及川は、無言のまま染みだらけで皺くちゃの一万円札二枚を手に取り、上目遣いに可南子の顔を見た。可南子は手持ちの一万円札を差し出した。及川はそれを鷲掴みにし、無造作に胸のポケットにしまい込んだ。
「情報が入り次第、こちらから連絡する」
にべなく告げると、及川は可南子たちを無視するかのように、再び机の上のカードを手に取った。
「邪魔したな竜平……」
「宜しくね……」
可南子は、細川と組む前に相棒だったキャリアの高山をここへ連れて行き、情報入手をするついでに及川を紹介する予定だった。だが、昨日、桜井心音の他殺体が発見され、高山と二人で現場へ急行し、その後上からの命令でコンビ解消となってしまい、結局実現せずに終わった。
ゲイバー『Papillon』を出た二人は、新宿駅方面に向かって歩き出した。暫らく歩くと、ぽつぽつと雨が降り出した。ウザいキャッチが声を掛けて来るが、細川の顔を確認するなり、申し訳なさそうに立ち去って行く。それでもなお、しつこく声を掛ける金髪のチャラ男は、細川が誰なのか知らないのだ。
「てめえっ、客引きは違法だってことくらい知ってるよな。そのいかれた頭でもよぉ」
細川はチャラ男の胸座を掴み、ドスの利いた声で凄む。ネクタイを掴み、首を吊り上げる。
「坊や、あのね、お姉さんたちこういう者なの」
と可南子は警察手帳を呈示し、
「この坊やが、怖がっているじゃない。細川巡査長、もうそのくらいにして行きましょう」
と割って入った。
「まあ警部補殿がそう仰るなら……。いいかお前、俺の顔よぉく覚えとけ。二度と声掛けんじゃねえぞぉ!」
「す、済みません……」
チャラ男は深々と頭を下げると、その場から逃げるように立ち去った。
新宿駅方面に向かって暫らく進むと、また別のキャッチに捉まった。
「お姉さん、どう? うちで働かない。うちさぁ熟女専門のヘルス、OLなんて辞めてさぁ、うちで稼がない?」
チャラ男は可南子の右手首を掴んで放さない。
腕を振り払うと可南子は、
「はあ? 熟女専門のヘルスってどういう意味? この私がオバサンってこと?」
と眉間に深く縦皺を刻み眉毛を吊り上げ鋭い目付きで睨み付け、そのチャラ男の胸座を鷲掴んだ。
「な、何だよこのババァ……?」
可南子の勢いに気圧され、チャラ男は少し狼狽える。
「はぁっ!? ババァってあんた、私はまだ三十前よっ!!」
「おい若造っ、言葉に気を付けろ。そちらのお姉さんは、警視庁捜査一課の刑事さんだ。しかも警部補さんだ。いいか、お前のようなクズみたいなドチンピラが、気安く声掛けられるような女性ではない。わかったらさっさとあっち行けっ!この腐れチンポ野郎がぁッ!!」
細川は、チャラ男の左耳を引っ張ると、罵声を浴びせた。
「ご、ゴメンなさいっ」
この青年もさっきの男と同じように最敬礼し、逃げるように立ち去った。
「細川さん。民間人に対し、その腐れチ……などと卑猥な言葉を口にするのはどうかと……」
「済みませんね、警部補殿。なんせ育ちが悪いもんで」
細川は可南子に対し、卑屈な作り笑いで答えた。
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