殺人遊戯 マーダーゲーム 殺人犯捜査第四係比嘉可南子

繁村錦

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CHAPTER4

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「幾ら出す?」

 唐突に金の話となった。
 つまり金額次第で受けるという意味だ。

「今、手持ちが一万しかないの……」

 可南子は、ヴィトンの長財布の中身を全部見せる。
 ちっと舌打ちし、煙草の火を灰皿で揉み消すと、及川は鋭い視線を細川へ注いだ。

「万札が二枚と、五千が一枚に、そして千円札が三枚。あとはチャリ銭だ」

 と、ポッケト中から皺くちゃの紙幣を取出し、机の上に広げた。
 すると及川は、無言のまま染みだらけで皺くちゃの一万円札二枚を手に取り、上目遣いに可南子の顔を見た。可南子は手持ちの一万円札を差し出した。及川はそれを鷲掴みにし、無造作に胸のポケットにしまい込んだ。

「情報が入り次第、こちらから連絡する」

 にべなく告げると、及川は可南子たちを無視するかのように、再び机の上のカードを手に取った。

「邪魔したな竜平……」

「宜しくね……」

 可南子は、細川と組む前に相棒バディだったキャリアの高山をここへ連れて行き、情報入手をするついでに及川を紹介する予定だった。だが、昨日、桜井心音の他殺体が発見され、高山と二人で現場へ急行し、その後上からの命令でコンビ解消となってしまい、結局実現せずに終わった。
 ゲイバー『Papillon』を出た二人は、新宿駅方面に向かって歩き出した。暫らく歩くと、ぽつぽつと雨が降り出した。ウザいキャッチが声を掛けて来るが、細川の顔を確認するなり、申し訳なさそうに立ち去って行く。それでもなお、しつこく声を掛ける金髪のチャラ男は、細川が誰なのか知らないのだ。

「てめえっ、客引きは違法だってことくらい知ってるよな。そのいかれた頭でもよぉ」

 細川はチャラ男の胸座を掴み、ドスの利いた声で凄む。ネクタイを掴み、首を吊り上げる。

「坊や、あのね、お姉さんたちこういう者なの」

 と可南子は警察手帳を呈示し、

「この坊やが、怖がっているじゃない。細川巡査長、もうそのくらいにして行きましょう」

 と割って入った。
「まあ警部補殿がそう仰るなら……。いいかお前、俺の顔よぉく覚えとけ。二度と声掛けんじゃねえぞぉ!」

「す、済みません……」

 チャラ男は深々と頭を下げると、その場から逃げるように立ち去った。
 新宿駅方面に向かって暫らく進むと、また別のキャッチに捉まった。

「お姉さん、どう? うちで働かない。うちさぁ熟女専門のヘルス、OLなんて辞めてさぁ、うちで稼がない?」

 チャラ男は可南子の右手首を掴んで放さない。
 腕を振り払うと可南子は、

「はあ? 熟女専門のヘルスってどういう意味? この私がオバサンってこと?」

 と眉間に深く縦皺を刻み眉毛を吊り上げ鋭い目付きで睨み付け、そのチャラ男の胸座を鷲掴んだ。

「な、何だよこのババァ……?」

 可南子の勢いに気圧され、チャラ男は少し狼狽える。

「はぁっ!? ババァってあんた、私はまだ三十前よっ!!」

「おい若造っ、言葉に気を付けろ。そちらのお姉さんは、警視庁捜査一課の刑事さんだ。しかも警部補さんだ。いいか、お前のようなクズみたいなドチンピラが、気安く声掛けられるような女性ひとではない。わかったらさっさとあっち行けっ!この腐れチンポ野郎がぁッ!!」

 細川は、チャラ男の左耳を引っ張ると、罵声を浴びせた。

「ご、ゴメンなさいっ」

 この青年もさっきの男と同じように最敬礼し、逃げるように立ち去った。

「細川さん。民間人に対し、その腐れチ……などと卑猥な言葉を口にするのはどうかと……」

「済みませんね、警部補殿。なんせ育ちが悪いもんで」

 細川は可南子に対し、卑屈な作り笑いで答えた。
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