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CHAPTER4
6
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新宿中央署歌舞伎町交番に覆面パトカーを停車し、『居酒屋□□本店』まで歩くことにした。昨晩、細川と二人でこの界隈を歩いた時は、時間帯が時間帯だった所為か、如何わしい格好をした男たちが闊歩していたが、昼間は観光客で賑わっていた。中には外国人の姿もあった。暫らく進むと電飾で彩られたネットカフェの看板が見えて来た。その反対側が『居酒屋□□本店』だ。
「ほら、やっぱり閉まっている」
細川がいう通り完全にシャッターが下り、準備中の札が垂れ下がっていた。
「残念ね……、念のため一応声掛けておきましょう」
可南子はシャッターの右横の閉じてあるドアの前に立ち、隙間から店内を覗き込んだ。
「あのー誰かぁいませんかぁ?」
反応がない。もう一度声を掛けてみる。
「あのー誰かぁいませんかぁ?」
するとその直後、新宿駅方面から一人の男性が歩いて来て、二人の手前二メートルの地点で立ち止まった。
男性の身形は、流行りのTシャツに短パン、足許はクロックスの黒いサンダルだ。髪の色は、金色だ。左耳にはクロムハーツのピアス。胸にもクロムハーツのネックレス。更に、本人はかなりイケていると思っているデザインのファッションタトゥー。所謂DQN系丸出しだった。年の頃は比嘉と同じ三十代半ばくらいだ。
「……誰っ、オタクらぁ?」
タメ口だ。
可南子は少し苛っと来て、眉間に皺を寄せた険しい表情で男を凝視した。
「こういう者だ」
と細川が警察手帳を呈示した。
「ああぁーあん、ケイサツの人ね……」
男は独り勝手に、納得いったように頷き、話を続ける。
「その先の地下へ降りる階段でボクサーが転落死した事件のことでしょ?」
「そうだけど……、どうしてそれがわかったの?」
如何にも不思議そうに男を見る。
男は、一瞬、目を大きく見開き、笑みを浮かべると話し始めた。
「俺っ、この店の雇われ店長。この間も、刑事さんたちがうちの店に来てた。あの事件のあった晩のこと色々と訊ねて来たんだけど、いちいちそんなこと覚えているかってね、そういってやったんだぁ。マジで」
「そう、無駄足だったみないね……。行きましょうか巡査長」
「はい」
踵を返し二人がその場を離れようとしたその時だった。店長が、
「ハルナだったら、何か知っているかも知れないな」
と教えてくれた。
二人同時に振り返る。
「ハルナ?」
「うちで働いているバイト。あの娘、学生さんたちと仲良かったから」
「詳しいこと教えてもらえますか?」
「ああ、いいよ。ここじゃ何だから中に入って」
店長は気さくにそう告げると、腰にぶら下げているキーホルダから店の鍵を選び出し、ドアを開錠した。
店の奥の事務室で、面接の時に提出してもらった履歴書を取出し、カウンターの上に置く。
「見たら、適当にその辺に置いておいて。俺、仕込みしているから」
「ありがとう」
可南子と細川は、アルバイト店員松江羽留奈の履歴書の内容を素早く手帳に記載した。
「北区赤羽西三丁目『コーポ山下』か……」
「少し離れていますね……?」
「仕方ない。先に富士見二丁目のH大へ行きましょう」
可南子は東の方角に顎を向けた。
「おっと、その前にトイレ借りていいですか? なんせ年取ると小便が近いもので」
「もう、汚いな。私の前で下品な言葉使いは止めて下さいっていってるでしょ」
「そりゃ、申し訳ない」
細川は、苦笑気味に頭を下げ、店長からトイレの場所を聞き出し、店の奥へと消えた。
「ほら、やっぱり閉まっている」
細川がいう通り完全にシャッターが下り、準備中の札が垂れ下がっていた。
「残念ね……、念のため一応声掛けておきましょう」
可南子はシャッターの右横の閉じてあるドアの前に立ち、隙間から店内を覗き込んだ。
「あのー誰かぁいませんかぁ?」
反応がない。もう一度声を掛けてみる。
「あのー誰かぁいませんかぁ?」
するとその直後、新宿駅方面から一人の男性が歩いて来て、二人の手前二メートルの地点で立ち止まった。
男性の身形は、流行りのTシャツに短パン、足許はクロックスの黒いサンダルだ。髪の色は、金色だ。左耳にはクロムハーツのピアス。胸にもクロムハーツのネックレス。更に、本人はかなりイケていると思っているデザインのファッションタトゥー。所謂DQN系丸出しだった。年の頃は比嘉と同じ三十代半ばくらいだ。
「……誰っ、オタクらぁ?」
タメ口だ。
可南子は少し苛っと来て、眉間に皺を寄せた険しい表情で男を凝視した。
「こういう者だ」
と細川が警察手帳を呈示した。
「ああぁーあん、ケイサツの人ね……」
男は独り勝手に、納得いったように頷き、話を続ける。
「その先の地下へ降りる階段でボクサーが転落死した事件のことでしょ?」
「そうだけど……、どうしてそれがわかったの?」
如何にも不思議そうに男を見る。
男は、一瞬、目を大きく見開き、笑みを浮かべると話し始めた。
「俺っ、この店の雇われ店長。この間も、刑事さんたちがうちの店に来てた。あの事件のあった晩のこと色々と訊ねて来たんだけど、いちいちそんなこと覚えているかってね、そういってやったんだぁ。マジで」
「そう、無駄足だったみないね……。行きましょうか巡査長」
「はい」
踵を返し二人がその場を離れようとしたその時だった。店長が、
「ハルナだったら、何か知っているかも知れないな」
と教えてくれた。
二人同時に振り返る。
「ハルナ?」
「うちで働いているバイト。あの娘、学生さんたちと仲良かったから」
「詳しいこと教えてもらえますか?」
「ああ、いいよ。ここじゃ何だから中に入って」
店長は気さくにそう告げると、腰にぶら下げているキーホルダから店の鍵を選び出し、ドアを開錠した。
店の奥の事務室で、面接の時に提出してもらった履歴書を取出し、カウンターの上に置く。
「見たら、適当にその辺に置いておいて。俺、仕込みしているから」
「ありがとう」
可南子と細川は、アルバイト店員松江羽留奈の履歴書の内容を素早く手帳に記載した。
「北区赤羽西三丁目『コーポ山下』か……」
「少し離れていますね……?」
「仕方ない。先に富士見二丁目のH大へ行きましょう」
可南子は東の方角に顎を向けた。
「おっと、その前にトイレ借りていいですか? なんせ年取ると小便が近いもので」
「もう、汚いな。私の前で下品な言葉使いは止めて下さいっていってるでしょ」
「そりゃ、申し訳ない」
細川は、苦笑気味に頭を下げ、店長からトイレの場所を聞き出し、店の奥へと消えた。
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