捜査一課 猟奇殺人犯捜査官 比嘉可南子 

繁村錦

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INTERLUDE 7

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 タッチパネルを指先でタップすると、立花はスマホを耳に当てた。

「もしもし」

《純君、今、大丈夫?》

「仕事中だけど……」

《そう……》

 優樹菜の声のトーンがいつもと違い、沈んでいるような気がした。
 立花は、スマホを耳に当てたまま、比嘉と平泉の顔を交互に見た。

「いいよ」

 といって、比嘉は立花に彼女と私用の電話での会話を許可した。
 平泉も小さく頷いた。

「済みません」

 立花は二人に頭をさげたあと、廊下へと出た。

「どうしたの?」

 小声で訊ねる。

《私さ、二、三日前から、誰かに後をつけられているみたいなの》

「つけられているって、誰に。ストーカーか何か?」

《ううん、分からない。ただ、私が所属している欧州局ロシア課の用事で、今日の午前中に麻布台二丁目のロシア大使館へ行った時も、誰かに見られているような気がして、何だか気持ち悪いわ》

「誰かに見られているとは?」

《背中に視線を感じたの》

「視線……。で、移動は何を使った?」

《移動って》

「ロシア大使館までどうやって行ったのかって訊いてんの?」

《ああ、そういうことか、タクシーよ。○○○タクシー、そのタクシーの運転手も、霞が関を出た直後から、白い車につけられているような気がするっていっていたわ》

「白い車? 車種は? どこのメーカーだ、優樹菜ぁ?」

《ねえ、純君。私が車とかに弱いって知ってるでしょ、車種なんてわかんないよ》

「そうか、取り敢えず用心しろ」

《うん。ねえ……》

「何だよ、優樹菜」

《今日も仕事、遅くなりそうなの?》

 優樹菜の声が何となく心細く聞こえた。
 彼女からの質問に対し、立花は正直に答えてよいものか、少し迷った。

「今日、八王子の方で、新しい死体が見付かった」

《例の殺人事件と関わり合いがあるの?》

「……今のところ何ともいえない。そういう訳で今日も多分徹夜に近い状態だと思う。おい優樹菜、何かあったら警察に保護を求めろ」

《クスっ純君。警察に保護って、キャリアとはいえ、あなたも一応警察官でしょ》

「そんな冗談いっている場合じゃないだろう」

《うん、ごめん。ありがとうね純君》

「いいな優樹菜、くれぐれも気を付けるんだぞ、無理すんなよ」

《ありがとう。じゃあ、電話切るね》

 立花の耳には不通音が残った。電話を切り、スマホをイタリア製高級スーツのポケットにしまった。ドアノブに手を掛け、比嘉が待つ平泉の研究室に再び入った。
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