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CHAPTER11
2
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ファイルの中には幾つかの動画が入っていた。
その動画のタイトルを見て、立花は言葉を失った。
中野悠美
鴻池恵美
桂木佐和子
保原香澄
遠野真央
被害者女性たちの名前だった。
「再生してみて」
横から画面を覗き込みながら私が言った。
立花君は、一番上に名前が載っている中野悠美の動画を再生することにした。
カーソルを中野悠美に合わせる。
クリックして、動画を再生した。
中野悠美らしき女性は、全裸のまま正座して命乞いしていた。撮影された場所は、この女性の部屋か、或いは別の場所か判別できないが、何れにしてもフローリング加工された床の上に正座している。この映像を撮影した人物の影が、被害者女性の足下に映っている。
《助け。助けて下さい。お願いです。何でもいうことを聞きますから。殺さないで下さい○○さん》
悠美らしき女性は、犯人の名前を口にしたが、その部分はピーというコンピューター音で、消されている。
《駄目ダ。オ前ハ、ココデ死ナナクテハナラナイ。コレハ儀式ダ。生マレ変ワルタメノ儀式ダ。コノ私ガ、小林清志ニナルタメノ儀式ダ。オ前ハ、ソノタメノ生贄ダ》
犯人の声は、コンピューターで加工されていた。
犯人の左手がアップになった。その手にはメスが握られていた。鈍色に光る先端の尖った金属が、女性の喉元に突き刺さった。女性の白い肌に鮮血が滲んで行く。
《いやぁーっ! 止めてぇーっ! お願いだから助けて。殺さないでぇーっ!》
命乞いする悠美の悲痛な叫びにシンクロするように、パソコンの画面を食い入るように見詰める三人は、無駄だと知っていても、
「止めろーっ!」
と思わず叫び声をあげてしまった。
犯人は、何の躊躇いもなくメスを動かした。悠美の身体に赤い筋が引かれた。外性器がアップにされ、膣口にメスが突き刺さる。ゆっくりと上へ動かして行く。
《痛いっ! 止めて、助けてぇーっ!》
悠美の悲痛な叫びが、私たちの鼓膜に残った。
血飛沫が画面を赤く染めて行く。やがて被害者女性が喋らなくなった。
映像からは、吐き気を催すほどの邪悪を覚えた。
私は息を呑み、手のひらで口許を押さえた。
「まだ、見ますか?」
と顔面蒼白になった蛭子が、傍らに立ちPCの画面を食い入るように覗き込む私に訊ねた。
「もういい、止めて、これで十分よ、立花君……」
私は、自分も気付かないうちに泣いていた。
「……わかりました」
立花君は頷き、映像を停止した。
「捜査本部に連絡するわ……」
私はハンドバッグを開け、スマホ取り出した。
立花君も、さっき自分がスマホを落としたことを思い出した。前屈みになり、それを拾いあげた。
その動画のタイトルを見て、立花は言葉を失った。
中野悠美
鴻池恵美
桂木佐和子
保原香澄
遠野真央
被害者女性たちの名前だった。
「再生してみて」
横から画面を覗き込みながら私が言った。
立花君は、一番上に名前が載っている中野悠美の動画を再生することにした。
カーソルを中野悠美に合わせる。
クリックして、動画を再生した。
中野悠美らしき女性は、全裸のまま正座して命乞いしていた。撮影された場所は、この女性の部屋か、或いは別の場所か判別できないが、何れにしてもフローリング加工された床の上に正座している。この映像を撮影した人物の影が、被害者女性の足下に映っている。
《助け。助けて下さい。お願いです。何でもいうことを聞きますから。殺さないで下さい○○さん》
悠美らしき女性は、犯人の名前を口にしたが、その部分はピーというコンピューター音で、消されている。
《駄目ダ。オ前ハ、ココデ死ナナクテハナラナイ。コレハ儀式ダ。生マレ変ワルタメノ儀式ダ。コノ私ガ、小林清志ニナルタメノ儀式ダ。オ前ハ、ソノタメノ生贄ダ》
犯人の声は、コンピューターで加工されていた。
犯人の左手がアップになった。その手にはメスが握られていた。鈍色に光る先端の尖った金属が、女性の喉元に突き刺さった。女性の白い肌に鮮血が滲んで行く。
《いやぁーっ! 止めてぇーっ! お願いだから助けて。殺さないでぇーっ!》
命乞いする悠美の悲痛な叫びにシンクロするように、パソコンの画面を食い入るように見詰める三人は、無駄だと知っていても、
「止めろーっ!」
と思わず叫び声をあげてしまった。
犯人は、何の躊躇いもなくメスを動かした。悠美の身体に赤い筋が引かれた。外性器がアップにされ、膣口にメスが突き刺さる。ゆっくりと上へ動かして行く。
《痛いっ! 止めて、助けてぇーっ!》
悠美の悲痛な叫びが、私たちの鼓膜に残った。
血飛沫が画面を赤く染めて行く。やがて被害者女性が喋らなくなった。
映像からは、吐き気を催すほどの邪悪を覚えた。
私は息を呑み、手のひらで口許を押さえた。
「まだ、見ますか?」
と顔面蒼白になった蛭子が、傍らに立ちPCの画面を食い入るように覗き込む私に訊ねた。
「もういい、止めて、これで十分よ、立花君……」
私は、自分も気付かないうちに泣いていた。
「……わかりました」
立花君は頷き、映像を停止した。
「捜査本部に連絡するわ……」
私はハンドバッグを開け、スマホ取り出した。
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