僕の知らない彼女の素肌と貌

繁村錦

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PROLOGUE

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 父親の仕事の関係で、S県の片田舎のこのN市に引っ越して来たのは、小学二年の初夏だった。間もなく夏休みが始まろうとしている七月のある日、青葉一斗はN市立北小学校に転入した。
 都会の小学校から転校して来た一斗は、転校初日にあり勝ちな、クラスメイトから少し浮いた存在だった。
 そんな一斗に優しく声を掛けてくれたのは、学級委員長で、隣の席の松本香織というおさげの似合う少女だ。
 以降、何かにつけて、香織は一斗のことを気に掛け、彼に優しく接してくれた。
 夏休み、プールで燥ぎ過ぎて、香織の水着が伸び、左胸の黒子が目に留まった。彼女がプールサイドで横になった瞬間、右内腿の黒子も見えた。
 何かいけないものを見てしまったような気がして、咄嗟に一斗は目を逸らした。
 二人は中学も、同じ学校に通った。
 異性に芽生えた一斗は、いつしか香織に淡い恋心を抱くようになった。それは実に自然なことだった。
 高校は、頭のいい香織が、S県内でも屈指の進学校を受験したため、一斗は無理してその高校を受けた。偏差値六九が、合否のボーダーラインだ。
 努力した甲斐があって、一斗は何とか香織と同じ学校へ進むことができた。

「一斗とまた一緒の学校になったね」

 入学式当日、古城の跡地に築かれた古い木造建ての校舎で、背後から香織に声を掛けられた。

「偶々だよ、偶々」

 一斗は、いつも香織の前では素直になれず、素っ気ない態度を取る。

「偶々ってホントは、わたしとまた同じ学校に通いたくて無理して受けたんでしょ」

「違うよッ。そんなんじゃねっ」

 偉そうな態度を取るが、図星だった。
 本当は意中の香織と、高校の三年間も同じ空気を吸いたかったので、無理をしたのだ。
 その結果は散々だった。
 背伸びしても偏差値六十そこそこの一斗は、無理をして受験した結果、県内屈指の進学校に入ったまでは良かったが、授業に付いて行くのがやっとだった。
 そんな一斗に救いの手を差し伸べてくれたのは、やはり香織だった。
 数学や科学など一斗の苦手教科を、親身になって教えてくれた。

「ありがとう恩に着るよ、松本さん」

「またわからないところがあったら、いつでも聞いてね」

 ウインクする香織の右目の下の泣き黒子に、一斗の視線が走った。

「ホント、助かるよ松本さんには」

「じゃあね、朋子が一階したで待ってるから、わたし、先に帰るね」

 香織はその美貌に優しげな微笑を浮かべ、一斗に手を振って教室を離れた。
 二年の時、沖縄へ修学旅行に行った。
 陰キャラな一斗は、自由行動の時、誰も連む相手がいなく、一人で浮いていた。そんな時も、香織が真っ先に声を掛け、誘ってくれた。

「ねえ、わたしたちと一緒に遊ばない」

「……いいの、松本さん。僕なんかと一緒で」

「気にしない気にしない。ねっ、青葉君も一緒でいいよね、朋子に、里奈」

「まあ、香織、あんたがそれでいいんだったら、ウチらはそれでも構わないけど」

 朋子は、少し不満げにいう。
 結局、一斗は女子たちと一緒に行動したのだが、どことなく借りて来た猫のように落ち着かない。
 三年になって、いよいよ大学受験を真剣に考える時がやって来た。

「松本さんは大学、どこ受けるの?」

 至って自然体を装い、一斗は香織に自然体で訊ねた。

「T大理科三を受けようかなって思ってるの……無理かなわたしの成績じゃ」

 香織は少し自嘲気味にいう。

「T大理科三か……大丈夫。松本さんの成績なら絶対受かるよ」

 香織を励ますようにいうのだが、実のところ一斗の胸中は複雑だった。
 自分の実力じゃT大なんて無理だ。ということは充分承知していた。
 香織は見事志望通りT大理科三に合格した。
 一方、一斗の方は、何とか両親を説得して、彼の偏差値で合格できる東京の私大を受験した。ところが、いざ本番の試験で、緊張のあまり、普段の力を発揮できず不合格に終わった。

「一浪して、東京の大学へ行きたい」

 と、一斗は両親に訴えた。
 しかし、両親はそれを認めず、彼に地元の大学に進学するよう勧めた。
 結局、両親を説得することができず、一斗はN市内の三流大学に進むことになった。
 卒業式のあと、一斗は香織に交際して欲しいと打ち明ける決心を固めた。しかし、いざ香織の目の前に立つと、なぜか勇気が出なかった。
 告白に失敗したら、もう友達関係を継続できなくなる。つまり香織にフラれるのが怖かったのだ。
 一斗は、今のこのままの関係を維持して、それを継続する道を選んだ。
 それが間違いだと気付いたのは、香織がT大理科三に進学した半年後だった。

 その日は、唐突に、突然訪れた。
 ゼミのレポートの提出期限が迫る真夏のある日、一斗は息抜きのために手許のスマホを手に取って、液晶画面をタップした。

「チラッとエロサイトでも見ようか」

 軽い気持ちでそんなことを考えながら、一斗はネット上のアダルトサイトを検索する。

「ん? 『T大医学部に籍を置く巨乳清楚女子大生』……」

 なぜか気になった。T大医学部とは、香織が進学した理科三だった。
 嫌な予感がした。
 以前もこんな予感がしたことがあった。
 それは、中学二年の時だった。
 香織と親しげに歩く三年の男子生徒に、一斗は嫉妬した。

「……僕が、僕が先に香織のことを好きになったんだ」

 この気持ちを誰にもぶつけることができず、一斗は嫉妬心で荒れ狂った。
 結局、香織と親しげに歩いていた男子生徒は、彼女の従兄だった。
 単なる一斗の勘違いだった。
 だが、今回は妙な胸騒ぎがしてならないのだ。
 サムネイル画像は、目線こそモザイク処理されているのだが、右目の下の泣き黒子が気になって仕方がない。

「この黒子。香織と同じところにある。まさか……」

 これ以上進んではいけない。見てはいけない。と、一斗の本能が警鐘を打つ。しかし、確かめずにはいられなかった。
 駄目だ、とわかっていても一斗はスマホの液晶画面をタップした。

「嘘だろう……こ、これは……!?」

 液晶画面に映っていた無修正の猥褻動画には、Hカップ99センチの巨乳を晒した女子大生が、この動画をアップしたと思われる男性の巨根を膣内に咥え込んで牝貌でよがり狂う姿だった。
 目線にはモザイク処理が掛かっているが、やはり右目の下の泣き黒子があり、それどころか、左乳房の大きな乳輪の上に見覚えのある黒子があった。更に、正常位から体位を変え、女子大生が両膝を立てスパイダー騎乗位になった時、右内腿の黒子が画面に映った。

「そんな……ど、どうして香織がぁぁ……」

 そこに映っていた巨乳女子大生は、知る人が見れば、紛れもなく松本香織だった。
 絶望に打ちひしがれながらも、一斗の男性自身は鬱勃起して、無意識のうちに手のひらで扱いていた。
 それから間もなく一斗の精液が、亀頭の鈴口から虚しく飛び散った。
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