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第一章
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「すると亡くなられた冬月可南子さんは、他人に恨まれるような性格ではなかったということですか」
小松原がうんうんと頷きながら言ったあと、鼻で大きく息を吐き、首を傾げた。
「特に目立ったトラブルもなく、公私共に順調だったのに、どうしてこんなことに……」
松田は嗚咽を漏らしながら、警察の質問に答えた。
「あの」
と急に桐谷が声を掛け、事情聴取に割り込んで来た。
「何だ」
小松原は桐谷を睨んだ。
松田も涙で潤んでいる目を向け、怪訝そうに桐谷を見詰める。
「先ほど、うちの係長が、もう一人の第一発見者である学生さんから話を聞き、被害者に関することで、妙な噂を」
「うん、妙な噂だと」
怪訝気味に眉を顰め、小松原は裏返った声を上げた。
「勿体ぶらずに言えよ」
藤岡は相手がキャリアであるにも拘らず、タメ口で訊ねた。
「きっとあのことですね」
松田が真顔で言った。
「あのこととは?」
大屋が訊ねた。
「うちの大学で量子力学を研究している安西准教授のことです」
「漁師の力学?」
理系音痴の藤岡が、また頓珍漢なことを口走った。
「漁師の力学じゃなくて量子力学」
桐谷がせせら笑いを浮かべながら藤岡に説明した。
「この際そんなもん、どっちでもいいや。で、その量子力学ってのを教える偉い先生が、一体どうしたっていうんだ」
「可南子に、いえ、冬月先生に手を出そうとして」
「手を出す?」
小松原が眉間に皺を刻み、怪訝そうに松田を見た。
「安西先生、女性の方に手が早く……」
「ああ、なるほどそういうことか」
合点がいったらしく、小松原は軽く頷いた。
「で、その安西ってスケベ野郎はどうなったの?」
藤岡が鼻の穴をひくひくさせ、少し興奮気味に訊ねた。
「大谷教授の逆鱗に触れ、第二ラボへ立ち入り禁止になって……」
松田は小声で囁くように答えた。
「逆恨みによる犯行か……」
大屋は腕を組みながら低い声で言うと、部下の小松原の顔を見た。
「犯行動機として充分考えられますな。任意同行を掛けて引っ張ってみますか? その男なら優秀な物理学者ですので、あの訳の分からない装置を作ることも可能です」
「いや、まだ早い。現段階では証拠不十分だ。もう少し様子を見てからでも遅くはない。ここは泳がせてみよう」
「はい」
小松原は残念そうに頷くと、
「おい藤岡、そう言うことだ。お前は所轄の刑事と一緒に安西の行動を確認しろ」
「俺がですか?」
藤岡は自分の顔を指差した。
「そうだ、お前だ。相手は……おい、そこのキミ。桐谷警部補だっけ、元公安のエースと一緒に組んでくれ」
「えっこんな小娘とっ!?」
藤岡は上擦った声を上げた。
「何だか気が重い」
桐谷は憂鬱そうにかぶりを振った。
「五月蠅ぇー馬鹿野郎っ、それはこっちの台詞だっ」
藤岡は眉間に皺を刻み、語気を荒げた。
小松原がうんうんと頷きながら言ったあと、鼻で大きく息を吐き、首を傾げた。
「特に目立ったトラブルもなく、公私共に順調だったのに、どうしてこんなことに……」
松田は嗚咽を漏らしながら、警察の質問に答えた。
「あの」
と急に桐谷が声を掛け、事情聴取に割り込んで来た。
「何だ」
小松原は桐谷を睨んだ。
松田も涙で潤んでいる目を向け、怪訝そうに桐谷を見詰める。
「先ほど、うちの係長が、もう一人の第一発見者である学生さんから話を聞き、被害者に関することで、妙な噂を」
「うん、妙な噂だと」
怪訝気味に眉を顰め、小松原は裏返った声を上げた。
「勿体ぶらずに言えよ」
藤岡は相手がキャリアであるにも拘らず、タメ口で訊ねた。
「きっとあのことですね」
松田が真顔で言った。
「あのこととは?」
大屋が訊ねた。
「うちの大学で量子力学を研究している安西准教授のことです」
「漁師の力学?」
理系音痴の藤岡が、また頓珍漢なことを口走った。
「漁師の力学じゃなくて量子力学」
桐谷がせせら笑いを浮かべながら藤岡に説明した。
「この際そんなもん、どっちでもいいや。で、その量子力学ってのを教える偉い先生が、一体どうしたっていうんだ」
「可南子に、いえ、冬月先生に手を出そうとして」
「手を出す?」
小松原が眉間に皺を刻み、怪訝そうに松田を見た。
「安西先生、女性の方に手が早く……」
「ああ、なるほどそういうことか」
合点がいったらしく、小松原は軽く頷いた。
「で、その安西ってスケベ野郎はどうなったの?」
藤岡が鼻の穴をひくひくさせ、少し興奮気味に訊ねた。
「大谷教授の逆鱗に触れ、第二ラボへ立ち入り禁止になって……」
松田は小声で囁くように答えた。
「逆恨みによる犯行か……」
大屋は腕を組みながら低い声で言うと、部下の小松原の顔を見た。
「犯行動機として充分考えられますな。任意同行を掛けて引っ張ってみますか? その男なら優秀な物理学者ですので、あの訳の分からない装置を作ることも可能です」
「いや、まだ早い。現段階では証拠不十分だ。もう少し様子を見てからでも遅くはない。ここは泳がせてみよう」
「はい」
小松原は残念そうに頷くと、
「おい藤岡、そう言うことだ。お前は所轄の刑事と一緒に安西の行動を確認しろ」
「俺がですか?」
藤岡は自分の顔を指差した。
「そうだ、お前だ。相手は……おい、そこのキミ。桐谷警部補だっけ、元公安のエースと一緒に組んでくれ」
「えっこんな小娘とっ!?」
藤岡は上擦った声を上げた。
「何だか気が重い」
桐谷は憂鬱そうにかぶりを振った。
「五月蠅ぇー馬鹿野郎っ、それはこっちの台詞だっ」
藤岡は眉間に皺を刻み、語気を荒げた。
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