34 / 88
第3章 文化祭

第34話 ケーキセット無料券の行方

しおりを挟む
「もう勇者様ってば、それじゃ意味がないんですよ。全力でやってる勇者様が、予期せぬところでころっと負けちゃったらどうなるのかなってことなんですから」

「それはありえないな」
「ふふっ、ですよね♪ 勇者様の強さは、一緒に戦った私が誰よりもよく知っていますから」

 そう言ったリエナはとても誇らしそうな顔をしていた。
 俺のことをこんなにも誇らしく思ってくれるリエナに、俺はなんとも嬉しい気持ちにさせられてしまう。

 その嬉しい気持ちにお返しするように、俺はリエナの頭をポンポンと優しく撫でてあげた。

「えへへー」
 頭を撫でられたリエナは目を細めながらくすぐったそうに微笑んだ。

 しばらく幸せそうな顔でナデナデをされた後、

「話はガラッと変わるんですけど、こんなにたくさん無料券を貰ってどうするんですか?」
 俺が貰った無料券の束にリエナが視線を向けた。

「有効期限は当分先だったから、使い切れなくはないと思うぞ? 学校帰りにも寄れる場所だし。なんならケーキセット全メニュー制覇とかに挑戦してみようぜ」

「あはっ、いいですね。すごく楽しそうです♪」

「……っと、そんなこと言ってたら、ちょうどいいところにちょうどいい相手がいたな」

 俺は偶然さっきのカレシ君を発見した。
 例のカノジョさんと仲睦まじく手をつないで回っているところを見ると、無事に仲直りできたみたいだな。
 よかったよかった。

 俺はそんなカレシ君に近づくと話しかけた。

「よ、さっきぶりだな。カノジョと仲直りできたみたいで良かったよ」

「ああ、君はさっきの! おかげさまでね」
 俺の顔を見た途端、ピュアな顔ではにかむカレシ君。

「約束した通りカタキは取ってきたぞ。ほら、これが証拠だ」

 俺がニヤリと笑いながら大量のケーキセット無料券を見せると、カレシ君は驚いた顔を見せる。

「こんなにたくさん……! すごいんだね、君は」

「こう見えて輪投げは得意なんだ」
「これはもう得意ってレベルを超えているような……」

「まぁ俺のことはいいじゃないか。それより、はいどうぞ。これは俺からのプレゼントだ。カノジョと一緒に行ってきたらどうだ?」

 俺は大量のケーキセット無料券から2枚を抜いてカレシ君に手渡そうとする。

「いやいや、いいよいいよ。そこまでしてもらうのは気が引けるし。そもそもこれは君が取ったものだろう?」

 しかしカレシ君は手を胸の前で左右に振って、それをすぐには受け取ろうとしない。

「遠慮すんなって。こんなにたくさんあるんだぞ? 俺としてはむしろ貰ってくれたほうが嬉しいくらいで」
「そうですよ、きっとこれも何かの縁です。遠慮せずに貰ってくださいな♪」

「けど……」

「さっきだってリエナと使い切れるかなって話をしてたところなんだ。な、リエナ?」
「はい。ねっ、カノジョさんだってそう思いますよね?」

「あ、はい」

 俺だけじゃなくてリエナとカノジョさんにまで言われてしまったカレシ君は、

「そうまで言ってくれるなら、ありがたく使わせてもらうよ。親切にしてくれて、ありがとう!」

 ケーキセット無料券を両手で大事に受け取りながら、大きく頭を下げた。

「ははっ、いいってことよ。じゃあリエナ、俺たちは行こうか。これ以上、文化祭デートをしている2人の邪魔をするのは気が引けるからな」
「ですね♪ 私たちは退散しましょう♪」

 お邪魔虫な俺とリエナはすぐにその場を退散した。

「本当に色々とありがとう!」
 カレシ君の感謝の言葉を背中越しに受けながら――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

処理中です...