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第3章 文化祭

第36話 もぐもぐタイム、リエナ(2)

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「それもありますけど、どれもこれも美味しいんですよね~。しかも『オーフェルマウス』では見たこともないものばかりなので、ついついあれもこれもって手が出ちゃうんです」

「『オーフェルマウス』はなにせ質より量だったからなぁ」
「手間暇かけて料理をすることよりも、徹底して生産力を上げることが求められてましたからね」

「俺もリエナとの食の思い出っていうとさ、すっぱい木の実を食べたり、野草を煮て食べたり、虫を食べたりとかだもんなぁ……」

 ああ嫌だ、当時を思い出すだけで辛くなってくる。

 特に初めて虫を食べた時は最悪だった。
 温室育ちの現代日本人にとってあの行為は精神的に辛すぎた。
 人間を辞めた気がした。

『どうしたんですか勇者様? 食べないんですか?』
『いや、だって、これは、その……マジでちょっと、無理っていうか……』
『ですがとてもお腹が減っているって言ってましたよね? これ、見かけによらずすごく栄養あるんですから』
『そういう問題じゃなくてだな……俺の心の尊厳の問題なんだよ……』
『はぁ……よく分かりませんが、尊厳ではお腹は膨れませんよ?』
『……』
『一昨日からすっぱい木の実しか食べてませんよね?」
『…………』
「今だってまさにお腹が鳴っちゃってますよね?』
『ううっ……ぐすっ……ひぐっ……………………ぱくっ』

 ――そう。
 きっとあの時に俺の心は一度死んで、そして何事にも動じない鋼の心へと生まれ変わったんだ。

 あの経験以降吹っ切れたというか、食べられるものは何でも食べるようになったんだよな。

 異世界に召喚される前に『しいたけは噛んだ時の食感が嫌だ』だの『レバーは生臭くて苦手』だの、舐めたことをほざいていたのが懐かしいよ。

 ま、昔のニガくて苦しい体験を、楽しい楽しい文化祭でわざわざ思い出す必要はないわけで。
 俺は辛く悲しい過去を頭の中から蹴り飛ばすと、リエナとの話を続けた。

「こんなに美味しいものが学生レベルで提供できるだなんて、とても信じられませんよ。この世界は本当に凄いです」

「日本人はあまり自己主張しない民族性なんだけどさ。食べ物に関してだけは世界一うるさい民族なんだ。だから学生の文化祭であっても下手なものは出せないのさ」

「なるほど。皆さん普段から美味しいものを食べ慣れているので、舌が肥えているわけですね」
 リエナが納得するようにうんうんと頷いた。

「それで、リエナのお腹の減り具合はどんなもんだ? まだ食べるか?」

 クレープをペロリと平らげたリエナの食べっぷりを見て、俺は『追加オーダー』が必要かどうかを確認する。

「えーと、そうですね……」

「母さんから文化祭用に小遣いを多めに貰ってるから、お金の心配はいらないぞ?」

「いいえ、さすがにそろそろお腹いっぱいです。お口直しのウーロン茶で最後にしますね」

 そう言ったリエナが、ペットボトルのウーロン茶で口の中をリフレッシュするのを見届けてから、

「じゃあ食事も終わったし、次は体育館に行ってみないか? この時間は個人参加のステージをやってて、もうちょっとしたらうちのクラスの蓮見さんと新田さんが出るはずなんだ」

 俺は体育館への移動を提案した。
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