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第3章 文化祭

第39話『もしかしたらの人生』

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「俺の場合は勇者スキルが勝手に発動してなんでも上手く弾けちゃうからな。みんなが自分の力で演奏しているのに、俺だけスキルで好き勝手やっちゃうのはさすがにダメだろ」

 それはみんながこの日のために重ねて着Tあ努力を、チートを使って馬鹿にしているようなものだと思うから。

「勇者様はそういうところを律義に気にしますよね。でもそんな真面目な勇者様を私は大好きなんです♪」

「ははっ、ありがとなリエナ。俺もリエナが大好きだぞ」
 嬉しいことを言ってくれるリエナの頭を、俺は優しく撫でてあげた。

 ……もしリエナと一緒じゃなく、俺一人でこの世界に戻ってきていたとしたら。
 俺はそれまでの陰キャな学園生活には別れを告げて、様々な校内活動や行事に率先して参加してアオハルな学園生活を送ろうと思っていた。

 そしてそう思った以上、俺は実際に行動に移しただろう。

 クラス委員をやったり文化祭実行委員をやったり。
 みんなと一緒に明るく楽しく、色んなことをやってみようと思っていたのだ。

 俺は舞台で熱唱する蓮見さんの姿を思い返しながら、そんな『もしかしたらの人生』を少しだけ思い浮かべる。

 でも、ま。
 この世界に不慣れなリエナの面倒を見ながらの学園生活も、それはそれで楽しいんだけどな。

 なにせ異世界に行く前の俺ときたら、友だちが智哉1人しかいない陰キャだったのだ。
 それと比べたらリエナと過ごす高校生活は、以前と比較するのが馬鹿らしくなるくらいに楽しいし、圧倒的に充実している。

 というかリエナはすごく可愛い上に、俺とは相思相愛で同棲中の彼女なわけで。
 そんなリエナとあーんをしあったり、一緒に寝たりデートに行ったりと、かつての俺では到底なしえなかった様々なことをやっているのだ。

 つまり今の俺は、既にどこに出しても恥ずかしくない完璧なリア充だった。

「――って、そんなことは今さら言うまでもないか」
「なにがですか?」

 思っていたことをつい口に出してしまった俺を見て、リエナが小首をかしげた。

「リエナはとても可愛くて、そんなリエナが彼女の俺は世界一の幸せ者だなって、今さらながらに思ってさ」

「もう、さすがにそれは言い過ぎですよぅ」
「いやいや、そんなことないぞ? 可愛くて気が利いて、笑顔が素敵なリエナが彼女で俺は本当に幸せだから」

 素直に気持ちを伝えた俺を見て、

「なんだか今日の勇者様はいつもよりも饒舌じょうぜつというか、積極的に好意を伝えてくれる気がします」

 リエナがすごく嬉しそうに、でもちょっと恥ずかしそうにはにかむ。

「……かもな。文化祭の非日常感に俺もちょっと浮かれてるのかもな。なにせこんなに楽しい文化祭は初めてだからさ。隣にはリエナもいるし」

「私も勇者様と一緒に見て回る文化祭はすっごく楽しいです♪」
「来年も一緒に回ろうな」
「はい♪」

 そんな風にリエナと好意を伝え合いながらじゃれ合うように歩いていると、

「勇者様、やっぱり来年の文化祭は一緒に個人参加で出ませんか?」
 リエナがそんなことを言ってきた。
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