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第3章 文化祭

第43話 熊が笑う

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「ほぅ……まだ1年だというのに、いい眼をしているな。修羅場を潜り抜けてきた者だけが持つ戦士の目をしている。気に入ったぞ」

「ありがとうございます」
 なにやら気に入られたらしい。

「俺は3年の熊田陽太。あだ名はそのままクマだ。親愛を込めてクマ先輩と呼んでくれ」

 しかも茶目っ気まであるようだ。
 ……ウインクが絶望的に似合ってないけど。

 なんていうのかな、笑っているはずなのに人を殺しそうな顔をしている。
 ま、悪い人じゃないな。

「俺は1年の織田です。今日はよろしくお願いします、クマ先輩」

「俺の方こそ、今日は久しぶりに心が湧きたついい戦いができそうだ。参加してくれて感謝するぞ織田」

 俺とクマ先輩はそのまま少し視線を絡ませあうと、どちらからともなく肘をついて手の平を組み合った。

「どちらも準備はいいですか?」
 係の人の言葉に、俺たちはこくりと頷き合う。

 もう余計な会話はいらない。
 ここは既に戦場いくさばなのだから。

(後は戦って、どっちが強いのか決めるのみ――!)

「それでは本日初となるSランク戦! かたやインターハイ出場の超重量級の柔道部3年生のクマ先輩! かたや運動神経抜群で向かうところ敵なしの快進撃を続ける無敵の1年生、織田勇者くん! 我が高最強の腕自慢はどちらだ!? Sランクファイトぉ! レディぃぃぃぃGO!」

「うぉぉぉぉっっっ!!」
 開始の掛け声とともに、俺は全力を込めてクマ先輩の腕を倒しにかかった。

 純粋な腕力だけなら、腕が丸太のように太いクマ先輩の方が圧倒的に上だ。
 だから俺は腕だけでなく身体中の筋肉を総動員して、渾身の力を右腕に集めてクマ先輩の右腕へと叩きつけた。

「ぬうぅぅぅぅぅっ!!」
 しかし俺の全力の圧力を受けても、クマ先輩の腕はほんのわずかたりとも傾いたりはしない。

(……やれやれ、これはすごいな)

 ある程度想定の範囲内だったとはいえ、まるでしっかりと大地に根を張った大樹のようにビクともしないぞ。


「おおおおおっっっっ!!」
 俺が渾身の力を込めてもクマ先輩はまったく意にも介さない。

 しかしそれはクマ先輩も同じようだった。

「ほぅ、まさか俺のパワーを真正面から受けとめるとはな。並の相手ならもうこの時点で勝負は終わっているところだ。やるじゃないか織田」

「クマ先輩こそ、俺が全力で倒しにかかってるのに全く動く気配がないんですけど?」

「パワー自慢の超重量級の俺が、軽量級の1年坊主には負けられんさ」

 両者ピクリとも動かない全くの互角のスタートを切った俺とクマ先輩は、力が完全に拮抗したままで我慢比べへと突入した。

 1分、2分と時間が経過していき、いったい何事かと野次馬が集まり始めたのが横目に見え始める。

「ははは、本当にやるな織田! 全力の俺にここまでタメを張ってくるとは恐れ入った!」

「恐れ入ったのは俺の方ですよクマ先輩。ものすごいパワーで、わずかでも気を抜いたらその瞬間に持っていかれそうなんですけど?」

「くくっ、謙遜する必要はないさ。文句なしにお前は強い。だがしかし! 俺も運動部有志連合でSランクを任された以上は、簡単に負けるわけにはいかんのでな! 悪いがこの勝負、俺が勝たせてもらうぞ! ぬぉぉぉぉぉぉっっ!!」

 クマ先輩が猛獣のような唸り声をあげるとともに、顔を真っ赤にして額に血管を浮かべながら猛烈な力を込めはじめた。

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