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第3章 文化祭

第61話 不安の理由

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「ばーか、なに言ってんだ」

「いいえ、バカと言われようとなんと言われようと、私は勇者様についていきたいんです。『オーフェルマウス』で5年間ずっとお側で戦い続けたように、どうかこの世界でも私を勇者様の隣にいさせてください」

 俺の腕の中ですがるように見上げながら言ってくるリエナに、俺は苦笑しながら言葉を返した。

「ああごめん。今のはそういう意味じゃないんだ」
「え?」
 俺の言葉にリエナがキョトンとした顔を向けてくる。

「リエナとは『オーフェルマウス』に召喚されてからこの方、ずっと一緒に闘ってきただろ? 今さら言う必要はないってくらいに、俺はリエナの知恵や神託に何度も助けてもらったんだ。だからドラグレリアとの戦いにも当然ついてきてくれないとこっちが困るっての」

「ぁ……」

「一緒にいて欲しいってお願いするのは俺の方だよリエナ。俺がリエナのことをどれだけ頼りにしてると思ってるんだ?」

「そ、それなりでしょうか?」

「それなりだなんてリエナは謙遜が好きだなぁ。俺が『絶対不敗の最強勇者』でいられたのは、ひとえにリエナがいてくれたおかげだってのに。なのに勝手にいなくなられたら不安でしょうがなくなっちまうだろ?」

「勇者様……」

「リエナがいない俺なんて『タコの入ってないタコヤキ』みたいなもんだからさ」

「えっと、さすがにそれは言い過ぎでは……」

「言い過ぎなもんか。リエナがいてくれれば百人力だよ。安心感が違う。だからドラグレリアとの決戦にも絶対についてきてくれよな。これ、俺の一生のお願いな? 言っておくけど、俺は一生のお願いなんて滅多に言わないからな?」

 少し茶目っ気を乗せて伝えた俺の言葉に、

「ありがとうございます勇者様……はいっ! もちろんお願いされちゃいましたから! 雨が降っても槍が降ってもドラゴンがいっぱい降ってきちゃっても、もう絶対について行きますので!」

「いやー、ドラゴンがいっぱいは俺もさすがにきついかなぁ……」
「それでも勇者様ならきっと、なんとかしてくれますよ♪」

 嬉しそうに答えたリエナの目尻には、うっすらと涙がにじんでいた。
 それをそっとぬぐってあげる。

「なに泣いてんだよ」
「えへへ、感極まっての嬉し泣きです♪」

「まったく可愛い奴だなリエナは。知ってたけどな」
「知られちゃっていましたか」

「超知っちゃってたな」
「えへへ……」

「そもそもなんでリエナは、俺がリエナを連れて行かないって思ったんだ? 俺そんな素振りでも見せてたか?」

「それはその、勝てないかもと言われてしまって不安になってしまったんです」

「うん、そっか」

「この世界は女神アテナイの加護が薄いです。そのせいで、この世界では神託も神術も何もかも、私のサポート能力は低下してしまいます。スキルは問題ありませんが、特に神託はほとんど受けられなくなっています」

「そういやリエナに神託を告げられる機会が、めっきりなくなったな」

「だから足手まといになるであろう私は置いていかれるのかなって。なにせ相手は最強種のドラゴンですから。その方が勝てる確率が上がるのなら、勇者様はきっと冷静に私を置いていく判断をすると思ったんです。それで……」

「俺が馬鹿正直に伝えたせいで、リエナを変に不安にさせちゃったわけか。ごめんな気が利かなくて」

「いえいえそんな、勇者様が謝る必要なんてこれっぽっちもありませんから。私が勝手に思っちゃっただけですので」

「それでもやっぱりごめんだ」

「それに勝てる見込みがないのに勝てると言われた方が、信用されてないみたいで余計に不安になっちゃいますし。だからこれからも、ちゃんと正直に言ってもらわないと困りますからね?」

「じゃあそういうの全部踏まえた上で。リエナ、聞いてくれるか?」
「はい」

 俺は一度目を閉じて大きく息を吐いてから、宣言した。

「俺は勝つ。たとえ相手があの悪逆の皇竜ドラグローエンの娘・皇竜姫ドラグレリアであったとしても。たとえこの手に聖剣『ストレルカ』がなくても。俺は絶対に勝ってみせる」

「勇者様……」
「だからリエナは安心して俺の側で、俺の勝利の瞬間を見届けてくれ。『オーフェルマウス』での5年間、ずっとそうだったようにさ」

「はい、勇者様のお側という特等席で、次もまた勝利を積み上げる瞬間を見届けさせてもらいます――きゃっ……、ん……っ♡」

 俺に腕枕されながら嬉しそうに微笑んだリエナに、俺は身体を起こして上から覆いかぶさると、腕枕していた左手をリエナのあごに回してその唇にキスをした。
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