41 / 83
第四章「昔語り」
第41話 トラウマ
しおりを挟む
そしてその間にも続く一方的な遠距離攻撃。
「ああもう、いろいろ面倒くせぇ……よし、マナカ、跳ぶぞ。いいって言うまで、絶対に喋るんじゃねーぞ」
「え!? いやそのちょっと、待って。まだ心の準備がふぁぁぁぁああああ――」
「喋んなって言ってるだろ――」
フェイントをいくつも重ねて幻惑しておいてからの大ジャンプだ。
《魔術師型》との距離を一気に離すと、俺はいったんマナカを木陰へと降ろした。
「しゃあねぇ。あれやるか。マナカはいつも通りここでじっとしてるんだぞ」
俺の言葉にマナカがこくんと頷いた。
「ユウト、大丈夫?」
「短時間なら大丈夫だ。その代わり、二の太刀要らずだ。一撃で決めるぜ――あああぁぁぁっっっ!」
俺の咆哮とともに、《魔術師型》が突如としてあらぬ方向を攻撃し始めた。
クロの力は《認識阻害》。
その《認識阻害》を強烈に一点照射することで、相手に質量すら感じさせる本物そっくりの幻影を見せるという俺のとっておきだ。
その代償として心臓を掴まれるような恐怖感とともに、急激な動悸と息切れが俺を襲ってくる。
速まりすぎた呼吸を少しでも落ち着かせるようにと、一度大きく大きく息を吸って、吐き出した。
高ぶる動機をほんのわずか落ち着かせると、俺は死角へと回り込むようにしながら慎重かつ迅速に《魔術師型》との距離を詰めていく。
そしてニセの俺に飛び道具を放ったその隙を狙い澄まして、
「ハ――ッ!」
まさに《魔術師型》の目の前、敵の懐へと飛び込んだ――!
いきなり出現した俺の姿に、慌てて後ろに下がろうとする《魔術師型》。
だが――、
「悪いが、そいつも偽物だ――」
《魔術師型》が跳び下がったちょうどその先で、本物の俺は右足で強烈に大地を踏みしめていた。
立ち昇る反発力を、溜めの連鎖でうねらせ強化しながら横回転へと増幅変換していく、それは必殺必倒の討滅奥義――!
「《螺旋槍》――!」
その完全無防備な背中側から、俺は容赦ない一撃を叩き込んだ。
必殺の一撃を喰らい、抵抗する間もなくさらさらと粒子となって霧散していく《魔術師型》。
最後に残った《想貴石》を空中でキャッチして回収した俺は、
「かは――っ、あ、ぐぁ、が――」
そのままその場に、文字通り崩れ落ちてしまっていた――。
はぁはぁと呼吸が荒い。
頭がガンガンして、目の前がぐるぐる回っている。
「ぐ、あぐっ……、かっ、は――っ」
呼吸が乱れ、体が震えて立ち上がることすらおぼつかない――。
そして、真っ黒に焼け落ちた剣部の屋敷が、悲鳴のような叫び声が、「お守りだよ」と言った姉の最後の言葉が。
取り返せない過去が俺の目の前に走馬灯のように浮かんでは消え、浮かんでは消えるを繰り返し始めた――。
過換気症候群と呼ばれる心因性の過呼吸だ。
俺の場合は《想念》の使用強度を上げすぎた時に、過去のトラウマのフラッシュバックという形で発症してしまうのだった。
「さすがに今のは……ぐっ、力を、使いすぎたか……」
息が苦しくて、気分が悪くて――俺は四つん這いにはいつくばったままで、痙攣するように震えながら、苦しみが過ぎ去るのをじっと静かに縮こまって耐え忍ぶ。
大抵のことなら相棒のクロが元気づけてくれるのだが、ことが《想念》使用による過剰な負荷が原因なだけに、大元の《想念》であるクロが出てくるわけにはいかず、俺を刺激しないようにと引っ込んだまま黙っているしかなく――。
俺はただ一人、夜の闇に這いつくばって――、
「そうだ……携帯、携帯を――」
「ああもう、いろいろ面倒くせぇ……よし、マナカ、跳ぶぞ。いいって言うまで、絶対に喋るんじゃねーぞ」
「え!? いやそのちょっと、待って。まだ心の準備がふぁぁぁぁああああ――」
「喋んなって言ってるだろ――」
フェイントをいくつも重ねて幻惑しておいてからの大ジャンプだ。
《魔術師型》との距離を一気に離すと、俺はいったんマナカを木陰へと降ろした。
「しゃあねぇ。あれやるか。マナカはいつも通りここでじっとしてるんだぞ」
俺の言葉にマナカがこくんと頷いた。
「ユウト、大丈夫?」
「短時間なら大丈夫だ。その代わり、二の太刀要らずだ。一撃で決めるぜ――あああぁぁぁっっっ!」
俺の咆哮とともに、《魔術師型》が突如としてあらぬ方向を攻撃し始めた。
クロの力は《認識阻害》。
その《認識阻害》を強烈に一点照射することで、相手に質量すら感じさせる本物そっくりの幻影を見せるという俺のとっておきだ。
その代償として心臓を掴まれるような恐怖感とともに、急激な動悸と息切れが俺を襲ってくる。
速まりすぎた呼吸を少しでも落ち着かせるようにと、一度大きく大きく息を吸って、吐き出した。
高ぶる動機をほんのわずか落ち着かせると、俺は死角へと回り込むようにしながら慎重かつ迅速に《魔術師型》との距離を詰めていく。
そしてニセの俺に飛び道具を放ったその隙を狙い澄まして、
「ハ――ッ!」
まさに《魔術師型》の目の前、敵の懐へと飛び込んだ――!
いきなり出現した俺の姿に、慌てて後ろに下がろうとする《魔術師型》。
だが――、
「悪いが、そいつも偽物だ――」
《魔術師型》が跳び下がったちょうどその先で、本物の俺は右足で強烈に大地を踏みしめていた。
立ち昇る反発力を、溜めの連鎖でうねらせ強化しながら横回転へと増幅変換していく、それは必殺必倒の討滅奥義――!
「《螺旋槍》――!」
その完全無防備な背中側から、俺は容赦ない一撃を叩き込んだ。
必殺の一撃を喰らい、抵抗する間もなくさらさらと粒子となって霧散していく《魔術師型》。
最後に残った《想貴石》を空中でキャッチして回収した俺は、
「かは――っ、あ、ぐぁ、が――」
そのままその場に、文字通り崩れ落ちてしまっていた――。
はぁはぁと呼吸が荒い。
頭がガンガンして、目の前がぐるぐる回っている。
「ぐ、あぐっ……、かっ、は――っ」
呼吸が乱れ、体が震えて立ち上がることすらおぼつかない――。
そして、真っ黒に焼け落ちた剣部の屋敷が、悲鳴のような叫び声が、「お守りだよ」と言った姉の最後の言葉が。
取り返せない過去が俺の目の前に走馬灯のように浮かんでは消え、浮かんでは消えるを繰り返し始めた――。
過換気症候群と呼ばれる心因性の過呼吸だ。
俺の場合は《想念》の使用強度を上げすぎた時に、過去のトラウマのフラッシュバックという形で発症してしまうのだった。
「さすがに今のは……ぐっ、力を、使いすぎたか……」
息が苦しくて、気分が悪くて――俺は四つん這いにはいつくばったままで、痙攣するように震えながら、苦しみが過ぎ去るのをじっと静かに縮こまって耐え忍ぶ。
大抵のことなら相棒のクロが元気づけてくれるのだが、ことが《想念》使用による過剰な負荷が原因なだけに、大元の《想念》であるクロが出てくるわけにはいかず、俺を刺激しないようにと引っ込んだまま黙っているしかなく――。
俺はただ一人、夜の闇に這いつくばって――、
「そうだ……携帯、携帯を――」
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる