討滅の刃 -漆黒の復讐者- darker than "The BLUE"

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

文字の大きさ
42 / 83
第四章「昔語り」

第42話 姉の携帯電話

しおりを挟む
「携帯、携帯を――」

 ガクガクと震え言うことをきかない手で、ポケットから唯一の心のよりどころであるピンクの携帯電話を取りだそうとして――、

「ぐ、あ――ぐガ――」

 突如として襲ってきた今日一番の過呼吸によって、俺は携帯電話を取り落としてしまいそうになり、しかし震えながらも慌てて両手で掴み直したのだが――、

「――ぁ」

 その時に震える指先が操作キーに触れてしまって、俺は意図せず空メールを誤送信をしてしまう。

 送信先は履歴の一番上、マナカを除いてはほぼ唯一の送り先である――それは、今は亡き最愛の姉の携帯アドレスだった。

 そしてその直後――誤送信から2秒ほどで――、

 ブブブ、ブブブブ。

 『俺の持っていたピンクの携帯』が小さく震えると、メールの着信があったことを伝えてくる――。

 こんな絶妙のタイミングでいったい誰から?
 見なくても分かる、送信元は『姉の携帯電話』からだった。

 ――そりゃそうだろう。

 だって今、メールを送ったこの『ピンクの携帯電話』は――、「お守りだよ」と渡されたこの『ピンクのくまさんが付いた携帯電話』は――、送信先だった『姉の携帯電話』そのものでもあるのだから――。

 そう。あの日から。

 大好きだった姉の死を受け入れられなかった俺は――、僕は――、剣部優刀つるぎべゆうとは――。
 心にぽっかりと開いた欠落を埋めるために、鬼籍に入った姉にメールを送るという代償行為でもって、どうにか精神の安定を保っていたのだから――。

 そんな俺の弱さの象徴とも言うべき携帯電話を握りしめて、それだけを心のよりどころとして、俺はただただうずくまって震え続ける。

 いつものようにいくらか症状がおさまるまで、ずっとずっとずぅっと。
 ただただずっと、震え続けるしかない――はずだった。

「もう大丈夫だよ、ユウトくん」

 そんな俺のところに全速力で走ってきたマナカが、震えて縮こまっている俺を安心させるように言うと、そっと優しく抱きしめてくれたのだ。

「大丈夫、大丈夫だよ」
「くっ、はっ――」

「落ち着いて、ね。はい、しんこきゅー」
 言いながら、マナカは俺の頭を包み込むようにして宝物を扱うようにして自分の胸へと抱き抱えてくる。

 呼吸を誘導するように、ゆっくりと優しく背中がさすられて。
 世代を超えて育ちきったマナカの胸に、俺は赤ちゃんみたいに顔をうずめた様な格好になってしまっていて。

 するとどうだろう、あれだけ苦しかった過呼吸が、ふっと和らいできたのだ。

 しかもなんということだろうか、ちょうどマナカの胸のところでシャツのボタンが一つ外れてしまっており、

「――!?」

 俺はそこにガッツリと顔を突っ込んでしまっていたのだった。

 ブラジャーの柔らかい布地と、それをはるかに凌駕する瑞々みずみずしい乙女の柔肌に触れて――俺は何とも言えない幸せな気持ちに包まれていたんだけれど――

 いやこれマナカは気付いていないのか!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...