66 / 83
第六章「《蒼混じりの焔》ブルーブレンド」
第66話 絶望を前に
しおりを挟む
「右手が使えない以上、もう《螺旋槍》は打てないんだよ。《螺旋槍》がなければユウトに仕留められる攻撃はない――勝てる可能性は、今のユウトにはもう無いんだよ」
冷静に諭すような声色のクロに、
「《螺旋槍》がなくても! 右手がダメなら左手で! 左手も駄目なら足で、頭突きで、噛みついてでも! 今ここで! 俺が《蒼混じりの焔》を討滅するんだ――!」
俺は激情に駆られるまま言葉を投げつけて言い捨てると、怨念のような殺意とともに血まみれの足で踏み出した――ものの、
「フン――ッ」
軽く間合いを詰めてきた《蒼混じりの焔》はアイアンクローの要領で俺の頭を掴むと、そのまま軽々と持ち上げて放り投げた。
大きな放物線を描いた俺の身体は再び地面に激突し、そのまま地面を転がってゆく。
「かはっ――こんにゃろ……滅茶苦茶やりやがって……なんつー腕力だよ」
もう一度身体を起こすものの、くっ、立ち上がることにすら疲労を感じはじめている……!
「ふむ、事ここに至ってもなお、《想念》を使いこなせないのか――正直失望したよ」
「このクソが……っ」
「そんな極上の《想念》を持ちながら、そして強固な戦う意志を持ち合わせながら、なぜだ? 何のために君は鍛錬を重ねてきたのだ。その全てを今ここで披露せずに、いったいいつ見せるというのだ?」
「てめぇは俺が、討滅する! 俺が今、ここで……っ!」
「はぁ、もういいよ、もういい」
《蒼混じりの焔》はため息をつくと、同時に雑な中距離牽制攻撃を振るった。
ヤツが初めて見せた飛び道具。
だがあまりにも雑すぎる攻撃のそれは、手負いの身体でもかわすことはたやすかった。
本当に俺という存在そのものに興味がなくなったかのような、無造作極まりない攻撃だったからだ。
「んなもんに、当たるかよ……っ」
続けてもう一発、同じような攻撃が飛んでくる。
しかしまたもや無造作に放たれたそれには、先読みも意図も何も存在せず、避けるのは余りに簡単で――簡単すぎて――つられるように俺も無造作に避けた――避けようとしてしまい――。
かわそうとした、その刹那だった。
「マナカ――?」
――すっと俺の視界の片隅にマナカの姿が映りこんだのは。
あの高い木の上からどうやってか降りてきたマナカは、運悪く《蒼混じりの焔》の遠距離攻撃の射線上に入り込んでいたのだ――!
「あの馬鹿――っ!」
全てを理解したその時にはもう既に。
考えるよりも先に俺は全力をもって身を投げ出していた。
すでに回避を終えかけていた身体を無理やりもう一度、射線上へと飛び込ませる――!
完全なノータイム。
義務感ではなく、強迫観念でもない。
それは純然たる己の意思。
心のままに行った本当に自然な行動で。
マナカを庇うように射線から動かなかった俺を、《蒼混じりの焔》の攻撃が直撃した。
「くは――っ、ごふ――っ」
右肩口から左脇腹に抜けるように、袈裟掛けに鋭い衝撃が駆け抜ける。
遅れて鮮血が盛大に吹き上がった。
あまりに綺麗なそれを見て、まるで赤い噴水のようだと、他人事のように思ってしまった。
ザックリと斬られた俺はたたらを踏みながら、しかしこらえきれず。
俺はゴフッと、大きな血の塊を吐きだした。
そのまま腰くだけになって、しりもちをつきながら仰向けに地面へと崩れ落ちる。
天地が入れ替わった視界に、慌てて駆け寄ってくるマナカが見えて。
俺はそのまま上半身を抱き起こされていた。
ったくこいつは――
冷静に諭すような声色のクロに、
「《螺旋槍》がなくても! 右手がダメなら左手で! 左手も駄目なら足で、頭突きで、噛みついてでも! 今ここで! 俺が《蒼混じりの焔》を討滅するんだ――!」
俺は激情に駆られるまま言葉を投げつけて言い捨てると、怨念のような殺意とともに血まみれの足で踏み出した――ものの、
「フン――ッ」
軽く間合いを詰めてきた《蒼混じりの焔》はアイアンクローの要領で俺の頭を掴むと、そのまま軽々と持ち上げて放り投げた。
大きな放物線を描いた俺の身体は再び地面に激突し、そのまま地面を転がってゆく。
「かはっ――こんにゃろ……滅茶苦茶やりやがって……なんつー腕力だよ」
もう一度身体を起こすものの、くっ、立ち上がることにすら疲労を感じはじめている……!
「ふむ、事ここに至ってもなお、《想念》を使いこなせないのか――正直失望したよ」
「このクソが……っ」
「そんな極上の《想念》を持ちながら、そして強固な戦う意志を持ち合わせながら、なぜだ? 何のために君は鍛錬を重ねてきたのだ。その全てを今ここで披露せずに、いったいいつ見せるというのだ?」
「てめぇは俺が、討滅する! 俺が今、ここで……っ!」
「はぁ、もういいよ、もういい」
《蒼混じりの焔》はため息をつくと、同時に雑な中距離牽制攻撃を振るった。
ヤツが初めて見せた飛び道具。
だがあまりにも雑すぎる攻撃のそれは、手負いの身体でもかわすことはたやすかった。
本当に俺という存在そのものに興味がなくなったかのような、無造作極まりない攻撃だったからだ。
「んなもんに、当たるかよ……っ」
続けてもう一発、同じような攻撃が飛んでくる。
しかしまたもや無造作に放たれたそれには、先読みも意図も何も存在せず、避けるのは余りに簡単で――簡単すぎて――つられるように俺も無造作に避けた――避けようとしてしまい――。
かわそうとした、その刹那だった。
「マナカ――?」
――すっと俺の視界の片隅にマナカの姿が映りこんだのは。
あの高い木の上からどうやってか降りてきたマナカは、運悪く《蒼混じりの焔》の遠距離攻撃の射線上に入り込んでいたのだ――!
「あの馬鹿――っ!」
全てを理解したその時にはもう既に。
考えるよりも先に俺は全力をもって身を投げ出していた。
すでに回避を終えかけていた身体を無理やりもう一度、射線上へと飛び込ませる――!
完全なノータイム。
義務感ではなく、強迫観念でもない。
それは純然たる己の意思。
心のままに行った本当に自然な行動で。
マナカを庇うように射線から動かなかった俺を、《蒼混じりの焔》の攻撃が直撃した。
「くは――っ、ごふ――っ」
右肩口から左脇腹に抜けるように、袈裟掛けに鋭い衝撃が駆け抜ける。
遅れて鮮血が盛大に吹き上がった。
あまりに綺麗なそれを見て、まるで赤い噴水のようだと、他人事のように思ってしまった。
ザックリと斬られた俺はたたらを踏みながら、しかしこらえきれず。
俺はゴフッと、大きな血の塊を吐きだした。
そのまま腰くだけになって、しりもちをつきながら仰向けに地面へと崩れ落ちる。
天地が入れ替わった視界に、慌てて駆け寄ってくるマナカが見えて。
俺はそのまま上半身を抱き起こされていた。
ったくこいつは――
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる