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インタールード 愛園マナカ
第70話 わたしにできること
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「マナカがいてくれた、この一ヶ月は……本当に楽しかった……」
「これからだって楽しいよ、これからも、もっともっと楽しいよ!」
「マナカと会うたびに……俺は、温かい気持ちに、なる、ことが、できた」
「うん、うん――」
「最後にマナカと出会えてからは……俺は本当に幸せだった」
「過去形で言わないでよぉ――」
最後の最後まで優しいユウトくん。
そう、ユウトくんはずっとわたしに優しかった。
きつい言葉で遠ざけようとするのは、わたしを心配していたからだ。
お願いすればなんだかんだで聞いてくれたし、ちょっと手の動きがえっちな時もあったけれど、色んなところでさりげない気づかいが感じられた。
はじめて話したのは、路地裏で助けてもらった時だった。
よくわからないまま大ピンチだったわたしの前に、まるでおとぎ話の王子様のように颯爽と現われたのを見て、胸の奥が切なくキュンとしたことは今でも一番の思い出だ。
ユウトくんと一緒にいる中で、キュンは次第にドキドキに変わっていって。
気付いた時には大きな大きな恋心になっていたのだ。
それは私が初めて抱く気持ちだった。
ユウトくんのことをもっと知りたい。
もっともっと話しをしたい。
もっともっともっと一緒に居たい――
そして今――そんな大好きだったユウトくんの手から、ふっと力が抜けたのが分かった。
「いやっ――いやだよぉ――こんなの、いやぁっ!」
今、まさにユウトくんの命の灯が失われようとしていた。
絶望感で目の前が真っ暗になりそうだった。
でも、苦しんでる時に背中をさすってあげるくらいしかできないわたしに、できることなんてなにもない。
それがどうしようもなく悔しくて悲しくて。
「本当にわたしってなんて無力――」
必死に、懸命に、どうしようもないくらいに考えて、でもやっぱりわたしにはなにもできなくて。
なにもできないわたしは、だから最後に――、
「ユウトくん――。ん――っ」
そっと唇を重ねた。
この気持ちをちゃんと伝えておけばよかったと、とどまることのない後悔にさいなまれながら――。
童話の白雪姫のように奇跡が起こってほしかった。
ユウトくんとまた話がしたい。
もう一度ユウトくんの笑った顔が見たい。
色んな想いを込めて口づけをする。
もちろん王子様のキスでお姫様が目を覚ます――なんて奇跡が起きるのは物語の中だけだ。
わたしももう高校生。
世界は物語のように優しくはなく、一度失われたものは二度と戻らない。
そんなこと、わたしだってちゃんと分かっている。
でももしかしたら、万に一つの奇跡が起こるかもしれないから。
《想念》とは想いの力だってユウトくんは言っていた。
だったら、わたしの想いももしかしたら叶うんじゃないか――奇跡が起こるんじゃないかって。
なにもできないわたしには、もうそんな言葉くらいしかすがるものがないのだから。
どんなことでもいい、わたしにできることを――!
頬を伝う涙をぬぐうこともせず、脱力したユウトくんをしっかりと抱きかかえて、冷たくなってゆく唇へと必死に口づけを行う。
でも――唇を離しても現実は何一つ変わっていなかった。
奇跡は起きなかったのだ。
当たり前のことなのに、それがどうしようもなく悲しくて。
ユウトくんを抱きかかえたまま、あふれる涙が止まらなくて。
目をつぶったまま、わたしはぐすぐすと泣き腫らしていた。
だから――、
「なに泣いてんだよ、せっかくの可愛い顏が台なしだぞ」
最初は聞き間違いだと思った。
「ん、あれ、もしかして聞こえてないのか? おーい、マナカ?」
涙をぬぐうように左頬に差しのべられた手の感触と温もりで、初めてわたしは気付いたのだ。
「え――? ユウト、くん――?」
「ああ、俺だぞ」
「えっと……ユウトくん?」
「おう」
「――っ! ユウトくん!ユウトくんユウトくん!」
なにがなんだかわからなくて、なんせ気が動転していて――。
だからもう、勢い余ってがばっと力の限りぎゅうぎゅう抱きしめてしまったのは、これは致し方ないことではないでしょうか?
「これからだって楽しいよ、これからも、もっともっと楽しいよ!」
「マナカと会うたびに……俺は、温かい気持ちに、なる、ことが、できた」
「うん、うん――」
「最後にマナカと出会えてからは……俺は本当に幸せだった」
「過去形で言わないでよぉ――」
最後の最後まで優しいユウトくん。
そう、ユウトくんはずっとわたしに優しかった。
きつい言葉で遠ざけようとするのは、わたしを心配していたからだ。
お願いすればなんだかんだで聞いてくれたし、ちょっと手の動きがえっちな時もあったけれど、色んなところでさりげない気づかいが感じられた。
はじめて話したのは、路地裏で助けてもらった時だった。
よくわからないまま大ピンチだったわたしの前に、まるでおとぎ話の王子様のように颯爽と現われたのを見て、胸の奥が切なくキュンとしたことは今でも一番の思い出だ。
ユウトくんと一緒にいる中で、キュンは次第にドキドキに変わっていって。
気付いた時には大きな大きな恋心になっていたのだ。
それは私が初めて抱く気持ちだった。
ユウトくんのことをもっと知りたい。
もっともっと話しをしたい。
もっともっともっと一緒に居たい――
そして今――そんな大好きだったユウトくんの手から、ふっと力が抜けたのが分かった。
「いやっ――いやだよぉ――こんなの、いやぁっ!」
今、まさにユウトくんの命の灯が失われようとしていた。
絶望感で目の前が真っ暗になりそうだった。
でも、苦しんでる時に背中をさすってあげるくらいしかできないわたしに、できることなんてなにもない。
それがどうしようもなく悔しくて悲しくて。
「本当にわたしってなんて無力――」
必死に、懸命に、どうしようもないくらいに考えて、でもやっぱりわたしにはなにもできなくて。
なにもできないわたしは、だから最後に――、
「ユウトくん――。ん――っ」
そっと唇を重ねた。
この気持ちをちゃんと伝えておけばよかったと、とどまることのない後悔にさいなまれながら――。
童話の白雪姫のように奇跡が起こってほしかった。
ユウトくんとまた話がしたい。
もう一度ユウトくんの笑った顔が見たい。
色んな想いを込めて口づけをする。
もちろん王子様のキスでお姫様が目を覚ます――なんて奇跡が起きるのは物語の中だけだ。
わたしももう高校生。
世界は物語のように優しくはなく、一度失われたものは二度と戻らない。
そんなこと、わたしだってちゃんと分かっている。
でももしかしたら、万に一つの奇跡が起こるかもしれないから。
《想念》とは想いの力だってユウトくんは言っていた。
だったら、わたしの想いももしかしたら叶うんじゃないか――奇跡が起こるんじゃないかって。
なにもできないわたしには、もうそんな言葉くらいしかすがるものがないのだから。
どんなことでもいい、わたしにできることを――!
頬を伝う涙をぬぐうこともせず、脱力したユウトくんをしっかりと抱きかかえて、冷たくなってゆく唇へと必死に口づけを行う。
でも――唇を離しても現実は何一つ変わっていなかった。
奇跡は起きなかったのだ。
当たり前のことなのに、それがどうしようもなく悲しくて。
ユウトくんを抱きかかえたまま、あふれる涙が止まらなくて。
目をつぶったまま、わたしはぐすぐすと泣き腫らしていた。
だから――、
「なに泣いてんだよ、せっかくの可愛い顏が台なしだぞ」
最初は聞き間違いだと思った。
「ん、あれ、もしかして聞こえてないのか? おーい、マナカ?」
涙をぬぐうように左頬に差しのべられた手の感触と温もりで、初めてわたしは気付いたのだ。
「え――? ユウト、くん――?」
「ああ、俺だぞ」
「えっと……ユウトくん?」
「おう」
「――っ! ユウトくん!ユウトくんユウトくん!」
なにがなんだかわからなくて、なんせ気が動転していて――。
だからもう、勢い余ってがばっと力の限りぎゅうぎゅう抱きしめてしまったのは、これは致し方ないことではないでしょうか?
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