81 / 83
―最終章―
第81話 最高のハッピーエンド
しおりを挟む
「ずっと見守ってくれてありがとな、クロ」
最高の相棒に万感の思いを込めて送った俺の言葉は、そっと頬をなでる夜の風に消え入るように流されていって――。
耐えがたい喪失感に胸が満たされ、ただただ感傷に浸っていた俺はしかし、
「クロちゃん…………。やっぱだめーーーーー!!!!」
マナカの大声によってそんな空気は完膚なきまでにぶっ壊されたのだった。
「うぉっ、びっくりしたっ!? なんだよマナカ急に大きな声出して?」
「大きな声くらい出すもん! やっぱりだめだもん! クロちゃんが消えちゃだめだもん!!」
「そうは言ってもな――」
「ダメなものはダメだもん!」
言うが早いかマナカは俺にダイブを敢行、ぎゅっと抱き着いてきた。
マナカのやわらかい胸のふくらみがぎゅむっと俺の身体に押し当てられる。
それはまぁそれとして。
「ごめん、マナカの行動の意味が真剣に分からないんだけどって――うぉっ!?」
俺が驚いたのも仕方のないことだった。
なぜなら俺の身体の中に、マナカの持つ異能の力が強烈に流れ込んできたからだ――!
しかもこれって――、
「剣部の《心剣》が発動してる!? マナカが無理やり俺に力を流し込んで、強制的に発動してるのか!?」
なんと俺の意思とは関係なく剣部の《真なる心剣》――心を繋げた相手の力を己の力として引き抜く――が発動していたのだ!
俺の細胞という細胞が、マナカの燃えるような熱い想いと異能の力で沸き立ってゆく――!
「お願いっっっっっっっっ!! わたしの力が再生の力だっていうなら、お願いだからクロちゃん! 戻ってきて!!」
マナカは俺に抱き着いたまま、その腕にさらに力を込めてぎゅっとぎゅうっと俺を抱きしめてくる。
普通の女子高生をやっているマナカは、異能の力の使いかたなんてもちろん知りはしない。
だからそれは、ただ奇跡を願うだけの祈りにすぎなかった。
だけどそれは、誰よりも何よりも『奇跡』を手繰り寄せようとする、純粋で力強い祈りだったのだ――!
その切なる願いを、俺の中の剣部の《心剣》が余すところなくすくい取ってゆく――!
そうして呼び出された力は、死の淵にいた俺すらも救ってみせた『再生』という最高峰の異能の力であり――、
「――マナカ、君は本当に凄いね。まさか心が繋がったことを逆手にとって、ユウトの《心剣》を勝手に使っちゃうなんて。しかも使い方なんて知らないはずなのに、強い気持ちだけで起動させたときた。長い剣部の歴史でもさすがにこれは初めて、前代未聞のことじゃないかなぁ?」
――そしてその声は、この4年間毎日のように聞いた慣れ親しんだ声だった。
「まったくもう、ほんとマナカは想像の斜め上を突っ走っちゃうんだから」
「――クロ!」「――クロちゃん!」
「あははは、戻ってきちゃった」
クロ自身もこの結末をまだ受け止め切れていないのだろう、その声には多分に苦笑いが含まれている。
「お前ほんとにクロなのか!? 生き返ったってことでいいんだよな!」
「まだ消えてはなかったから、正確には生き返りではないかな? でもいやー、まさか消える寸前で、無理やり首根っこを掴まれて引きずり上げられるとは思ってもみなかったよ。感動の別れのシーンだった気がするんだけど、うーんなんとも締まらないねぇ」
相も変わらないその軽口は、間違いなく俺の相棒のそれで――。
「しまらなくたっていいさ……お前がここにいてくれたら俺はそれで――」
「クロちゃん!」
柄にもなく素直な気持ちを伝えようとした俺の言葉尻に被せるようにして、マナカがクロに飛びついた。
マナカはというとよほど感極まっているのか、そのまますりすりとクロにほおずりをしはじめる。
「ま、話す機会はそれこそ、これからいくらでもあるか――」
ちなみに今のマナカを端的に説明すると、道端に四つん這いになって熱烈に猫にほおずりしているアブナイ女子高生だった。
「クロちゃん、クロちゃん!」
「にゃはは、マナカってば、くすぐったいよ」
こうして。
マナカと出会って動き出した俺と相棒クロの物語は、最高のハッピーエンドでもって終幕を迎えたのだった。
最高の相棒に万感の思いを込めて送った俺の言葉は、そっと頬をなでる夜の風に消え入るように流されていって――。
耐えがたい喪失感に胸が満たされ、ただただ感傷に浸っていた俺はしかし、
「クロちゃん…………。やっぱだめーーーーー!!!!」
マナカの大声によってそんな空気は完膚なきまでにぶっ壊されたのだった。
「うぉっ、びっくりしたっ!? なんだよマナカ急に大きな声出して?」
「大きな声くらい出すもん! やっぱりだめだもん! クロちゃんが消えちゃだめだもん!!」
「そうは言ってもな――」
「ダメなものはダメだもん!」
言うが早いかマナカは俺にダイブを敢行、ぎゅっと抱き着いてきた。
マナカのやわらかい胸のふくらみがぎゅむっと俺の身体に押し当てられる。
それはまぁそれとして。
「ごめん、マナカの行動の意味が真剣に分からないんだけどって――うぉっ!?」
俺が驚いたのも仕方のないことだった。
なぜなら俺の身体の中に、マナカの持つ異能の力が強烈に流れ込んできたからだ――!
しかもこれって――、
「剣部の《心剣》が発動してる!? マナカが無理やり俺に力を流し込んで、強制的に発動してるのか!?」
なんと俺の意思とは関係なく剣部の《真なる心剣》――心を繋げた相手の力を己の力として引き抜く――が発動していたのだ!
俺の細胞という細胞が、マナカの燃えるような熱い想いと異能の力で沸き立ってゆく――!
「お願いっっっっっっっっ!! わたしの力が再生の力だっていうなら、お願いだからクロちゃん! 戻ってきて!!」
マナカは俺に抱き着いたまま、その腕にさらに力を込めてぎゅっとぎゅうっと俺を抱きしめてくる。
普通の女子高生をやっているマナカは、異能の力の使いかたなんてもちろん知りはしない。
だからそれは、ただ奇跡を願うだけの祈りにすぎなかった。
だけどそれは、誰よりも何よりも『奇跡』を手繰り寄せようとする、純粋で力強い祈りだったのだ――!
その切なる願いを、俺の中の剣部の《心剣》が余すところなくすくい取ってゆく――!
そうして呼び出された力は、死の淵にいた俺すらも救ってみせた『再生』という最高峰の異能の力であり――、
「――マナカ、君は本当に凄いね。まさか心が繋がったことを逆手にとって、ユウトの《心剣》を勝手に使っちゃうなんて。しかも使い方なんて知らないはずなのに、強い気持ちだけで起動させたときた。長い剣部の歴史でもさすがにこれは初めて、前代未聞のことじゃないかなぁ?」
――そしてその声は、この4年間毎日のように聞いた慣れ親しんだ声だった。
「まったくもう、ほんとマナカは想像の斜め上を突っ走っちゃうんだから」
「――クロ!」「――クロちゃん!」
「あははは、戻ってきちゃった」
クロ自身もこの結末をまだ受け止め切れていないのだろう、その声には多分に苦笑いが含まれている。
「お前ほんとにクロなのか!? 生き返ったってことでいいんだよな!」
「まだ消えてはなかったから、正確には生き返りではないかな? でもいやー、まさか消える寸前で、無理やり首根っこを掴まれて引きずり上げられるとは思ってもみなかったよ。感動の別れのシーンだった気がするんだけど、うーんなんとも締まらないねぇ」
相も変わらないその軽口は、間違いなく俺の相棒のそれで――。
「しまらなくたっていいさ……お前がここにいてくれたら俺はそれで――」
「クロちゃん!」
柄にもなく素直な気持ちを伝えようとした俺の言葉尻に被せるようにして、マナカがクロに飛びついた。
マナカはというとよほど感極まっているのか、そのまますりすりとクロにほおずりをしはじめる。
「ま、話す機会はそれこそ、これからいくらでもあるか――」
ちなみに今のマナカを端的に説明すると、道端に四つん這いになって熱烈に猫にほおずりしているアブナイ女子高生だった。
「クロちゃん、クロちゃん!」
「にゃはは、マナカってば、くすぐったいよ」
こうして。
マナカと出会って動き出した俺と相棒クロの物語は、最高のハッピーエンドでもって終幕を迎えたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる