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第3章

第53話「はぁ……だめだこりゃ。魔王さまにまさかこんなニブチンなところがあったなんてねぇ……」

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「内緒って、おいおい。今この場は情報共有の場だろ? ルミナの意図が分かっているなら、俺にも共有するべきじゃないか?」

 俺は至極まっとうな正論を言ったはずなのだが、

「いいや、違うねぇ。こればっかりは他人からじゃなくて、自分で気付かないといけないのさ」

 星奈先輩はどこかあきれた様子で言葉を返してきた。

「だからここは情報共有の場だろ? 分かっていることは話すべきだ」

「はいはい、コレはそういうのじゃないから。別に大事おおごとじゃないし、分からないっていうなら今は気にしなくていいのさ」

「そうなのか」

「……いや、ある意味、大事なのかな?」
「どっちなんだよ?」

「そうだよねぇ。もしかしたら2人がこの先ずっと一緒になる可能性もあるわけだし」

「おいおい。俺がルミナとずっと一緒にいるわけがないだろ。この悪夢の高校生活さえ乗り切ったら、別の大学にでも行ってそれでルミナとはお別れ。俺の逃げ切り勝ちだ」

「はぁ……だめだこりゃ。あの頭脳明晰な切れ者の魔王さまに、まさかこんなニブチンなところがあったなんてねぇ……」

 星奈先輩が、これみよがしに盛大なため息をついた。

「マジで意味が分からないんだが? 会話は言葉のキャッチボールだぞ。ちゃんと俺がキャッチできるボールを投げてくれよな?」

「魔王さまはキャッチボールの前に、ボールの握り方から覚えないといけないんだよね」

 どうやら俺は、この件に関して会話以前の状態にあるらしい。
 まったくそんなつもりはないんだが、うーむ……。

 まあ?
 大事じゃないらしいし?
 今はいったん棚上げしておこう。
 今はそれよりも大事な話があるしな。

「悪い、話がだいぶ逸れたな。話を元に戻すが、星奈先輩のほうはどれくらい戦えるんだ? まさかロゼッタみたいに記憶だけ戻ったってことはないよな?」

 これはマストで確認しないといけない事項だ。

「一応、魔力は使えるよ。なるべく使わないようにはしているけどね」

「OK、賢明な判断だよ。いつどこで勇者ルミナスやその仲間たちに見られているか分からないからな」

「勇者ルミナスが遊佐ルミナちゃんだとして、勇者ルミナスの仲間たちもこの世界に転生しているのかな?」

「そこまでは俺にも分からない。だが最悪の事態を想定して行動するべきだと、思っている。死んでから後悔はできないからな」
「同感だね」

「でも星奈先輩に魔力があるのは僥倖ぎょうこうだな。いざって時には頼りにさせてもらうぞ」

 なにせかつての魔王四天王の1人だ。
 戦力としては申し分ない――とおもったのだが。

「それなんだけど。魔力は使えるけど、全盛期と比べると正直、全然ダメだね」
「なっ、そうなのか?」

「鬼族は角がないと魔力の半分も出せないってのは、魔王さまも知っているよね?」
「もちろんだ」

 鬼族=角と言っても過言ではないほどに、鬼族という種族を端的に表すのが角である。
 それは鬼族の強大な魔力の源泉でもあり、ゆえに角を失った鬼族はその力を大きく喪失してしまう。

(とはいえ鬼族の角はそれはもう頑丈で、並大抵の攻撃ではかすり傷一つ付きはしないのだが)

「だけど人間にはそもそも角が存在しない。アタシの場合はその時点で詰んでるんだよねぇ。実質、角なしの鬼。だからよくて全盛期の3割ってところかなぁ」

「そういうことか。よくて3割……勇者ルミナスの転生体を相手にするには、とてもじゃないが戦力としては計算できないな」

「魔王さまの力になれなくて、悪いね」

 っと、しまった。
 そんなつもりはなかったんだが、星奈先輩を責めるような口調になってしまっていた。

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