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第3章

第54話「そんな普通の感受性があるのに、アレには気付けないんだねぇ……まぁ相手が相手だから仕方ないかぁ……」

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「俺の方こそ悪い。今のは単に事実の確認をしただけで、星奈先輩を責めたわけじゃないんだ」

 俺は謝罪の言葉とともに、星奈先輩に軽く頭を下げた。

「あはは、分かっているよ。それにしても、なんとも不思議な感じがするねぇ」

「不思議な感じ?」

「魔王さまは雰囲気が穏やかになったよね。前世の時はもっとピリピリしていたし、ギラギラしていた。常に剥き身の、研ぎ澄まされた刃って感じだったよ?」

「俺が先頭に立って、人間との大戦争を引き起こしたんだ。そりゃピリピリもギラギラもするさ」

 魔族と人間の大戦争は、泥沼の総力戦となったのもあって、両陣営ともにおびただしい数の死傷者を出した。
 当時の俺は心が荒むことはあっても、穏やかな気持ちになることなど、とてもじゃないが出来はしなかった。

「でもそういう真面目なところは、少しも変わってないねぇ。前の孤高の覇王って感じも悪くなかったけど。うん、今の魔王さまもすごく素敵だよ」

「そ、そうかよ」

 星奈先輩はとても美人だ。
 そんな美人先輩から「とても素敵」と言われると、俺の高校生なところが意思とは関係なく反応してしまうのだった。

「おやおや? 顔が赤いみたいだけど、どうしたんだい魔王さま?」

 星奈先輩が人差し指で、俺の頬をつんつんとつついてくる。

「ほっといてくれ。今の俺は高校生なんだ。美人の先輩から褒められると、意思とは無関係に心が反応しちまうんだよ」

「そんな普通の感受性があるのに、アレには気付けないんだねぇ……まぁ相手が相手だから仕方ないかぁ……」

 星奈先輩が何事かつぶやいたが、あまりに小声だったので俺は聞きとることができなかった。
 おそらく独り言だったのだろうと判断する。

「ま、この世界じゃ魔力なんてものは使わなくても生きていける。ルミナのことは俺に任せてくれ。なんとか乗り切ってみせるからさ」

 事実、星奈先輩は魔力なんて使わずに、人間としての実力のみで生徒会副会長という要職についている。

 この世界で生きていくなら、魔力や武力は必要ない。
 もちろん「ルミナ=勇者ルミナスの転生体さえいなければ」という前提なのだが、勇者については俺が率先して引き受ければ何の問題もない。

 元はと言えば――勇者ルミナスに妨害されたからとはいえ――俺の転生魔法が暴走したせいでこんな状況になってしまったのだ。

 巻き込まれてこの世界に転生してしまった星奈先輩やロゼッタを守るのは、俺に与えられた責務だろう。

「そう言ってもらえると助かるね。代わりと言ってはなんだけど、生徒会副会長としてのサポートは最大限するから、そっちは任せて欲しいかな」

「それこそめちゃくちゃ頼りになるっての。うちの高校の生徒会は、かなり力があるって聞いてるぞ?」

「そうだね。部活や同好会の生殺与奪を握っている──くらいには力があるかなぁ」

「そりゃ相当なもんだな。そんな強力な生徒会の副会長が最大限のサポートをしてくれるなら、これから先やりやすくなるのは間違いない」

「時々、同好会にも顔も出させてもらうよ。せっかく魔王さまがいるんだからね。同好会の会員になるのもいいかもしれない」

「悪くないな。俺も星奈先輩がいてくれたら心強いし。けどいきなりはルミナに怪しまれるかもしれないから、そうだな……最初は体験参加あたりでどうだ? 今日の生徒会監査で、魔会の活動に興味を持ったことにするんだ」

「さすが魔王さま。まさに立て板に水。水が上から下へと流れるかのように、パッパとアレコレ思いつくもんだねぇ」

 星奈先輩が小さく苦笑した。
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