164 / 214
第10章

第162話「ムリムリムリムリかたつむりよ!」

しおりを挟む
「この辺りの山岳地帯って、岩山ばっかりで足場が悪すぎだろ。道なき道だし仮にあっても細いしさ」

 しかもどこもかしこも脆くて崩れやすいときた。
 だから歩くだけでも大変だ。

 さらにもう一つ。
 標高の割に異常に空気が薄く乾燥していて、すぐに息が上がってしまうのだ。
 これがダブルパンチでキツかった。

「この辺りの山はどれも休眠中の火山みたいね。だから溶岩が固まった火山岩ばかりで崩れやすい地形なんだと思うわ」

「ぜぇ、ぜぇ……はぁ、はぁ……」

 シャーリーの見立てに、俺は無言で頷いた。
 完全に同意見ではある。
 あるんだけど。
 でももう疲労の度合いが濃すぎて、歩きながらだと返事をするのもしんどいんです……。

 ちなみに俺は完全に手ぶらだった。
 俺の荷物は全部サクラが持ってくれている。

 全職業でも断トツトップの驚異的な回復スキルである『自己再生』を持ち、文字通り疲れ知らずのバーサーカーの力を完全に使いこなせるようになったサクラは、戦闘時だけでなく移動時の荷物持ちとしても非常に優秀だった。

 さすがレベル50越えのバーサーカーだな。
 育ちさえすれば魔法戦士と並ぶ最優遇上位職といわれるだけのことはある。

 逆に、たった1つのバフ以外に何の補助スキルも持たないバッファーの俺は、手ぶらで身軽でありながら、他のパーティメンバーの移動力に完全についていけていなかった。

 歩いて移動するだけで足を引っ張る。
 最不遇職バッファーの異名は伊達ではない。

「はぁ、はぁ……、はぁ、はぁ……」

「ケースケ様、もう少し歩くペースを落としましょう」

 地元の猟師さんに描いてもらった地図を片手に先頭を歩いていたアイセルが、見かねて立ち止まると心配そうに俺の方を振り向いた。

「いいや、もうかなりペースダウンしてもらっているのに、ここからさらにペースを落とすのは絶対にダメだ。ぜぇ、はぁ……持ってきた食料にも限りがあるし、目的の古代神殿遺跡までたどり着けなくなる。はぁ、はぁ……最低でもこのペースは維持しないと」

 先頭のアイセルが止まったことでパーティ全体も停止し、なので俺は膝に手を置いて身体を支えながら、喉から絞り出すように答えた。

「ですがケースケ様はそろそろ限界ではないかと思います」

「それはそうだけどさ……」

「うんうん、私もそう思うし。ケイスケはもう無理! ムリムリムリムリかたつむりよ!」

「うぐ――っ」

 俺はよほど疲れて見えるんだろう。
 アイセルに続いてサクラからも強烈にダメ出しを喰らってしまい、俺はぐうの音も出なかった。

 それにしてもいくら歩くのが遅いからって「かたつむり」は酷いだろ。
 これでも俺、一生懸命歩いてるのに……。

「でもホントものすごい悪路よね。冒険者じゃない普通の専門家が調査に向かうのが厳しいって話にも納得だわ。足を滑らせでもしたら崖下まで滑落しちゃうし」

「空気も薄いしね!」

「――ってことで、ここは秘密兵器の出番かな?」

「秘密兵器?」

 シャーリーの言葉に俺は首を傾げた。

「実はね、こんなこともあろうかと思って事前に用意していたのよ。サクラ、例のアレを出してくれる?」

「はーい!」

 サクラは元気よく返事をすると、背負っていた身体よりもでかいリュックを一旦降ろすと、テントの支柱を取り出してリュックの上になにやらいい感じに取り付け始めた。

 そうして出来上がったのは――、

「これって――簡易のイスか? ってことはまさか俺がここに座って、サクラにおんぶしてもらうってことか?」

「正解、さすがケイスケ! 足は遅いけど頭の回転は速いね!」

 サクラがとてもいい笑顔でグッと親指を立てる。

「だからお前はイチイチ一言多いんだっての……」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

見上げた空は、今日もアオハルなり

木立 花音
青春
 ──私の想いは届かない。私には、気持ちを伝えるための”声”がないから。  幼馴染だった三人の少年少女。広瀬慎吾(ひろせしんご)。渡辺美也(わたなべみや)。阿久津斗哉(あくつとおや)。そして、重度の聴覚障害を抱え他人と上手くうち解けられない少女、桐原悠里(きりはらゆうり)。  四人の恋心が激しく交錯するなか、文化祭の出し物として決まったのは、演劇ロミオとジュリエット。  ところが、文化祭の準備が滞りなく進んでいたある日。突然、ジュリエット役の桐原悠里が学校を休んでしまう。それは、言葉を発しない彼女が出した、初めてのSOSだった。閉ざされた悠里の心の扉をひらくため、今、三人が立ち上がる!  これは──時にはぶつかり時には涙しながらも、卒業までを駆け抜けた四人の青春群像劇。 ※バレンタイン・デイ(ズ)の姉妹作品です。相互にネタバレ要素を含むので、了承願います。 ※表紙画像は、ミカスケ様にリクエストして描いて頂いたフリーイラスト。イメージは、主人公の一人悠里です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...