6 / 64
第6話 ライオネル・クリムゾンレッド・ブリスタニア(下)
しおりを挟む
って、やばいやばいやばい!
真剣にやばい!
くはーー!?とかはにゃーん!とか、アホなこと思ってる場合じゃないよ!
すぐに謝らないと!
だって相手は上級貴族どころか、王子さま=王族だったんだよ!?
わたし今、王族を一瞬呼び捨てにしちゃったんだよ!?
「し、知らぬこととはいえ、御名を呼び捨てにするなどと不敬極まりない行為をしてしまい、大変申し訳ありませんでした。伏してお詫びいたしますので、どうかお許しください、ライオネル殿下」
わたしは、馬車の中で正座すると、そのままがばっと勢いよく頭を下げた。
床におでこをこすりつける。
不敬罪という言葉が頭をよぎった。
王族に対する不敬罪は、どこの国でもたいてい死罪だ。
わたしは必死にごめんなさいをしたんだけど――、
「まずは顔をあげて? ボクはちゃんと顔を見て話したいから」
面を上げろと言われたので、わたしは素直に顔をあげた。
「それに『殿下』はいらないよ。ボクがクレアと呼ぶように、クレアもボクのことをライオネルと、今まで通り呼んで欲しいかな」
「で、ですが、ライオネル殿下は、身分尊き王族ですので――」
「それでも『殿下』はいらないよ。クレアからそんな他人行儀な呼び方をされると、ボクは少し悲しいな」
ライオネルが、本当に悲しそうな目をして言った。
どうもこれは本心から言ってるっぽい。
「それでは、えっと、ライオネル……?」
わたしは上目づかいで、小さな声で呼んでみた。
すると、ライオネルはニコッと笑顔になる。
ステキな笑顔につられて、わたしも笑顔になった。
「クレアはくるくると表情が変わって、見ていて飽きないね」
「えっと、はい、ありがとうございます……」
バカにされてるようにもとれるけど、これはきっと褒めてくれている。
わたしの巫女としての直感が、そう告げていた。
ライオネルは王族だっていうのに、庶民にも気さくな、どこまでも性格のいい好青年みたいだった。
「ところでクレアはなぜ、ブリスタニアとの国境沿いに? 見たところ、旅でもしているようだけど」
「えっとそれは――」
シェンロンを追放されたとは言いにくいな……でも、こんないい人にウソをつくのはいけないよね。
誠意には誠意で応えないと、だよね。
そう思ったわたしは、だから事のいきさつを、ウソ偽りなくすべて話すことにした。
「わたしがここにいるのは、実は――」
・サポート役と思われてるけど、実は聖女として働いていたのは自分だったこと。
・シェンロンが財政難で、リストラされたこと。
・しかも国まで追放されて行く当てがなく、とりあえず隣国のブリスタニアに行こうとしていたこと。
・もう一人の神龍の巫女バーバラは、巫女の力がないこと。
・そして、それらすべてがバーバラの策略だったこと。
わたしは包み隠さず、全てを話したんだ。
庶民のわたしの言うことでも、ライオネルなら少しは信じてくれるかもって、そんな風に思ったから。
でも――、
「なんて酷いことをするんだ……こんなにも努力しているクレアを、いきなりリストラするなんて。クレアがこんな酷い仕打ちを受ける理由が、どこにあると言うんだ」
ライオネルは「少し」どころか「一切合切」信じてくれたんだ。
それはもう、気持ちいいくらいに信じてくれたのだ。
「えっと、わたしの言うことを信じてくれるんですか? 庶民なんですよ?」
「ウソをつくのは身分じゃないさ。貴賤にかかわらず、ウソつきはいるからね。その人の穢れた人間性が、ウソをつかせるんだ。少なくとも、ボクが王宮で見かけた健気にがんばるクレアは、ウソをつくような人には見えなかったよ」
ライオネルは、真っ白な歯をキラリーンとさせてそう言った。
「あ、ありがとうございます……」
ううっ、さすが王子さま、カッコイイ……って、見とれてる場合じゃなくて!
「ところで、ライオネル殿下――じゃなくてライオネルは、どうしてここにいるんですか? シェンロンに用事でもあったんですか?」
わたしはそれが気になっていた。
ライオネルは、お供も連れずに1人だったから。
どうも神龍国家シェンロンに、馬で急いで向かってたっぽいけど……。
真剣にやばい!
くはーー!?とかはにゃーん!とか、アホなこと思ってる場合じゃないよ!
すぐに謝らないと!
だって相手は上級貴族どころか、王子さま=王族だったんだよ!?
わたし今、王族を一瞬呼び捨てにしちゃったんだよ!?
「し、知らぬこととはいえ、御名を呼び捨てにするなどと不敬極まりない行為をしてしまい、大変申し訳ありませんでした。伏してお詫びいたしますので、どうかお許しください、ライオネル殿下」
わたしは、馬車の中で正座すると、そのままがばっと勢いよく頭を下げた。
床におでこをこすりつける。
不敬罪という言葉が頭をよぎった。
王族に対する不敬罪は、どこの国でもたいてい死罪だ。
わたしは必死にごめんなさいをしたんだけど――、
「まずは顔をあげて? ボクはちゃんと顔を見て話したいから」
面を上げろと言われたので、わたしは素直に顔をあげた。
「それに『殿下』はいらないよ。ボクがクレアと呼ぶように、クレアもボクのことをライオネルと、今まで通り呼んで欲しいかな」
「で、ですが、ライオネル殿下は、身分尊き王族ですので――」
「それでも『殿下』はいらないよ。クレアからそんな他人行儀な呼び方をされると、ボクは少し悲しいな」
ライオネルが、本当に悲しそうな目をして言った。
どうもこれは本心から言ってるっぽい。
「それでは、えっと、ライオネル……?」
わたしは上目づかいで、小さな声で呼んでみた。
すると、ライオネルはニコッと笑顔になる。
ステキな笑顔につられて、わたしも笑顔になった。
「クレアはくるくると表情が変わって、見ていて飽きないね」
「えっと、はい、ありがとうございます……」
バカにされてるようにもとれるけど、これはきっと褒めてくれている。
わたしの巫女としての直感が、そう告げていた。
ライオネルは王族だっていうのに、庶民にも気さくな、どこまでも性格のいい好青年みたいだった。
「ところでクレアはなぜ、ブリスタニアとの国境沿いに? 見たところ、旅でもしているようだけど」
「えっとそれは――」
シェンロンを追放されたとは言いにくいな……でも、こんないい人にウソをつくのはいけないよね。
誠意には誠意で応えないと、だよね。
そう思ったわたしは、だから事のいきさつを、ウソ偽りなくすべて話すことにした。
「わたしがここにいるのは、実は――」
・サポート役と思われてるけど、実は聖女として働いていたのは自分だったこと。
・シェンロンが財政難で、リストラされたこと。
・しかも国まで追放されて行く当てがなく、とりあえず隣国のブリスタニアに行こうとしていたこと。
・もう一人の神龍の巫女バーバラは、巫女の力がないこと。
・そして、それらすべてがバーバラの策略だったこと。
わたしは包み隠さず、全てを話したんだ。
庶民のわたしの言うことでも、ライオネルなら少しは信じてくれるかもって、そんな風に思ったから。
でも――、
「なんて酷いことをするんだ……こんなにも努力しているクレアを、いきなりリストラするなんて。クレアがこんな酷い仕打ちを受ける理由が、どこにあると言うんだ」
ライオネルは「少し」どころか「一切合切」信じてくれたんだ。
それはもう、気持ちいいくらいに信じてくれたのだ。
「えっと、わたしの言うことを信じてくれるんですか? 庶民なんですよ?」
「ウソをつくのは身分じゃないさ。貴賤にかかわらず、ウソつきはいるからね。その人の穢れた人間性が、ウソをつかせるんだ。少なくとも、ボクが王宮で見かけた健気にがんばるクレアは、ウソをつくような人には見えなかったよ」
ライオネルは、真っ白な歯をキラリーンとさせてそう言った。
「あ、ありがとうございます……」
ううっ、さすが王子さま、カッコイイ……って、見とれてる場合じゃなくて!
「ところで、ライオネル殿下――じゃなくてライオネルは、どうしてここにいるんですか? シェンロンに用事でもあったんですか?」
わたしはそれが気になっていた。
ライオネルは、お供も連れずに1人だったから。
どうも神龍国家シェンロンに、馬で急いで向かってたっぽいけど……。
13
あなたにおすすめの小説
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~
アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」
突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!
魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。
「これから大災厄が来るのにね~」
「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」
妖精の声が聞こえる私は、知っています。
この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。
もう国のことなんて知りません。
追放したのはそっちです!
故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】
小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。
しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。
そして、リーリエルは戻って来た。
政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
【完結】婚約破棄と追放された聖女は、国を出て新国家を作っていきます〜セッカチな殿下の身勝手な行動で国は崩壊しますが、もう遅いです〜
よどら文鳥
恋愛
「聖女レレーナよ、婚約破棄の上、国から追放する」
デイルムーニ王国のために政略結婚しようと言ってきた相手が怒鳴ってくる。
「聖女と言いながら未だに何も役に立っていない奴など結婚する価値などない」
婚約が決まった後に顔合わせをしたわけだが、ドックス殿下は、セッカチで頭の中もお花畑だということに気がつかされた。
今回の婚約破棄も、現在他国へ出張中の国王陛下には告げず、己の考えだけで一方的に言っていることなのだろう。
それにドックス殿下は肝心なことを忘れている。
「婚約破棄され国を出るように命令されたことは、お父様に告げることになります。そうなると──」
「そういう話はいらんいらん! そうやって私を脅そうとしているだけだ」
次期国王になろうとしているくせに、お父様がどれだけ国に納税しているか知らないのか。
話を全く聞かない殿下に呆れ、婚約破棄をあっさりと承認して追放されることにした。
お父様に告げると、一緒に国を出て新国家を創り出そうと言われてしまう。
賛同する者も多く、最初から大勢の人たちと共に移民が始まった。
※タイトルに【ざまぁ】と書いてあるお話は、ざまぁパートへの視点変更となります。必ずざまぁされるわけではありませんのでご了承ください。
聖女を追放した国が滅びかけ、今さら戻ってこいは遅い
タマ マコト
ファンタジー
聖女リディアは国と民のために全てを捧げてきたのに、王太子ユリウスと伯爵令嬢エリシアの陰謀によって“無能”と断じられ、婚約も地位も奪われる。
さらに追放の夜、護衛に偽装した兵たちに命まで狙われ、雨の森で倒れ込む。
絶望の淵で彼女を救ったのは、隣国ノルディアの騎士団。
暖かな場所に運ばれたリディアは、初めて“聖女ではなく、一人の人間として扱われる優しさ”に触れ、自分がどれほど疲れ、傷ついていたかを思い知る。
そして彼女と祖国の運命は、この瞬間から静かにすれ違い始める。
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる