60 / 67
最終章
第58話 宣誓
しおりを挟む
「これだけご迷惑をおかけしたというのに、今さら戻れませんわ……」
「まだそんなことを言うのか? 君は俺に、君以外の女と結婚して子を為せというのか? そのために愛もなく君以外の女を抱く悲しみを味わえというのか?」
「わたし……は……」
「それにその子はどうなる。その子にも幸せになる権利が、父親と過ごす権利があるはずだろう」
「それは……」
「その子に父親が誰かも知らせずに一生を過ごさせるのか? その子の父親が俺であると君は知りながら決して伝えず、その子から父親を取り上げたままでいるというのか?」
「……」
「誰もが持つはずの父親に愛される権利を、君はその愛しい我が子から奪おうというのか? それが本当に正しいことだと、子供のためだと。君は心の底から思っているのかい?」
「――っ」
「俺は今でも変わらず君を愛している。そして俺と君との間に生まれたその子のことも当然愛している。王家の血を引いているからではない。俺と君との子だからだ。君は君自身だけでなく、俺の子までも俺から取り上げようというのだろうか。それはあまりに酷というものではないか?」
「で、ですが……この国を守るには、この国に住まう民を守るためには、私がジェフリー王太子殿下の隣にいてはいけないのです……」
「誰に何を吹き込まれたかは知らんが、ふん! 今から言うことをよく聞くんだなミリーナ!」
「は、はい!」
そのジェフリー王太子の威勢の良さにミリーナはびっくりしてしまい。
大きな声で返事をするとともに、ずっとうつむき気味だった視線が上がってジェフリー王太子の目へと固定された。
そしてミリーナと視線が絡まったことをしっかりと確認してから、ジェフリー王太子は高らかに歌い上げるように宣誓した!
「たった1人の愛しい君すら守ることができずに! それでこの国も、この国に住まう民たちも守れるはずがないだろうが!」
「ぁ……」
「ミリーナ、俺はかつて君を妻にすると言ったはずだ。そしてこれは確定事項だとも言ったはず」
「……確かに仰いました」
「よって君は俺の妻になるのだ。そして俺はそのために、君に降りかかる火の粉から君を守り抜き、もちろん国も民も何もかもを君と同じくらいに幸せにしてみせる。それが俺が作り上げる国の在り方だと、俺が作る国の形だと! 今ここに宣誓しよう!」
「私は、私は……」
「ミリーナ、君は俺の妻だ。これは既に確定事項であり、この事もはや拒否することは許さん。俺の隣にいろミリーナ。それが君の務めだ」
「う、ぁ……うぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
3年が過ぎてなお変わらぬままのジェフリー王太子の鮮烈なる愛の言葉を聞き。
また同時に愛しき我が子の将来を思ってついに泣き崩れたミリーナを、ジェフリー王太子が力強く抱きとめる。
幼い我が子ともども、ミリーナを強く強く抱きしめたのだった。
「俺の隣が君の居場所だ。いや俺の隣は君以外にはありえない。いい加減に帰ってこい」
「はい、ジェフリー王太子殿下……」
3年前より少したくましくなったジェフリー王太子の腕の中で、3年前と変わらぬようにミリーナが大きく頷いた。
「おいおいミリーナ、さっきからのそれはどういうことなんだ?」
しかしジェフリー王太子はなぜかたいそう不満そうな顔を見せたのだ。
「ええっと、何がでしょうか?」
「3年ぶりの再会だというのに、その他人行儀な呼び方はやめて欲しいものだな」
「そうですわね……では改めてジェフリー。私はあなたを一生愛し続けるとここに誓います。もう2度と、何があっても、あなたから離れようとは致しません」
「俺もだよミリーナ。君を一生愛し続けるとここに誓おう」
「ジェフリー」
「ミリーナ」
2人は互いに互いの名を愛おしそうに呼ぶと、どちらからともなく口づけを交わした。
その3年ぶりとなる口づけは、2人の心を再び強く強く結びつけたのだった――。
「まだそんなことを言うのか? 君は俺に、君以外の女と結婚して子を為せというのか? そのために愛もなく君以外の女を抱く悲しみを味わえというのか?」
「わたし……は……」
「それにその子はどうなる。その子にも幸せになる権利が、父親と過ごす権利があるはずだろう」
「それは……」
「その子に父親が誰かも知らせずに一生を過ごさせるのか? その子の父親が俺であると君は知りながら決して伝えず、その子から父親を取り上げたままでいるというのか?」
「……」
「誰もが持つはずの父親に愛される権利を、君はその愛しい我が子から奪おうというのか? それが本当に正しいことだと、子供のためだと。君は心の底から思っているのかい?」
「――っ」
「俺は今でも変わらず君を愛している。そして俺と君との間に生まれたその子のことも当然愛している。王家の血を引いているからではない。俺と君との子だからだ。君は君自身だけでなく、俺の子までも俺から取り上げようというのだろうか。それはあまりに酷というものではないか?」
「で、ですが……この国を守るには、この国に住まう民を守るためには、私がジェフリー王太子殿下の隣にいてはいけないのです……」
「誰に何を吹き込まれたかは知らんが、ふん! 今から言うことをよく聞くんだなミリーナ!」
「は、はい!」
そのジェフリー王太子の威勢の良さにミリーナはびっくりしてしまい。
大きな声で返事をするとともに、ずっとうつむき気味だった視線が上がってジェフリー王太子の目へと固定された。
そしてミリーナと視線が絡まったことをしっかりと確認してから、ジェフリー王太子は高らかに歌い上げるように宣誓した!
「たった1人の愛しい君すら守ることができずに! それでこの国も、この国に住まう民たちも守れるはずがないだろうが!」
「ぁ……」
「ミリーナ、俺はかつて君を妻にすると言ったはずだ。そしてこれは確定事項だとも言ったはず」
「……確かに仰いました」
「よって君は俺の妻になるのだ。そして俺はそのために、君に降りかかる火の粉から君を守り抜き、もちろん国も民も何もかもを君と同じくらいに幸せにしてみせる。それが俺が作り上げる国の在り方だと、俺が作る国の形だと! 今ここに宣誓しよう!」
「私は、私は……」
「ミリーナ、君は俺の妻だ。これは既に確定事項であり、この事もはや拒否することは許さん。俺の隣にいろミリーナ。それが君の務めだ」
「う、ぁ……うぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
3年が過ぎてなお変わらぬままのジェフリー王太子の鮮烈なる愛の言葉を聞き。
また同時に愛しき我が子の将来を思ってついに泣き崩れたミリーナを、ジェフリー王太子が力強く抱きとめる。
幼い我が子ともども、ミリーナを強く強く抱きしめたのだった。
「俺の隣が君の居場所だ。いや俺の隣は君以外にはありえない。いい加減に帰ってこい」
「はい、ジェフリー王太子殿下……」
3年前より少したくましくなったジェフリー王太子の腕の中で、3年前と変わらぬようにミリーナが大きく頷いた。
「おいおいミリーナ、さっきからのそれはどういうことなんだ?」
しかしジェフリー王太子はなぜかたいそう不満そうな顔を見せたのだ。
「ええっと、何がでしょうか?」
「3年ぶりの再会だというのに、その他人行儀な呼び方はやめて欲しいものだな」
「そうですわね……では改めてジェフリー。私はあなたを一生愛し続けるとここに誓います。もう2度と、何があっても、あなたから離れようとは致しません」
「俺もだよミリーナ。君を一生愛し続けるとここに誓おう」
「ジェフリー」
「ミリーナ」
2人は互いに互いの名を愛おしそうに呼ぶと、どちらからともなく口づけを交わした。
その3年ぶりとなる口づけは、2人の心を再び強く強く結びつけたのだった――。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる