俺が恋愛不感症になったわけ。「恋愛なんてしょせんは人類が子孫を残すための付随行為に過ぎないだろ?」

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第三章 小鳥遊加恋

第34話『氷結のオレ様(アイス・オーレ)』

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「シュート? シュートってば? 急に黙りこんじゃって、どうしたの?」

 加恋の呼ぶ声で、オレは『中学1年の冬』思い出から『現実』へと意識を戻した。
 加恋が心配そうな顔を向けてきている。

「ああ、いや……なんでもない」
 俺は小さく笑って誤魔化した。

「なんでもないって……。話しかけても返事は返ってこないし」
「クレープって久しぶりだなって、懐かしんでたんだよ」

 嘘ではない。
 その他にもいろいろと思うところはあったのだが、それについては言及していないだけだ。

「その割に、なんか変な顔をしてたけど?」
「変って、失礼な奴だな。親からもらった大切な顔なんだぞ」

 これ幸いと、茶化して話を逸らしにかかる俺。

「シュートの顔はカッコいい方でしょ? そうじゃなくて。幸せそうなんだけど、でも辛そうにも見えなくもない、そんな感じだったっていうか?」

「なんだよそれ? 幸せと辛いじゃ正反対じゃないか。結局どっちなんだよ?」

「だからどっちも?」
「どっちもって……」

 困惑する俺に、加恋は人差し指だけをピンと立てた右手を口元に持ってきながら、少し考える素振りを見せると、言った。

「なんて言うのかなー、感情的だったっていうか? ん~……、でもよくわかんないかもぉ? あ、そういえば『幸せ』と『辛い』って漢字で書くとそっくりだよね。あはっ♪」

 思案顔から一転。
 どうでもいいことを言いながら、いつもの人好きのする笑顔を向けてくる加恋。

「……」

 しかしその本質に触れた指摘に、俺は思わず黙り込んでしまった。

 本来の『俺』が出てきそうになると、どうしても『オレ』の存在は薄くなる。
 さっきもそうだった。
 そして『俺』は喜怒哀楽が大きい、かなり感情的な人間だ。

 つまり加恋は今の一瞬で、『俺』が出てきかけていたのを見抜いたのだ。
 恐ろしい観察眼だった。

 やはり加恋は警戒しないといけない。
 きっとよくないことが起きる。

 ――なんてオレは真剣に思っていたのだが。

「いつものクールな『氷結のオレ様(アイス・オーレ)』も悪くないけどぉ、情熱的な顔はすっごく良くて、思わずドキッとしちゃったぁ♪」

「アイス・オーレ? ――って、直訳すると冷たい牛乳のことだよな?」

 加恋の口から飛び出たその謎すぎる言葉に、俺は再び困惑の滝底に叩き落されてしまった。

「んーとね。ちょっと違っててー。『氷結のオレ様』って書いて『アイス・オーレ』。シュートのあだ名。女子はシュートのことそう呼んでるよー」

「……は? ……え?」

 なに?
 どゆこと?

「どうどう、めっちゃ上手くない?」
 加恋が自慢げな顔で言った。

「頼むからやめてくれ」

 ある程度は何と呼ばれようと気にはしない。
 だが、さすがに『氷結のオレ様(アイス・オーレ)』はないだろう????

「やだ」
 俺の懇願はしかし、即答で拒否られてしまった。

「やだって……」

「だってぇ、せっかくアタシ史上最高に上手いのを考えたんだもーん」
「犯人お前かよ? いや、そんな気はしたんだけどな」

 高校入学2日目はまだまだ人間関係の構築段階。
 ゆえに異性をあだ名で呼ぶにはタイミングが早すぎる。

 できるとしたら強い影響力のある人間だけだ。
 例えばクラス女王の加恋のような。

 以上、証明終わりQ.E.D

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