俺が恋愛不感症になったわけ。「恋愛なんてしょせんは人類が子孫を残すための付随行為に過ぎないだろ?」

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第三章 小鳥遊加恋

第38話 視線の先は――

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「どうしたんだ? 知り合いでもいたのか?」

 あらぬ方向――明らかにオレではない誰か or 何かを注視していた加恋の視線の先が気になって、オレは座ったままで振り向いたものの、特に何か気になるものを見つけることはできなかった。

「ううん、なんでもないよーん」
 加恋がにぱーと笑ったのを見て、

「そうか」
 オレは答えると、残り少なくなったクレープを食べ始めた。
 うん、うまい。

「あれ? 誰がいたか、シュートは気にならないのぉ?」
 そんなオレに、加恋が妙に嬉しそうな顔で尋ねてくる。

「気にならないと言えば嘘になるが、しつこく問いただしてまで知りたいってほどでもないかな。高校の近場の繁華街なら、知り合いくらいいるだろうし」

 加恋の言い方から察するに、オレと加恋の共通の知り合い――おそらくはクラスメイトの誰かがいたに違いない。

 しかも声がやたらと弾んでいるので、コイバナ絡みの可能性が大だ。
 恋愛脳ってのは、コイバナをする時にやたらとテンションが上がるものだからな。

 となれば、例えばクラスメイトが男女で一緒にいたとか、どうせそんな話だろうよ。

「やっぱりクールぅ♪」

 とまぁそんな感じで、オレと加恋は一緒にクレープを食べ。
 ごちそうさまをした後は、

「ねぇねぇ、今からちょっとだけモールのお店を見ていかなぁい?」
「せっかくここまで出てきたしな。ちょっとくらいならいいぞ」

 加恋があちこちウインドウショッピングするのに、オレは『最後まで』付き合った。

 加恋は次から次へと話題を提供してくるし、なにより話の間合いの取り方が絶妙で、オレは帰るタイミングを完全に逸してしまったのだ。

 加恋のトーク力はマジ半端なかった。
 こっちの懐に入るのが本当に上手い。
 おかげで昔はゲーマーだったとか、背が低かったとか、いろんなことを話してしまった。

 もちろん加恋のこともいろいろ聞かされた。

「アタシ、身長が低すぎて大人っぽい服が似合わないからぁ、もう少し背が高くなりたいんだよねー」
「たしかに大人っぽいのより、可愛い系の方が似合いそうだよな」

「でしょでしょ? せめてあと5センチあったらなー。そしたらヒールで誤魔化せるのに」
「でも可愛い系が似合うなら、それはそれでいいんじゃないか? それも個性だろ?」

「もう高校生だし、大人っぽいのも着たいんだもぉん。ねぇねぇ、シュートって身長がすごく伸びたって言ってたよね? いい方法あったら教えてよ?」

「オレがやったのは毎日欠かさず牛乳を飲んで、毎日欠かさず筋トレして、時々ランニングだな」
「無・理♪」

 仲良くなり始めの友人がするような、本当に他愛もない話だ。
 これで時々出てくるどうでもいいコイバナさえなければ、いい友人になれそうなんだがな。

 天は二物を与えず、か。



 そしていい時間になったので解散となる。

「ごめんね、遅くまで付き合わせちゃって。つい楽しくてぇ、気付いたらこんな時間になっちゃってた」

 駅で電車を待つ間に、加恋が申し訳なさそうに手を合わせた。

「うちはそんなに門限がうるさくないから問題ないよ」

「だったらよかった♪ ちなみに、シュートも楽しかった?」
「普通に楽しかったぞ」

「普通かぁ――」
 加恋が小さく苦笑する。

 楽しませようとしてくれていた加恋に対して、今のは失礼だった――友達としての礼儀を欠いている。

「悪い。普通ってのは言葉の綾で。つまりとても楽しかったって意味だ。訂正する」
「ならばよしっ♪」

 言い直したオレに、加恋は笑顔とともに右手でサムズアップをする。

 こうしてオレと加恋の放課後デートは、特に何があるわけでもなく、いたって普通に幕を閉じた――
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