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第四章 揺れる想い
第50話 くっつく加恋と、おどおど夏美
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「あ、ああ……加恋か」
「加恋か、じゃないよぉ! もぅ、シュートってば。呼びかけても全然こっち見てくれないんだから」
「悪い。ちょっと興奮しちゃってさ。我を忘れてた」
オレは迷いを振り切るように、小さくかぶりを振った。
まだ少し曖昧だった「オレ」と「俺」の境界線が、完全にクリアになる。
「うんうん。さっきのシュート、すごかったよねぇ。表情とかもう別人みたいでぇ。こんな顔もできるだって、びっくりしちゃった♪」
……別人か。
加恋は本当に、人を見る目があるんだな。
加恋の言う通りで、さっきのオレは完全に「俺」に戻っていた。
感情的で、無鉄砲なガキで、恋だの愛だのくだらないことにお熱だった「俺」に戻ってしまっていた。
「ほんとゴメン。怖かったよな」
「ううん、むしろカッコよかったよ? 情熱的って言うのかな? いつものクールなのも悪くないけどぉ、すっごくキュンってしちゃった。あはっ♪」
「キュンって……笑えない冗談はやめてくれ」
「ジョーダンじゃないよぉ♪ ちょーいけてたしー♪」
オレの左腕を抱えるように抱き着いていた加恋が、にっこり笑うと、さらにギュっと強く腕を抱きしめてくる。
「そろそろ離れような」
「えー? なんでぇ?」
腕を離すように促したオレに、しかし加恋は腕を抱いたままで、にっこり極上のスマイルを向けてきた。
「なんでって。アイツはもういなくなったんだし、なら付き合ってる振りをする必要はないだろ?」
「流れでこのままでもいいんじゃない?」
「どんな流れだよ。そんな流れはないから」
「別に減るもんじゃないしぃ? がんばったシュートへのご褒美っていうかぁ?」
「オレはご褒美とかいらないから。ほら、離れた離れた。みんな見てるだろ?」
さっきまでザ・チャラ男とのやり取りを遠巻きに見守り、なんとなくオレたちの味方をしてくれていたはずの野次馬たちは、しかし。
今はオレと加恋がまるで恋人のようにくっついているのを、興味津々って顔で眺めていた。
人の心はかくも移ろいやすい……。
「あれって1組の小鳥遊さんだろ?」
「なんかマジでカレカノっぽくね?」
「1組の加賀見と仲がいいとは聞いてたけど、やっぱりそうだったかぁ」
さらには誤解120%な会話まで聞こえてくる。
別にイチイチ否定して回りはしないが、オレと加恋がそんな関係なわけがないからな?
なにが「やっぱりそうだったかぁ」だ。
その推理はかすりもしてないからな。
少しは加恋の洞察力を見習えよ?
そんな野次馬たちの中にはクラスメイトもいて、加恋はまるで誤解を増幅させるかのように、オレの腕を抱きしめたまま、ひらひらと小さく手を振っている。
オレは全く聞く耳を持たない加恋の説得を諦めると、夏美に話を振った。
「夏美、手首は大丈夫だったか? 痛くないか? 赤くなってたりは?」
「ぁ、ぇっと……うん。ぜんぜん大丈夫だよ……。その、修斗くんが守ってくれたから……」
手首を確認した夏美が小さな声で言った。
「ならよかった」
「ぅ、うん……」
しかしザ・チャラ男はもう完全にいなくなったというのに、夏美はまだおどおどとしていた。
そこへ加恋が会話に混ざってくる。
「っていうかナツミーン。話を合わせてよねぇ? アタシ、ウインクしてアイコンタクトしたじゃんかー」
「加恋か、じゃないよぉ! もぅ、シュートってば。呼びかけても全然こっち見てくれないんだから」
「悪い。ちょっと興奮しちゃってさ。我を忘れてた」
オレは迷いを振り切るように、小さくかぶりを振った。
まだ少し曖昧だった「オレ」と「俺」の境界線が、完全にクリアになる。
「うんうん。さっきのシュート、すごかったよねぇ。表情とかもう別人みたいでぇ。こんな顔もできるだって、びっくりしちゃった♪」
……別人か。
加恋は本当に、人を見る目があるんだな。
加恋の言う通りで、さっきのオレは完全に「俺」に戻っていた。
感情的で、無鉄砲なガキで、恋だの愛だのくだらないことにお熱だった「俺」に戻ってしまっていた。
「ほんとゴメン。怖かったよな」
「ううん、むしろカッコよかったよ? 情熱的って言うのかな? いつものクールなのも悪くないけどぉ、すっごくキュンってしちゃった。あはっ♪」
「キュンって……笑えない冗談はやめてくれ」
「ジョーダンじゃないよぉ♪ ちょーいけてたしー♪」
オレの左腕を抱えるように抱き着いていた加恋が、にっこり笑うと、さらにギュっと強く腕を抱きしめてくる。
「そろそろ離れような」
「えー? なんでぇ?」
腕を離すように促したオレに、しかし加恋は腕を抱いたままで、にっこり極上のスマイルを向けてきた。
「なんでって。アイツはもういなくなったんだし、なら付き合ってる振りをする必要はないだろ?」
「流れでこのままでもいいんじゃない?」
「どんな流れだよ。そんな流れはないから」
「別に減るもんじゃないしぃ? がんばったシュートへのご褒美っていうかぁ?」
「オレはご褒美とかいらないから。ほら、離れた離れた。みんな見てるだろ?」
さっきまでザ・チャラ男とのやり取りを遠巻きに見守り、なんとなくオレたちの味方をしてくれていたはずの野次馬たちは、しかし。
今はオレと加恋がまるで恋人のようにくっついているのを、興味津々って顔で眺めていた。
人の心はかくも移ろいやすい……。
「あれって1組の小鳥遊さんだろ?」
「なんかマジでカレカノっぽくね?」
「1組の加賀見と仲がいいとは聞いてたけど、やっぱりそうだったかぁ」
さらには誤解120%な会話まで聞こえてくる。
別にイチイチ否定して回りはしないが、オレと加恋がそんな関係なわけがないからな?
なにが「やっぱりそうだったかぁ」だ。
その推理はかすりもしてないからな。
少しは加恋の洞察力を見習えよ?
そんな野次馬たちの中にはクラスメイトもいて、加恋はまるで誤解を増幅させるかのように、オレの腕を抱きしめたまま、ひらひらと小さく手を振っている。
オレは全く聞く耳を持たない加恋の説得を諦めると、夏美に話を振った。
「夏美、手首は大丈夫だったか? 痛くないか? 赤くなってたりは?」
「ぁ、ぇっと……うん。ぜんぜん大丈夫だよ……。その、修斗くんが守ってくれたから……」
手首を確認した夏美が小さな声で言った。
「ならよかった」
「ぅ、うん……」
しかしザ・チャラ男はもう完全にいなくなったというのに、夏美はまだおどおどとしていた。
そこへ加恋が会話に混ざってくる。
「っていうかナツミーン。話を合わせてよねぇ? アタシ、ウインクしてアイコンタクトしたじゃんかー」
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