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第五章 俺とオレ
第77話 天使のはね――夏美
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「おっとと、大丈夫か?」
「うん、いろいろと安心したら気が抜けて、腰も抜けちゃったみたい。あはは……」
へたり込んだまま恥ずかしそうに苦笑した夏美に、俺は右手を差し伸べる。
「立てるか?」
夏美は俺の手を握って立ち上がろうとしたが――夏美の手の小さくて柔らかな感触に思わずどきりとしてしまう――うまく立ち上がれないでいた。
「えーっと、足に力が入らなくて、しばらくは無理かも……」
しばらく動けなさそうという夏美の答えを聞いて、俺は考えを巡らせる。
俺だけなら適当に話をしながら回復を待って全然いいんだが、今って加恋をボッチにしてるんだよな。
ラインで連絡を入れてここまで来てもらうか?
――いいや。
散々世話を焼いてもらって、お膳立てしてもらっておいて、さらにここまで来てもらうってのは、なんとも気が引けた。
しかし夏美は立ち上がれないでいる。
ってことなら――。
「おぶってくよ。背中に乗ってくれるか?」
俺はそう言うと夏美に背中を向けてしゃがみ込んだ。
「えっ、いいよそんなの! 少ししたら立てるようになるから!」
背中越しに聞こえる慌てたような夏美の声。
俺は背中を向けてしゃがんだまま、肩越しに顔だけ夏美に向けて言葉を続ける。
「ほら、今って加恋を待たせているだろ? あまり待たせすぎるのも悪いし、だったら背負っていけばいいかなって」
「わっ、そういえば加恋ちゃんを待たせてたんだった。ううぅ、加恋ちゃん怒ってないかなぁ……」
「それなら大丈夫。なにせ加恋はぐずぐずしていた俺の背中を押してくれたんだから。本音で向き合って和解したって言ったら、喜んでくれるさ」
加恋はそういう女の子だ。
常に周囲を見ていて、お節介な世話焼きさんで、自他ともに認める世界一の愛され美少女なのだから。
「ふふっ、そっか。加恋ちゃんはすごいね、ほんと」
「そんなすごい加恋にこれ以上、余計な心配はさせたくないからさ。だからおぶってくよ」
「でも……」
夏美が顔の前で、両手の人差し指をつんつくつんと、何度も合わせた。
「なにもじもじしてるんだよ。俺たちの仲だろ? ほら、早く早く」
俺が急かすように言うと、夏美は意を決したようにこくんとうなずいてから、俺の肩に手を置いて、そっと身体を密着させてきた。
俺はスカートをめくらないように注意しながら、夏美の太ももの下に手を入れると、
「立ち上がるから、しっかり捕まっていてくれな」
「うん、しっかり捕まってるね」
復唱するように答えた夏美の声を聞いてから――吐息が首筋にかかってなんともこそばゆい――ゆっくりと立ち上がった。
「よいしょっと」
2年半ほど毎日のように筋トレして鍛えた身体は、女の子を一人背負っていても、なんなく俺を立ち上がらせてくれる。
「重くない……?」
「ぜんぜん。余裕余裕」
「ほんと?」
「ほんとほんと。天使のはねランドセルより軽いよ」
不安げに尋ねてくる夏美に、俺は少し茶目っ気を入れつつ、あっけらかんと答えると、ポツポツと早めの照明の灯がともり出した公園エリアを歩き出した。
「あ、私のランドセルも天使のはねだったよ。スゴ軽っていう一番軽いシリーズだったかな」
「俺もスゴ軽だったよ。名前の通りでマジ軽かったよな」
「うんうん。重いランドセルの子によく羨ましがられちゃったんだよね~。ふふっ、懐かしいね」
「懐かしいな。ま、こう見えて毎日筋トレしてるからさ。筋力は結構自信あるんだ。だからそこは何にも気にしないでいいぞ」
「だったらよかった」
安心したように言うと、夏美はギュっと抱き着くようにして、俺の背中に体重を預けてきた。
「うん、いろいろと安心したら気が抜けて、腰も抜けちゃったみたい。あはは……」
へたり込んだまま恥ずかしそうに苦笑した夏美に、俺は右手を差し伸べる。
「立てるか?」
夏美は俺の手を握って立ち上がろうとしたが――夏美の手の小さくて柔らかな感触に思わずどきりとしてしまう――うまく立ち上がれないでいた。
「えーっと、足に力が入らなくて、しばらくは無理かも……」
しばらく動けなさそうという夏美の答えを聞いて、俺は考えを巡らせる。
俺だけなら適当に話をしながら回復を待って全然いいんだが、今って加恋をボッチにしてるんだよな。
ラインで連絡を入れてここまで来てもらうか?
――いいや。
散々世話を焼いてもらって、お膳立てしてもらっておいて、さらにここまで来てもらうってのは、なんとも気が引けた。
しかし夏美は立ち上がれないでいる。
ってことなら――。
「おぶってくよ。背中に乗ってくれるか?」
俺はそう言うと夏美に背中を向けてしゃがみ込んだ。
「えっ、いいよそんなの! 少ししたら立てるようになるから!」
背中越しに聞こえる慌てたような夏美の声。
俺は背中を向けてしゃがんだまま、肩越しに顔だけ夏美に向けて言葉を続ける。
「ほら、今って加恋を待たせているだろ? あまり待たせすぎるのも悪いし、だったら背負っていけばいいかなって」
「わっ、そういえば加恋ちゃんを待たせてたんだった。ううぅ、加恋ちゃん怒ってないかなぁ……」
「それなら大丈夫。なにせ加恋はぐずぐずしていた俺の背中を押してくれたんだから。本音で向き合って和解したって言ったら、喜んでくれるさ」
加恋はそういう女の子だ。
常に周囲を見ていて、お節介な世話焼きさんで、自他ともに認める世界一の愛され美少女なのだから。
「ふふっ、そっか。加恋ちゃんはすごいね、ほんと」
「そんなすごい加恋にこれ以上、余計な心配はさせたくないからさ。だからおぶってくよ」
「でも……」
夏美が顔の前で、両手の人差し指をつんつくつんと、何度も合わせた。
「なにもじもじしてるんだよ。俺たちの仲だろ? ほら、早く早く」
俺が急かすように言うと、夏美は意を決したようにこくんとうなずいてから、俺の肩に手を置いて、そっと身体を密着させてきた。
俺はスカートをめくらないように注意しながら、夏美の太ももの下に手を入れると、
「立ち上がるから、しっかり捕まっていてくれな」
「うん、しっかり捕まってるね」
復唱するように答えた夏美の声を聞いてから――吐息が首筋にかかってなんともこそばゆい――ゆっくりと立ち上がった。
「よいしょっと」
2年半ほど毎日のように筋トレして鍛えた身体は、女の子を一人背負っていても、なんなく俺を立ち上がらせてくれる。
「重くない……?」
「ぜんぜん。余裕余裕」
「ほんと?」
「ほんとほんと。天使のはねランドセルより軽いよ」
不安げに尋ねてくる夏美に、俺は少し茶目っ気を入れつつ、あっけらかんと答えると、ポツポツと早めの照明の灯がともり出した公園エリアを歩き出した。
「あ、私のランドセルも天使のはねだったよ。スゴ軽っていう一番軽いシリーズだったかな」
「俺もスゴ軽だったよ。名前の通りでマジ軽かったよな」
「うんうん。重いランドセルの子によく羨ましがられちゃったんだよね~。ふふっ、懐かしいね」
「懐かしいな。ま、こう見えて毎日筋トレしてるからさ。筋力は結構自信あるんだ。だからそこは何にも気にしないでいいぞ」
「だったらよかった」
安心したように言うと、夏美はギュっと抱き着くようにして、俺の背中に体重を預けてきた。
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