俺が恋愛不感症になったわけ。「恋愛なんてしょせんは人類が子孫を残すための付随行為に過ぎないだろ?」

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第六章 夏美True

第79話「俺は今でも夏美のことが好きだよ。それが俺の嘘偽りない素直な気持ちだ」

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「あのさ夏美」「ねぇ、修斗くん」

 俺が話しかけたちょうど同じタイミングで、夏美が口を開いた。

「――っと、悪い。夏美から先にどうぞ」
 背中の夏美にそう声をかけると、

「あはは、被っちゃった。ごめんね、修斗くんからお先にどうぞ」
 夏美からはこれまた同じタイミングで、そんな答えが返ってきた。

「…………」
「…………」

 お互いにタイミングを見計らうように少しの間があってから、今度は俺だけが口を開く。

「ええっと、俺はその、大したアレじゃない――ってこともないんだけど。でもまずは夏美から先に言ってくれて構わないぞ」

「わ、私も別に大したことじゃない――ってこともないんだけど。えっと、急ぎってわけでもないし、修斗くんから言って欲しいな」

「いやいや夏美から先にどうぞ」
「ううん、修斗くんからどうぞ」

「ほんと夏美からで構わないから」
「修斗くんからで大丈夫だよ」

「ほら、レディファーストって言うよな」
「令和は男女平等だもん。私は後でいいから」

 お互いにどうぞどうぞと譲り合う俺と夏美。

 このままじゃ埒があかないな。

 夏美はこういう時に絶対に譲り通すタイプだ。
 そして実は俺の話は加恋と合流する前の、二人きりの間に話したかったことだったので、もう時間も残されていない。

「じゃあ俺から言うな?」
「うん。そうしてくれると嬉しいな」

 とりま俺から言うことにした。

 少しほぐれてしまった決意を俺は改めて固め直すと、すー、はーと大きく深呼吸をしてから言った。

「『あの日』に至るまでの話は聞かせてもらった。嘘コクから始まったけど、俺のことを本気で好きだったって、そう言ってもらえて嬉しかった。だけど今の気持ちがどうなのかを、俺はまだ聞いていないんだ。夏美は今、どう思っているんだ?」

 決意共に一息にそう、夏美に告げた。

「あ、えっと――」

 すると夏美は小さく曖昧につぶやいて、黙ってしまった。 
 落ちないように俺の首元に回されているその両手に、ギュっと力が入るのがわかる。

 夏美の反応を見て、俺は今の聞き方が少しアンフェアだったと猛省する。 
 なにより「俺の想い」を伝えずに、夏美にだけ聞くのはダサすぎた。

 心の中で「ダッサ」と笑うイマジン加恋を、俺は「うるせっ」と蹴り飛ばすと、俺はもう一度、言葉を紡いだ。
 伝えるべきことを、伝えるために。

「俺は今でも夏美のことが好きだよ。それが俺の嘘偽りない素直な気持ちだ。そんな俺のことを、夏美は今、どう思っているのかな?」

「――――」
 夏美の手にさらに力が入る――どころか身体全体がグッと強張ったのが、背中から伝わってくる。

「今の夏美の気持ちを、聞かせてくれないか?」

 それでも俺は重ねて問いかけた。
 優しい口調で、心も、身体も、夏美の緊張をほぐすように。

「私は――」
「うん」

 そこで逡巡するように少し間を置いてから、

「私は――私には修斗くんと付き合う資格なんてないよ」

 夏美がポツリとつぶやいた。
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