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おまけ(夏の終わり~秋 編)
第57話 【精霊騎士】、温泉に行く。
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ブイブイ言っていた夏がめっきりと勢力を失い、少しずつ秋の気配が深まりだした――とも言えない残暑厳しい今日この頃。
それでも朝夕はだいぶん涼しくなって、過ごしやすくなった季節の変わり目に。
俺と幼女魔王さまとミスティは、【ゲーゲンパレス】から馬車で10時間ほどのところにある温泉宿へとやってきていた。
「着いたのじゃ!」
着いて早々、幼女魔王さまがお行儀悪く馬車から飛び降りた。
「冬の終わりに来て以来なので、半年ぶりでしょうか」
続いてミスティが、それとは対照的におしとやかに馬車から降りる。
「日が沈んでいる時間は涼しくなってきたからの。そろそろ温泉のシーズン到来じゃの!」
「ですね♪」
会話を弾ませる2人に続いて最後に俺も馬車から降りると、いい感じに趣のある宿を見上げた。
「へぇ、見るからにいいとこだな。めちゃくちゃ豪勢ってわけじゃないけど、雅って言うか、すごく風情がある」
俺がとってもふんわりとした感想を言うと、
「ほほぅ、ハルトもついに『風情がある』などといっちょ前に言うようになったのじゃのぅ。ここにきて数か月、ハルトも大いに成長したものじゃ」
幼女魔王さまが、うむうむと感慨深げに頷いた。
「なんとなくなんだけど、豪華なこと以外の価値観があるってことがわかってきたっていうか? まだ上手くは言葉にできないんだけどさ」
むかしはキンキラキンだったり、大きくて荘厳だったり、細かい装飾がされていることがスゴイんだって、そんな風に思ってたんだけど。
なんていうのかな。
世の中はそれだけじゃなくて、製作者が込めた情熱とか、それを継承してきた人の思いとか、あとは侘びしさや寂しさみたいなものも良いなって、そんな風に思うようになってきたんだよな。
「なーに、必ずしも仔細に言葉にする必要はないのじゃよ。妾たちは文化を研究する学者ではなく、文化を享受し共に作っていく『中の人』なのじゃから、気楽に楽しむがよい」
「そうか……俺もまた、今この瞬間にまさに文化を担っている1人なのか……『お客さま』じゃないんだ。そうか、うん」
さすが幼女魔王さまは良いことを言うな。
俺ちょっと感動しちゃったぞ。
「まぁ小難しい話は置いておいてじゃ。このアーリマ温泉は『太閤の湯』として有名なのじゃ」
「太鼓の湯? 温泉で太鼓をたたくのか?」
太鼓をたたいてBGMを演奏してくれるのかな?
でも太鼓は木と皮でできてるから、温泉の湿気で音が変わったり痛んじゃいそうな気がするけど。
「ハルト様ハルト様、太鼓ではなく太閤です。偉大な【聖魔王】の呼び名の一つなんですよ」
「あ、そうなのか。餅でのどを詰まらせて死んだ昔の魔王さまだよな」
昔の偉人に色んな呼ばれ方があるのは、どこの国でも一緒のようだ。
「うむ、後年の宮廷研究によると【聖魔王】は実はひどい腰痛持ちでの。晩年は寒くなると腰がギシギシ言ったらしくて、痛みがひどくなるたびにこの温泉によく湯治に訪れておったそうなのじゃ」
幼女魔王さまがややセンシティブな王家の昔話を、あけすけに説明してくれた。
「ほうほう、太閤――つまり【聖魔王】がよく入りに来てたから『太閤の湯』なのか、納得だ」
「そしてなんとですよ、この宿は【聖魔王】がいつも泊まっておられた宿なんです。以来500年の長きに渡ってその伝統が受けつがれている、由緒正しい温泉宿なんですよ」
ミスティがさらに補足説明を入れてくれる。
「500年も!? それはすごいな」
「しかもたくさんの薬効成分が含まれた源泉が、贅沢にかけ流しなんです。血行が良くなってお肌はつるつる、肩こりや頭痛も解消されると評判なんですよ」
「ここに来ると若返った気がするのじゃよ」
「ん? いや魔王さまって20歳だよな? 若返るも何もないよな? バリバリのヤング・エイジだよな?」
「気分の問題なのじゃ」
「気分か。それは大事だな、わかる」
つい先日、戦場に向かった幼女魔王さまとミスティが心配で気になって仕方なくて、何にも手につかなかくなってしまった俺だ。
そう言われると納得せざるを得なかった。
「話も一段落したところで、早速チェックインをしてまずは温泉で一服するとしようかの。名物の銀泉にしっぽり入るのじゃ。薬効たっぷりの、真っ白な湯なのじゃ」
今日も今日とて、最後に幼女魔王さまが良い感じに場を締めると、俺たちは宿の受付で手続きを済ませると部屋へと向かった。
それでも朝夕はだいぶん涼しくなって、過ごしやすくなった季節の変わり目に。
俺と幼女魔王さまとミスティは、【ゲーゲンパレス】から馬車で10時間ほどのところにある温泉宿へとやってきていた。
「着いたのじゃ!」
着いて早々、幼女魔王さまがお行儀悪く馬車から飛び降りた。
「冬の終わりに来て以来なので、半年ぶりでしょうか」
続いてミスティが、それとは対照的におしとやかに馬車から降りる。
「日が沈んでいる時間は涼しくなってきたからの。そろそろ温泉のシーズン到来じゃの!」
「ですね♪」
会話を弾ませる2人に続いて最後に俺も馬車から降りると、いい感じに趣のある宿を見上げた。
「へぇ、見るからにいいとこだな。めちゃくちゃ豪勢ってわけじゃないけど、雅って言うか、すごく風情がある」
俺がとってもふんわりとした感想を言うと、
「ほほぅ、ハルトもついに『風情がある』などといっちょ前に言うようになったのじゃのぅ。ここにきて数か月、ハルトも大いに成長したものじゃ」
幼女魔王さまが、うむうむと感慨深げに頷いた。
「なんとなくなんだけど、豪華なこと以外の価値観があるってことがわかってきたっていうか? まだ上手くは言葉にできないんだけどさ」
むかしはキンキラキンだったり、大きくて荘厳だったり、細かい装飾がされていることがスゴイんだって、そんな風に思ってたんだけど。
なんていうのかな。
世の中はそれだけじゃなくて、製作者が込めた情熱とか、それを継承してきた人の思いとか、あとは侘びしさや寂しさみたいなものも良いなって、そんな風に思うようになってきたんだよな。
「なーに、必ずしも仔細に言葉にする必要はないのじゃよ。妾たちは文化を研究する学者ではなく、文化を享受し共に作っていく『中の人』なのじゃから、気楽に楽しむがよい」
「そうか……俺もまた、今この瞬間にまさに文化を担っている1人なのか……『お客さま』じゃないんだ。そうか、うん」
さすが幼女魔王さまは良いことを言うな。
俺ちょっと感動しちゃったぞ。
「まぁ小難しい話は置いておいてじゃ。このアーリマ温泉は『太閤の湯』として有名なのじゃ」
「太鼓の湯? 温泉で太鼓をたたくのか?」
太鼓をたたいてBGMを演奏してくれるのかな?
でも太鼓は木と皮でできてるから、温泉の湿気で音が変わったり痛んじゃいそうな気がするけど。
「ハルト様ハルト様、太鼓ではなく太閤です。偉大な【聖魔王】の呼び名の一つなんですよ」
「あ、そうなのか。餅でのどを詰まらせて死んだ昔の魔王さまだよな」
昔の偉人に色んな呼ばれ方があるのは、どこの国でも一緒のようだ。
「うむ、後年の宮廷研究によると【聖魔王】は実はひどい腰痛持ちでの。晩年は寒くなると腰がギシギシ言ったらしくて、痛みがひどくなるたびにこの温泉によく湯治に訪れておったそうなのじゃ」
幼女魔王さまがややセンシティブな王家の昔話を、あけすけに説明してくれた。
「ほうほう、太閤――つまり【聖魔王】がよく入りに来てたから『太閤の湯』なのか、納得だ」
「そしてなんとですよ、この宿は【聖魔王】がいつも泊まっておられた宿なんです。以来500年の長きに渡ってその伝統が受けつがれている、由緒正しい温泉宿なんですよ」
ミスティがさらに補足説明を入れてくれる。
「500年も!? それはすごいな」
「しかもたくさんの薬効成分が含まれた源泉が、贅沢にかけ流しなんです。血行が良くなってお肌はつるつる、肩こりや頭痛も解消されると評判なんですよ」
「ここに来ると若返った気がするのじゃよ」
「ん? いや魔王さまって20歳だよな? 若返るも何もないよな? バリバリのヤング・エイジだよな?」
「気分の問題なのじゃ」
「気分か。それは大事だな、わかる」
つい先日、戦場に向かった幼女魔王さまとミスティが心配で気になって仕方なくて、何にも手につかなかくなってしまった俺だ。
そう言われると納得せざるを得なかった。
「話も一段落したところで、早速チェックインをしてまずは温泉で一服するとしようかの。名物の銀泉にしっぽり入るのじゃ。薬効たっぷりの、真っ白な湯なのじゃ」
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