レアジョブ【精霊騎士】の俺、突然【勇者パーティ】を追放されたので【へっぽこ幼女魔王さま】とスローライフします

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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おまけ(夏の終わり~秋 編)

第56話 【精霊騎士】、花火を見る。

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「ミスティよ、精霊の存在を感じられるとは、まことなのか!?」

「はい。時々、声も聞こえます。それがどうかしましたでしょうか?」
「魔王さま、なにをそんなに焦ってるんだ?」

 ミスティと俺は、よくわからないと言った感じで、顔を見あわせる。
 すると、

「なにを言うか! だって考えても見るのじゃ! 精霊との交感能力というわらわの数少ないアドバンテージが、今まさに、失われつつあるのじゃぞ……!?」

 幼女魔王さまは、ブルブルと小刻みに震えていた。

「パーティの戦力が強化されるのは、いいことだろ?」

 そのうち声を聞くだけじゃなくて、精霊を使えるようになるかもしれないし。

「それとこれとは話が別なのじゃ! ただでさえ【勇者パーティ】のお荷物なわらわが、ついに最後のアドバンテージを失うのじゃぞ!? いかん、言葉にすると本当にまずい気がしてきたのじゃ……」

 幼女魔王さまがふらりと意識を失いそうになって、

「魔王さま、お気を確かに!」
 すかさずミスティが支えに入った。

「お、このパターンは初めてだな」
 ミスティが幼女魔王さまを失神させたのは初めてだったと思う。

 ……自作自演ともいう。

 俺たちが、いつもとちょっとだけ違った、でもやっぱりいつもと同じなやり取りをしていると――、

 ドン!
 ヒュルヒュルヒュルヒュル~~、パァン!

 大輪の花火が夜空に打ちあがった。

「あ、花火の打ち上げがはじまったみたいですね」
「おっともうそんな時間か」
「盛り上がって話し込んじゃいましたからね」

 そんな会話をする間にも、2発目、3発目、4発目と次々と花火が打ち上げられていく。

「はぁ……すごく綺麗です……」
 かわいい物やきれいな物には目がないミスティが、うっとりと花火を見つめる。

「まったくだ。綺麗なもんだな」
 俺もそれに完全に同意だった――んだけど、

「まったくハルトはまだまだじゃのぅ」
 ショックから立ち直った幼女魔王さまが、小さな声でひそひそ話で言ってきた。

「こういう時はの、『お前の方がもっと綺麗だぜ』と言うのが、女子的には胸キュンなのじゃよ」

「ふむ……」
 幼女魔王さまの言葉はいちいちもっともだった。

 確かに、今は言ってみればデートみたいなものだ。
 であれば女性をエスコートする男性として、その魅力を褒めるのは当然の行動と言えるだろう。

 幼女魔王さまの指摘に心底納得した俺は、ミスティの耳元に顔を寄せると、

「花火も綺麗だけど、ミスティの方がもっと綺麗だよ」
 優しくそっとつぶやいた。

「ふぇっ!? あの、えっと!? その、ハルト様!?」
 ミスティがびつくりしたように、上目づかいで見上げてくる。

「いつものポニーテールも可愛いけど、今日は浴衣ゆかたに合うようにアップに結い上げてるのが、すごくおしゃれで大人っぽいし」

「あ、ありがとうございます……」

 ミスティはそう小さく言うと、完全にうつむいてしまった。
 そしてそのまま黙ってしまう。

 あれ?
 どうしたんだろう?

「なぁ、魔王さま。急にミスティに目をそらされたんだけど。もしかして俺にキザなこと言われて、ちょっと嫌だったのかな? 魔王さまはどう思う?」

 俺は小声で幼女魔王さまに尋ねてみた。
 すると、

「……はぁ」
 幼女魔王さまは何も言わずに、ちょっと呆れたようにため息をついた。

 あれ?
 また俺、なにかやっちゃったのかな……?

「ハルトよ、今度わらわのお気に入りのラブコメを貸すゆえ、熟読しておくように」

「俺はどっちかって言うと、転生系の冒険小説が好きなんだけど」
「熟読しておくように」
「う、うん、わかった……」

 有無を言わさぬ幼女魔王さまの言葉に、俺は得体のしれないプレッシャーを感じてしまい、思わずそう頷いてしまったのだった。
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