48 / 58

第47話 レッドアイズ・ブラックドラゴン

しおりを挟む
「おいおい冗談なんかじゃないさ。リュスターナが一緒に居てくれて、俺は本当に嬉しかったんだ。リュスターナに必要とされて、リュスターナに愛してもらえて。この世界に来てからずっと、俺は本当に幸せだったから」

 向こうの世界じゃ使いつぶす気満々のブラック会社に、命を文字通り使い潰されていた。
 俺が潰れたら新しいヤツを入れてまた同じように使い潰せばいい。
 そこには「俺を必要とする」とかそういう気持ちは全くなかった。
 俺は人の形をしたただの歯車だった。

 それと比べるまでもなく、甲斐甲斐しく俺の面倒を見て笑顔を振りまいてくれるリュスターナのなんと魅力的だったことか。
 俺の心がすぐにリュスターナへの想いで溢れんばかりになったのは当然だった。

「勇者様……」

「俺は褒美に金銀財宝をもらうよりも、リュスターナと一緒にいたかった。ドラゴンと命を懸けて戦っているリュスターナの手助けをしたかった。せっかく勇者になったんだから、その力でリュスターナを守りたかったんだ」

「はい、勇者様にはいっぱい守ってもらいました♪」

「正直言うとさ、最初の頃はこの世界に来たばっかりだったから、特に愛着もないこの世界を守ろうって気持ちは薄かったんだよな」

「あはは、それは当然だと思いますよ。私だっていきなり違う世界に行ったら、同じようなことを思うと思いますし」

「でも今はもう違う。リュスターナと、リュスターナの守りたい世界を俺も守りたいんだ――って言うと動機がちょっと不純だけど、そこはまぁ見逃してくれるとありがたいかな」

 俺は小さく苦笑いする。

「もう勇者様ってば、世界を守りたいと思う動機に純も不純もありませんよ。なにより愛する人を守りたいという気持ちは、人間の最も本質的な原動力ですから」

「おおっ!? メチャクチャいいことを言われた気がする」
「はい、メチャクチャいいことを言っちゃいました♪」

 茶目っ気たっぷりに言ったリュスターナ。
 俺とリュスターナは思わず顔を見あわせると、どちらからともなく笑い合ったのだった。

 しばらく二人で笑い合った後。

「戦いが終わったら是非、前にいた世界のことを教えて下さいね」
 リュスターナが上目づかいでお願いしてくる。

「いいぞ。全然違う世界だからちゃんと伝わるように説明できるかは分からないけどさ」
「ふふっ、それはそれで想像のしがいがありますね♪ 今からその時が待ち遠しいです」

 そんな感じでリュスターナと会話を楽しんでいると。

「あ、おにーさんとリュスターナさん、こんなところにいた! こんなところで2人で何してたの? そろそろ出撃の時間だよー?」

 城壁の上に今度はミストルティアがやってきた。

「悪い悪い、ちょっとドラゴンの本拠地でも見えないかなって思ってさ」

「あはは、おにーさんってば、山岳地帯の向こうなんだからここからじゃ見えるわけないじゃんー」
「だよな」

「もう、変なおにーさん。じゃあもう準備はできてるみたいだし、行こっか」

「ああ、行こうか!」
「ええ、行きましょう!」

 俺たち3人は頷きあった。

「竜化変身! どやぁ!」
 ミストルティアが全長15メートルほどの、今まで見たドラゴンと比べるとやや小ぶりなドラゴンの姿へと変身する。

 しかし禍々しい漆黒の鱗と、鮮血のような真紅の瞳はいかにも凶悪なドラゴンだ。
 言うなればレッドアイズ・ブラックドラゴン。

「カッコいいけどちょっと顔が怖いな……」
「女の子に向かって顔が怖いとかおにーさんひどい!」
「ご、ごめん……」

「黒い鱗に真紅の瞳……ミストルティアってまさか伝説のエンシェントドラゴンなんですか!?」

「リュスターナさんもひどいよぉ! ボクはそんな年寄りじゃないもーん!」
「す、すみません」

「えっとね。ボクの家系がそうなの。ボクの家系は強大な力を持つドラゴンの祖、エンシェントドラゴンの力を色濃く受け継いでるんだよ」

「だからミストルティアもまだ子供なのに、四天王最強と言われるほどに強かったんですね」
「そーゆーこと」

「ってことはだ。ミストルティアの親である大魔竜ドラグバーンも相当強いってことだよな?」

「ボクが本気で戦って勝てなかった相手は、パパとおにーさんだけだね」
「ミストルティアよりも強い、か……」

 まぁそりゃそうだよな。
 なにせ大魔竜ドラグバーンは、最強種ドラゴンを率いる竜の王なのだから。

「あはは、そんなに難しく考えなくても、ボクとおにーさんとリュスターナさんが力を合わせれば怖いものなんてないってば! さぁさぁ深刻な顔してないで、ボクの背中に乗って乗って!」

「お前はほんと気楽でいいなぁ」
「ですが考えても仕方がないというのは一理ありますね。ここまで来たら後はもうぶつかるだけです」

「ははっ、だな。当たって砕けろ――いや当たってボコボコに粉砕してやろうぜ」
「はいっ!」
「もちろん!」

 相手がエンシェントドラゴンの末裔だろうがドラゴンの王だろうが、そんなことは関係ない。
 俺たち3人の力を。
 勇者と≪盾の聖女≫と竜の姫の力を合わせるのみだ!

「リュスターナ、しばらく口は閉じていてくれ」
「かしこまりました」

 俺はリュスターナをお姫様抱っこすると、ドラゴンの姿になったミストルティアの背中に飛び乗った。

「じゃ、いっくよー!」
 大きく翼を広げたミストルティアが、俺たちを乗せて大空へと一気に飛び立った――!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています

黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。 彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。 ようやく手に入れた穏やかな日々。 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。 彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。 そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。 「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。 「いつものことだから、君のせいじゃないよ」 これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。 二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。 心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。

処理中です...