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エダール
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以前持っていた膨大な魔力は、瘴気を封印するために殆ど使い果たした。今のヨウスケには、並よりやや上程度の魔力しかない――という事になっている。
恐らく双子と共に力を合わせて封じよう。そうヴィーは懇願しているのだ。
だが実際のヨウスケは、魔力が回復していた。全盛期ほどではなくとも、恐らく双子二人分の魔力を合算しても上回るだろう。
ヨウスケは己の魔力量を振り返り、はたと気付いた。
「獣人族は、魔力の受け渡しが出来る……のか? いや、その前に、ひょっとして彼らの中にはDomとSubが……ダイナミクスが存在していたのか?」
この世界にはDomもSubもいない。だがかつて獣人族はそれを持ち得たのではないだろうか。だからこそ、先祖返りしたエダールはDomとしてヨウスケを必要としたし、ヨウスケもまたエダールのDom性にすぐ気付いた。
「だとすれば、プレイの後に魔力が回復していたのも頷けるな……。エダールの言葉には魔力があったし……プレイを通して魔力を……今回はその魔力の解消する場が無くて暴走した……? いや、わかんねぇ、全部仮説だ」
ブツブツと呟くヨウスケに、ヴィーは静かに声をかけた。
「今のエダールは、魔力を暴走させて眠っている。身体中から瘴気を溢れさせながらね。神殿はすぐにエダールを殺そうとしたらしいけど、居合わせたリィアがそれを止めてるんだ。今も、防壁を張ってエダールを守ってくれている。だから、叱らないでやってくれるかい」
「……何をだ」
「エダールが暴走するきっかけになったのが恐らく、ドゥアの言葉なんだ」
申し訳無さそうなヴィーの後ろで、そっぽを向いているのがドゥアだろう。片割れのリィアはそんなドゥアをオロオロとした様子で見つめている。
「……ちょっと揶揄っただけです。いつまでもヨウスケヨウスケとうじうじと煩いから、私もあんな魔力も並以下の魔法使い崩れのどこが良いんだと、ついつっかかっりました」
リィアは隣の兄弟をチラリとみて、そしてため息をついた後諦めたように話した。
「そしたら……あいつがリィアを……リィアの魔力だって今は並以下だろうって……枯渇するのも時間の問題じゃないかって、言うから俺は」
その話は初めて聞いたのだろう、ヴィーとリィアは大きく目を見開いた。
「エダールがそんなことを言ったのかい? リィア、それは本当なの?」
「……申し訳、ありません」
ヴィーの言葉にリィアは謝罪をした。それはすなわちエダールの言ったとおりなのだろう。魔力量は外からは見えない、だが獣人族であるエダールは、きっとその見えないものが見えていたのかもしれない。
「だ、だから私は! リィアをバカにされたとついカッとなって……ヨウスケが結婚したと嘘を」
「……え」
「傷ついた顔をしたエダール……様を見て、溜飲を下げたんです、私は。その後何かがあの方の体内から放出され、真っ黒なモヤが神殿の部屋を覆っていました。そのモヤは徐々に広がって、あっという間に神殿全体へ、そして窓の外へと広がって……」
慌てたドゥアはリィアへと連絡を取り、そこからヴィーへと繋がった。数年前に瘴気に侵されていた国民を宥めながら、その原因であるエダールを殺そうとする神殿を押さえつけている――と言うのが現状らしい。
「瘴気――魔力を暴発させた後から、エダールはずっと眠っているよ。本当にごめんね……二人と協力して、どうかエダールの魔力を封じてくれないかな」
申し訳なさそうな顔をするヴィーに、ヨウスケは首を横に振った。
「いや、いい。俺一人で行く。言ってなかったけど、俺の魔力は随分回復してるんだ。多分、エダールの魔力を取り込んでるんだと思う」
「そ、そんなの不可能です! 魔力の譲渡が出来るならリィアだって苦しむことがなかった!」
ドゥアの言葉に、ヨウスケは薄く笑った。
本来ならば不可能なんだろう。この世界の理に反している。だが自分とエダールの存在がそもそも、この世界では異質なのだ。
「できるのは多分、エダールと俺がDomとSubだからだ」
召喚された当時、この世界に存在しないダイナミクスを持つ自分は否定された気持ちだった。解消できない欲求に苦しんで、他人の目を気にして森へと引っ込んだ。
エダールと出会って、どれだけ救われただろう。ひとりぼっちではない事への安心感は、次第に恋心へと変化した。
だけどそれに蓋をして、大人のフリをして手放した結果がこれだ。
迎えに行く。謝って、そして許して貰えたなら二度とその手を離さない。ヨウスケはそう心を決めた。
「行ってくるわ」
ぽかんとした三人の表情を見ながら、ヨウスケはあっさりとその場から姿を消した。
恐らく双子と共に力を合わせて封じよう。そうヴィーは懇願しているのだ。
だが実際のヨウスケは、魔力が回復していた。全盛期ほどではなくとも、恐らく双子二人分の魔力を合算しても上回るだろう。
ヨウスケは己の魔力量を振り返り、はたと気付いた。
「獣人族は、魔力の受け渡しが出来る……のか? いや、その前に、ひょっとして彼らの中にはDomとSubが……ダイナミクスが存在していたのか?」
この世界にはDomもSubもいない。だがかつて獣人族はそれを持ち得たのではないだろうか。だからこそ、先祖返りしたエダールはDomとしてヨウスケを必要としたし、ヨウスケもまたエダールのDom性にすぐ気付いた。
「だとすれば、プレイの後に魔力が回復していたのも頷けるな……。エダールの言葉には魔力があったし……プレイを通して魔力を……今回はその魔力の解消する場が無くて暴走した……? いや、わかんねぇ、全部仮説だ」
ブツブツと呟くヨウスケに、ヴィーは静かに声をかけた。
「今のエダールは、魔力を暴走させて眠っている。身体中から瘴気を溢れさせながらね。神殿はすぐにエダールを殺そうとしたらしいけど、居合わせたリィアがそれを止めてるんだ。今も、防壁を張ってエダールを守ってくれている。だから、叱らないでやってくれるかい」
「……何をだ」
「エダールが暴走するきっかけになったのが恐らく、ドゥアの言葉なんだ」
申し訳無さそうなヴィーの後ろで、そっぽを向いているのがドゥアだろう。片割れのリィアはそんなドゥアをオロオロとした様子で見つめている。
「……ちょっと揶揄っただけです。いつまでもヨウスケヨウスケとうじうじと煩いから、私もあんな魔力も並以下の魔法使い崩れのどこが良いんだと、ついつっかかっりました」
リィアは隣の兄弟をチラリとみて、そしてため息をついた後諦めたように話した。
「そしたら……あいつがリィアを……リィアの魔力だって今は並以下だろうって……枯渇するのも時間の問題じゃないかって、言うから俺は」
その話は初めて聞いたのだろう、ヴィーとリィアは大きく目を見開いた。
「エダールがそんなことを言ったのかい? リィア、それは本当なの?」
「……申し訳、ありません」
ヴィーの言葉にリィアは謝罪をした。それはすなわちエダールの言ったとおりなのだろう。魔力量は外からは見えない、だが獣人族であるエダールは、きっとその見えないものが見えていたのかもしれない。
「だ、だから私は! リィアをバカにされたとついカッとなって……ヨウスケが結婚したと嘘を」
「……え」
「傷ついた顔をしたエダール……様を見て、溜飲を下げたんです、私は。その後何かがあの方の体内から放出され、真っ黒なモヤが神殿の部屋を覆っていました。そのモヤは徐々に広がって、あっという間に神殿全体へ、そして窓の外へと広がって……」
慌てたドゥアはリィアへと連絡を取り、そこからヴィーへと繋がった。数年前に瘴気に侵されていた国民を宥めながら、その原因であるエダールを殺そうとする神殿を押さえつけている――と言うのが現状らしい。
「瘴気――魔力を暴発させた後から、エダールはずっと眠っているよ。本当にごめんね……二人と協力して、どうかエダールの魔力を封じてくれないかな」
申し訳なさそうな顔をするヴィーに、ヨウスケは首を横に振った。
「いや、いい。俺一人で行く。言ってなかったけど、俺の魔力は随分回復してるんだ。多分、エダールの魔力を取り込んでるんだと思う」
「そ、そんなの不可能です! 魔力の譲渡が出来るならリィアだって苦しむことがなかった!」
ドゥアの言葉に、ヨウスケは薄く笑った。
本来ならば不可能なんだろう。この世界の理に反している。だが自分とエダールの存在がそもそも、この世界では異質なのだ。
「できるのは多分、エダールと俺がDomとSubだからだ」
召喚された当時、この世界に存在しないダイナミクスを持つ自分は否定された気持ちだった。解消できない欲求に苦しんで、他人の目を気にして森へと引っ込んだ。
エダールと出会って、どれだけ救われただろう。ひとりぼっちではない事への安心感は、次第に恋心へと変化した。
だけどそれに蓋をして、大人のフリをして手放した結果がこれだ。
迎えに行く。謝って、そして許して貰えたなら二度とその手を離さない。ヨウスケはそう心を決めた。
「行ってくるわ」
ぽかんとした三人の表情を見ながら、ヨウスケはあっさりとその場から姿を消した。
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