異世界でひとりぼっちのSub ~拾ったDomを育てたら執着されてしまいました~

てんつぶ

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そう

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 家に戻りたいと言うエダールを押さえつけて、ヨウスケはヴィーの元へと転移した。
 着いたのは先ほどと同じ部屋で、唯一違うのは隣にエダールがいる事だ。じっと見上げて、その嬉しさにヨウスケはへにゃりと相好を崩す。
「……ヴィー、家に帰って良いか」
 そんなヨウスケをじっと見つめて、エダールはこの国の王にそう訴える。
 想いが通じたというのに何故いつまでもこんな所にいなければいけないのか。エダールの瞳は雄弁に語って、ヴィーは思わず苦笑した。
「ごめんねぇ。ちょっとだけ時間くれるかな? 神殿や大司教に適正な罰を与えるためにも、確認させてほしいんだ」
 長い脚を品よく組むヴィーと、その後ろには双子の魔法使いが立ち、そしてテーブルを挟む形でエダールとヨウスケが腰掛けていた。
「まずは二人に謝罪させて欲しい。特にエダール……獣人族には申し訳なかった」
 深々と頭を下げるヴィーに、後ろの従者がハッとする。
「ヴィー様! 王たる貴方がそんな事をしなくても!」
「そうですヴィー様! 悪いのは全て秘匿していた神殿でしょう! 千年前の事など、ヴィー様の責任ではありませんっ」
 ヨウスケは三人の言葉に首を傾げた。エダールを救出する前に、彼らが把握していた話と内容が変わっているからだ。
「ヴィー、お前ひょっとして」
「あは、ごめんね。ちょっとあの時は盗聴魔法を使ってたんだ。今だけ、今回だけだよ。でもだからこそ、助けに入れたんじゃないか」
 ヴィーの言葉にヨウスケはため息をついた。盗聴魔法は国によって禁止されている。しかしヴィーはこの国の王であり、その王自らが使うとは。気付かなかったヨウスケもヨウスケだったが、さっきはそれどころではなかったのだから仕方がない。
「大司教――いや、元大司教か。彼の言っていた事については、早急に調査中だ。本当にこの国が獣人族を虐殺して成り立ったのか……そこから調べ上げなければならない」
 疲れた顔のヴィーが、それでも決意した目で二人を見た。
「ねえエダール。君は獣人族なんだろう。何か知っていることはあるかい? 僕が知っているのは、人間の母親に育てられたという事だけだ。それも神殿からの情報で、さっきの元大司教の話を聞く限りどこまでが本当なのかわからない」
 神殿を罰する。それはこの国の成り立ちから傍にある民の拠り所の根底を揺るがす一大事だ。
「本来ならば静かに上層部だけすげ替えるのが混乱を呼ばないと思う。だけどね、僕は神殿という組織の在り方を変えようと思っている。あまりに内部が秘匿されすぎていて、神子を――獣人族を殺す事がまかり通っていたなんて」
 ヴィーもエダールを神殿に送った責任を感じているのだろう。しかしそれだけではない。王として、この国をよりよくするために今回を機会と捉えているのだ。そこにはただの善悪ではない、国の頂点に立つ者としての損得があった。
 この場全員の視線を集めて、押し黙っていたエダールは静かに口を開いた。
「俺には過去の獣人族の記憶がある。あの神殿で、少しずつ頭の中に入ってきたものだ。そこで殺された獣人族の怨念なのかもしれない。信じて貰えるか分からないが、それでもいいなら話そう」
「聞かせてくれる? 王家にも建国についての文献は殆ど無いんだ。それが真実なのかは、追って調査させて貰うけど、道しるべは多い方が良い」
「ああ。どこから話そうか。……獣人族は確かに人間に滅ぼされている。それは事実だ」
 エダールは淡々と語る。
「この土地は元々瘴気に溢れていた。だから人間は住めなかったが、そこに人間の一団が現われた。国を追われたのだと訴える人間達を、獣人族は受け入れた。お互いの知識を交換したり、中には種族を超えて愛を育んだ者もあった。
 だが――その瘴気に人間は耐えられなかったんだ。人間の間で疫病が流行り、野菜を必要とする人間は痩せた土地で農耕が叶わず倒れる。それに心を痛めた獣人族は、瘴気を身体に取り込む術を編み出した。それが魔法使いの始まりであり、獣人族の終わりだ。豊かになった土地で、人間達は生活できたが、獣人族はその取り込んだ瘴気に長年苦しむ事になる。気が狂い苦しみ叫ぶ獣人族を、人間は殺した」
 抑揚なく語る内容は、ヨウスケたちの想像していたものと違った。人間が自分勝手に虐殺したのだと思っていたが、真実はそれよりも濃い。人間を助けるためにその身を犠牲にし、そして人間は彼らを救うために殺したのだ。
「そんな……」
 そう呟いたのは誰だろうか。この場にいる全員が、エダールから目が離せなかった。
 エダールは静かに言葉を続けた。
「だがこの土地の瘴気は神の采配だ。地上の生き物にはどうにもできない。既に人間と家庭を持った同胞も多くなり、その暮らしを守る為に獣人は瘴気を身体に取り込み続けた」
「まてよエダール。大司教は、瘴気は獣人族の呪いだって言ってたぞ」
 ヨウスケの言葉に、エダールは首を横に振った。
「そんな訳ないだろう。獣人族は、最期まで人間達を愛した。か弱くも知性に溢れる生き物を。瘴気はこの土地由来のものだ。本来ここは、人間が住めるような場所じゃない。だけど」
 エダールは言葉を句切る。
「人間は愚かだ。代を重ねるごとにその隣人からの愛を忘れた。獣人族と人間の人口があっという間に逆転し、獣人族がいるから瘴気が発生するのだ言い出す者が現われた。それが当時の人間達の長であり、それがおそらくこの国最初の王だろう。数の少なくなった獣人を捕え、瘴気を取り込ませた彼らを殺す事で、国の浄化を続けていった。」
「そんなん……ひでぇじゃん」
 自分勝手すぎるやり方に、ヨウスケはぽつりと零した。ヴィーは黙って話を聞いている。
「長い歴史の中で、魔法が生まれた。瘴気を取り込んだ人間の身体で変化が起こったのだろう。同じく獣人も体内に取り込んだ瘴気が、身体に馴染む者も現われた。彼らは人間達とは違った方向に進化したんだ。身体の中で瘴気を浄化させ、そして交換することで循環させる。定着した瘴気に侵されないように、そうやってお互いを守った」
 エダールの言葉に、ヨウスケは頭に何かがよぎった。
 だがそれが何なのかがよくわからない。もやもやとしたそれに首を傾げる。
 反対にエダールは、ヨウスケの答えが分かっているようだ。薄く笑って、膝の上に乗せていたヨウスケの手をそっと握った。
「ヨウスケは、それをもう俺としてる」
「……っ、あ……! DomとSubがいたってことなのか……!?」
 獣人族の瘴気の循環、と聞いた時にヨウスケがピンときたのはそれだったのだ。基本的に減ったら増えることが無い魔力なのに、何故か増えていたのはプレイのせいだった。
 エダールは頷く。
「そう。人間達は瘴気を魔力として使う方法を編みだし、獣人族は瘴気を循環させ己のものにするようになる。だがそれも結局、最後は欲に走った人間達によって死に絶えた」

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