異世界でひとりぼっちのSub ~拾ったDomを育てたら執着されてしまいました~

てんつぶ

文字の大きさ
22 / 24

リィアとドゥア

しおりを挟む
「ふむ……エダール、いいかな。神殿の成り立ちは獣人族としての記憶があるかい? あるのなら教えて欲しい。我が国の神殿が祀る神は獣の姿をしている。つまり獣人族に非常に近いと言えよう。あの司教の制服からも、獣人族への敬愛があるように思えたが」
 ヴィーの質問は神殿の矛盾そのものだ。大司教の言葉を借りるなら、彼らは少なくとも獣人族を祀っていたはずだ。
「それは分からない。死んだ獣人族を哀れに思った者が始めたのか、それとも人間と混じった子孫を憂いたのか。俺が知っているのは、耳と尻尾を付けて生まれた同胞は神子と呼ばれ、神殿で瘴気を吸わせられて殺されるという事だけだ」
 エダール自身も幼い頃に神殿に追われ、そして抵抗する母親を神殿に殺され、その場から逃げた。短くない逃亡生活の中で、ヨウスケが召喚されエダールが取り込むべきだった瘴気を封印することに成功したのだ。
「瘴気のタイミングと神子――先祖返りが現われる理由も分からない……って事かな。だけど今回はエダールが瘴気を取り込む前にヨウスケが封印したって事か。じゃあひょっとして、神子って呼ばれる獣人族も、教えたら瘴気を封印できるのかな? 最盛期のヨウスケ程の魔力は、この国にいる魔法使いを全員集めても及ばなんだよね」
 ヴィーの言葉で目を見開いたのは、彼の後ろにいる双子だった。貴族として生き、瘴気の影響も少ない生活だったリィアとドゥアにとって、平民である異世界の「元」大魔法使いがそれだけの力を持っていたとは思ってもいなかったのだ。
 魔法使いは殆どが貴族だ。選民意識の高い魔法使いの中で、素性の知れないヨウスケを悪く言う者も多い。貴族の中で、さらに選ばれた者――魔法使いのリィアとドゥアが傲慢なのは、そういった環境の影響が大きかった。
 ドゥアが叫ぶ。
「あのっ……エダール、様! リィアの魔力は増やす事が出来ないんでしょうか!」
「ドゥア、きみ――」
「申し訳ありませんヴィー様、厚かましいのは十分理解しています! ですが、リィア……リィアが……っ」
 枯渇した魔力は戻らない。それは魔法使いの常識だ。優秀な魔法使いである双子、しかも魔力の合算ができる特殊な双子は、その希少性から価値が高い。
「嫌なんです……ずっと一緒だったのに……。それにリィアの方が賢いって、ヴィー様もご存じでしょう?  私なんていつもリィアに助けて貰ってばかりなんです。私の魔力をリィアに渡せるなら、渡したい……ずっと一緒にいたいんです。お願いします……お願いします」
「ドゥア……」
 その場に崩れるように懇願するドゥアの姿に、リィアは口を真一文字に結んだ。そうしなければ泣いてしまいそうだったからだ。よく似た双子だが、全く違う人間だという事を、双子の自分たちが一番分かっている。だけどそれでも片割れを求めて、プライドの高い男が這いつくばっているのだ。
 その性根を理解している主もまた、複雑な心境でそれを見つめていた。確かに双子の能力は有益で失うわけにはいかない。だがそれをエダールに申し出られるほど、厚顔でもいられなかった。
「無理」
 無慈悲にそう断じるのは、エダールではなくヨウスケだ。
「つーか、エダールと俺だけだから! DomとSubだから出来ることだから! つーかエダールをお前らに貸すの無理だから!」
「ヨウスケ、嫉妬? プレイしていいのは自分だけだって、こと?」
「あ、当たり前だろ! 嫌だからな! つーかこいつらにプレイしても意味ないだろ! 駄目、絶対!」
 顔を赤くしてそう叫ぶヨウスケと、その隣で顔を両手で覆い隠すエダール。
 ヴィーたちは、自分たちは何を見せられているんだろうという気持ちになった。
「とりあえず、俺の方でも研究してみるからさ。俺の魔力、今結構回復してっから」
 だからといってヨウスケも、目の前で困っている旧友とその部下の頼みを無下にしたい訳ではない。
 ぶっきらぼうなその言い方に、ヴィーは口元を緩めた。
「本当に君はさぁ……。ううん、ありがとうヨウスケ。そしてごめんね。君のその特殊な体質を、ただの趣味のように言ってしまって。僕は随分きみに嫌な事をしたよね」
 ヴィーの謝罪に、ヨウスケは笑った。
「別に。いいよ。日本……俺の母国でもさ、昔はぜんっぜんダイナミクスに理解が無かったし、知らねぇならしょうがねーって」
「うん。ありがとう」
 口は悪いがさっぱりとしている。異世界から瘴気の封印だけを目的に呼び寄せた、そんな男を友人として大切にしているのは、結局ヨウスケのこの人柄が王族として生きるヴィーにとって好ましいからだ。
 そしてきっとその感情は、特権階級として生きる双子の魔法使いにも伝わっているのだろう。誰にでも分け隔て無いヨウスケから、きっと学べることも多いのだ。
 室内は、そんな柔らかな空気に包まれる。
「帰っていいか。早くヨウスケを抱きたいんだが」
「エダ、は、お前、はぁ!?」
 そんな空気をぶち壊して、とんでもないことを言い出したエダールにヨウスケは慌てた。顔が夕焼けのように赤く染まる友人に、ヴィーは吹き出した。
「ふふ、ふ。そうだよね、ごめんね長々引き留めちゃって。後の調査はこっちで進めるよ。話してくれてありがとうエダール。また愛の巣に遊びに行くね」
「暫く来なくて良い。蜜月だ」
「エダー……! おま、はぁ!?」
 立ち上がったエダールは、軽々とヨウスケを抱き上げた。そしてそのままあっさりと転移し姿を消した。
「ヴィー様、無詠唱かつ無魔法陣の転移……しかもあんなに早い展開は私たちには無理かもしれません」
「ヴィー様、魔力の使用量を減らした魔法陣の研究をしたいと思います。お時間をいただけませんか」
 後ろに控える双子は、すっかりあの二人に影響されたらしい。ヴィーはひっくり返るであろうこれからの内政について、ほんの少し楽しくなったのだった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない

天岸 あおい
BL
第12回BL大賞・奨励賞を受賞しました(旧タイトル『嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした』)。そして12月に新タイトルで書籍が発売されます。 「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」 ――新王から事実上の追放を受けたガイ。 副官を始め、部下たちも冷ややかな態度。 ずっと感じていたが、自分は嫌われていたのだと悟りながらガイは王命を受け、邪竜討伐の旅に出る。 その際、一人の若き青年エリクがガイのお供を申し出る。 兵を辞めてまで英雄を手伝いたいというエリクに野心があるように感じつつ、ガイはエリクを連れて旅立つ。 エリクの野心も、新王の冷遇も、部下たちの冷ややかさも、すべてはガイへの愛だと知らずに―― 筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。 ※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

処理中です...